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臥龍通信

臥 龍 通 信 第99号 <2005.2.20発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 99号 ◆
    21世紀の知的財産戦略

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 ◆ 臥 龍 通 信 第99号 ◆
    21世紀の知的財産戦略

21世紀の知的財産戦略

2004年から2005年にかけて、日本の電子機器産業界で大きな動きが始まっています。世界的にも電子機器産業界は新たな動きを始めていますが、日本の電子機器産業界も世界的な動きに対応した動きなのでしょう。今回は、21世紀の新たな日本の知的財産戦略を特集します。

2004年末 企業時価総額比較

企業名

2004年末時価総額

韓国サムスン電子

約6兆5000億円

キャノン

約4兆8217億円

松下電器

約3兆8856億円

ソニー

約3兆7336億円

日立製作所

約2兆3768億円

シャープ

約1兆7993億円

東芝

約1兆3874億円

富士通

約1兆3327億円


世界の電子機器産業で、大きな話題となっている韓国サムスン電子の2004年の時価総額ですが、日本企業のほとんどの電子機器企業を買収できるレベルの時価総額をサムスン電子は市場から評価されています。電子機器業界で日本企業以上の評価を受けるまでになった韓国電子機器企業(サムスン電子とLG電子)ですが、日本企業が得意としてきたプラズマ・パネルや液晶パネル生産で世界シェアーの首位を日本から奪い去った韓国電子機器企業の大躍進に対してやっと日本の電子機器産業はオール・ジャパンの体制を構築し始めました。企業経営の能力差は韓国企業の時価総額を考えれば、はるかに日本企業の経営能力が相対的に低下しています。特許などの知的財産で先行しているはずの日本企業も実際の製品生産では技術的な強みを発揮できていません。知的財産では挽回できないほど企業経営の総合能力の差がアジアと日本の企業の間で生まれ始めています。

私は以前から指摘していますが、アジア通貨危機から立ち直る段階で、アジアは2000年以降、国家総力戦としての経済競争体制に移行したことを日本の企業と政府は気づきませんでした。21世紀の経済競争は個別企業の経済戦争ではなく、国家産業企業群と国家政府との連合軍による経済競争であり、日本の企業のように個別企業では到底対抗できない規模の国家総力経済競争が展開して来ました。日本企業は個別企業としての経済競争に直面して、オール・ジャパンとしての総力を動員できず、日本企業はアジア企業に個別企業ごと各個撃破される経済競争を展開してきましたが、すでに限界に来ました。オリンピックのオール・ジャパンのように、国家総力戦の経済競争の時代には個別企業の経済競争力だけでは21世紀の国家政府と国家産業の総力戦に生き残れません。

強者生存の非情な資本主義社会の厳しいルールをアジア各国はアジア通貨危機で学びました。国民感情や国家の都合など考えている暇もないほどの危機に直面し、国家経済の再生に向けて、アジア各国は非情な資本主義ルールを徹底的に学び、21世紀の厳しい資本主義の制度や体制へと移行してきました。アジアに比べて資本主義社会の日本は21世紀の強者生存の厳しい資本主義ルールの制度整備や体制整備が大幅に遅れています。非効率な官僚組織や企業の資本主義的でない感情論や企業統治、厳しい資本主義のルールの徹底なども大幅に遅れています。

過去最高の収益という日本企業が株主配当5%を実現できたか。また、日本の銀行は預金者に年5%の利子を払える企業経営を実現しているか。日本の個人投資家に高配当を実現するのではなく、リスクの高い株式売買という投機をさせているだけの日本の証券市場は、個人投資家の資産を株式保有による高配当で増やすのではなく、株式の売買投機によって資産を奪っているに過ぎません。最終的には個人投資家が損をするする構造があります。

ライブドアの買収問題も、企業の経営権は株主にあり、より効率的に経営できると考える経営者は株式を買占め、経営陣を追い出して新たな経営を行うことは資本主義の基本ルールです。企業経営者は資本主義では株主の指示に従うことは当然のことで、株主はいつでも企業経営者を入れ替えることができるのも基本ルールです。株式公開企業は、買収されることを前提に経営しなければならないし、放送局であるから公共性があり国家の電波を管理しているから一般企業とは違うなどと言うようであれば、初めから株式公開などしなければいいという堀江氏コメントは理解できます。

2003年の日本株式の売買シェアーで考えると、日本の株価を左右する株取引のシェアーは外国人が46.2%、個人投資家が29.2%、金融機関が15.2%、その他が9.4%でした。日本の株価は外国人投資家と日本の個人投資家の75.4%によって支えられています。外国人株式投資家の存在がなければ、日本の株価は暴落しています。外国人に株価を支えられていて、特定の業界企業には外国人保有制限があるということは、外国人はその業界の株は基本的に買えないということです。

日本の大企業の30%でも外国人に所有されれば、企業経営は外国人投資家に大きく影響されます。企業株式の40%や50%を外国人が所有すれば、すでに日本企業という考え方が難しくなります。すでに、日本企業と考えられているオリックス、ヤマダ電機、HOYAの株式の50%以上を外国人が所有しています。また、キャノン、塩野義製薬、富士写真フィルム、TDK、野村ホールディングスなども、株式の40%以上を外国人が所有しています。

韓国ではすでに外国人株主の増加で、韓国企業が買収されないように国民銀行やポスコや現代自動車やサムスン電子やLG電子などが、外国人株主買収対抗策を韓国産業界と政府で準備し始めました。外国人株主が増大する日本企業と日本政府の危機感は驚くほど希薄です。ライブドアであったから、評論家や政治家も甘く考えていますが、放送業界の外国人株式保有の制限があったにしても、上場企業の外資系投資企業の買収で、政治家の今回の発言は日米通商問題にもなる発言で、現在の株価の暴落を阻止できている外国人投資家の存在をまったく過小評価しています。政府は外国人投資家を日本の株式市場から排除して株価を暴落させたいのでしょうか。世界的な大買収時代の資本主義の厳しさをまったく認識できない政府と日本社会の甘さが目立ちます。


ちなみに、ベンチャー企業ではありませんが、日本には資本金83億3千万円、売上高2003年9651億円、社員数540人の未上場優良企業があります。韓国サムスン電子の日本法人「日本サムスン株式会社」です。また、資本金13億8千万円、売上高1217億円という未上場企業もあります。韓国LG電子の日本法人「LG電子ジャパン株式会社」です。日本のIT企業は分からない企業も多いのですが、日本企業なのですから「日本サムスン株式会社」や「LG電子ジャパン株式会社」などが株式上場して、日本人としても投資したいと思うのは私だけでしょうか。

企業が企業経営に行き詰れば、合併して企業の延命を考えるなどというぬるま湯につかっている企業経営などしているから日本企業の国際競争力はいつまで経ってもアジアに対抗できません。行き詰った地方自治体が合併によって延命するように、弱い同士が合併しても強くはなれないことに、国家も企業も自治体も気づいていません。日立と松下と富士通のプラズマ・パネル提携や富士通とシャープの液晶パネル提携など、経営と知的財産の両面でオール・ジャパンの動きが加速していますが、いまさらオール・ジャパンの体制ではアジア企業にほんとうに対抗できるか疑問です。資本主義企業経営の厳しさを経営者や社員が苦しみぬいて獲得したアジア企業の企業経営に対して、すでに企業経営者や社員の能力や凄みからして日本企業の負けが目に見えています。ソニーとサムスン電子との特許の相互公開は新たな日本企業の知的財産戦略を見る思いです。

プラズマ・パネルの世界生産シェアー(2004年)

順位

企業名

企業国籍

世界シェアー

1位

サムスン電子

韓国

25.3%

2位

LG電子

韓国

22.1%

3位

松下プラズマ・ディスプレイ

日本

19.6%

4位

富士通・日立プラズマ・ディスプレイ

日本

17.6%

5位

パイオニア

日本

12.3%

その他

3.1%

出所:米国ディスプレー・リサーチ

液晶・パネルの世界生産シェアー(2004年)

順位

企業名

企業国籍

世界シェアー

1位

サムスン電子

韓国

22.5%

2位

LG・フィリップス

韓国

21.0%

3位

友達光電

台湾

12.9%

4位

奇美電子

台湾

9.3%

5位

シャープ

日本

8.0%

6位

中華映管

台湾

6.5%

その他

19.8%

出所:米国ディスプレー・リサーチ

世界DRAMシェアー・ランキング2003年

世界順位

企業名

世界シェアー

1

(韓国)サムスン電子

29.7%

2

(韓国)ハイニックス半導体

17.1%

3

(米国)マイクロン・テクノロジー

15.3%

4

(ドイツ)インフォニオンテクノロジーズ

14.1%

5

(日本)エピルーダメモリ

5.4%

その他

18.4%

(出所:米国ガートナー調査資料)

一方、米国ではIBMが知的財産戦略を転換すると発表し、ソフト分野の特許約500件を無償で公開して、企業や個人に自由に利用してもらうということを発表しました。米国のサン・マイクロシステムズも基本ソフトの特許約1600件を無償公開すると発表しました。マイクロソフトやシスコシステムズなどもネット関連のソフトの無料配布や情報公開を始め、米国にも新たな動きが加速し始めています。個別企業では到底対応できない技術革新のスピードに、米国のIT企業は知的財産権ではとてもカバーできない企業経営の難しさを知的財産権の公開という新たな戦略を用意しつつあります。日本のIT業界の技術力は世界的なIT業界の技術革新に追いついても行けないし、現実的にまったく無力な輸入ソフト代理店に転落しました。

2003年サーバーOSソフトランキング

順位

企業名

企業国籍

世界シェアー

1位

マイクロソフト

米国

30.8%

2位

UNIX

米国

26.7%

3位

ソラリス(サンマイクロ)

米国

11.8%

4位

リナックス

6.4%

その他

24.3%

出所:米国IDC

2003年企業基幹業務ソフト(ERP)ランキング

順位

企業名

企業国籍

世界シェアー

1位

SAP

ドイツ

20.0%

2位

ピープルソフト

米国

7.0%

3位

オラクル

米国

5.5%

4位

マイクロソフト

米国

2.6%

その他

64.9%

出所:米国IDC

2003年データベース・ソフトランキング

順位

企業名

企業国籍

世界シェアー

1位

オラクル

米国

39.8%

2位

IBM

米国

31.3%

3位

マイクロソフト

米国

12.1%

その他

16.8%

出所:米国IDC

米国で毎年多くの特許を取得する日本企業ですが、日本の電子機器産業の経営は保有する知的財産を活用するだけの経営力がまだ不足しています。企業経営の革新は企業経営者や管理職の知性教育のレベルで評価できます。加速度的に高度化しているアジアの企業経営者や管理職教育の体制を日本はいまだに構築できてはいません。米国債先端企業でも追いつけない加速度的に進む技術革新と加速度的に陳腐化していく企業経営者や管理職の知性の狭間で日本企業の企業経営力は限りなく陳腐化していきます。日本の知的財産権を創造する日本の国民的な総合知性教育体制が根本的に崩壊しています。子供たちの教育の崩壊が問題にもなっていますが、日本の大人社会の知性崩壊のほうが子供の教育よりもはるかに問題で、大人の知性崩壊が子供の知性崩壊を加速させています。

2004年米国特許取得企業ランキング

順位

企業名

企業国籍

特許取得件数

1位

IBM

米国

3248

2位

松下電器産業

日本

1934

3位

キャノン

日本

1805

4位

ヒューレット・パッカード

米国

1775

5位

マイクロン・テクノロジー

米国

1760

6位

サムスン電子

韓国

1604

7位

インテル

米国

1601

8位

日立製作所

日本

1514

9位

東芝

日本

1310

10位

ソニー

日本

1305

(出所:USPTO米国特許商標庁)

国家としての知的財産国家戦略の基礎は、高度な知的財産を創造する義務教育9年、高等教育(高校3年・大学4年・大学院5年)の21年間の教育をいかに効率的に高度化していくかということです。中国や韓国のような飛び級の天才教育も必要で、21年間を学校に縛り付けるのではなく、優秀な人材はどんどん飛び級させる専門教育機関も必要になります。また、企業人となってからも専門職大学院に自由に通える企業制度や国家体制も必要です。企業経営者や社員が能力で負けていては、企業総合力としても打ち勝つことができません。厳しさを忘れて陳腐化した日本の大人社会の大人の再教育こそが必要です。

1世紀の知的財産とは、最終製品そのものではなく、製品を構成する数万点、数十万点の部品に関連するものとして存在します。特許が最終製品の全体を保護することは難しく、数万数十万の特許が使用される部品のすべてを企業一社で開発・取得・独占することは現実的に不可能な時代になりました。青色発光ダイオードも製品部品としての特許であり、特許利用した製品全体の特許ではありません。企業経営で考えれば、数万点数十万点の部品を世界中から購入し、いかに早く製品として消費者に届けるかが企業利益を決定しています。特許による技術部品よりも、消費者までの企業の総合的な経営スピードがはるかに重要な時代になりました。世界中の部品生産企業から部品を購入し、PCを注文から1台を5分で生産し、世界中に注文から4日以内で配送するデル・コンピュータの企業経営に特許はそれほど大きな要因ではありません。PCの特許部品を販売するのとPC本体を販売するのでは販売額も利益も大きく違ってきます。部品製造で生き残るか、製品販売で生き残るかは企業の経営戦略ですが、企業の総合経営力が低下していて、知的財産権で低下した経営力を補うことはできません。知的財産権で優位に立っても、企業の総合経営力で負ければ、企業経営としても企業利益としても負けなのです。企業経営者と社員の加速度的に進歩する世界的な経営手法と技術革新の高度な教育体制がなければ、企業経営は加速度的に陳腐化して行きます。21世紀の世界的な知的財産戦争は、国民の高度な教育体制と企業社会人の絶え間ない再教育の蓄積で決定します。日本の義務教育や高等教育の国際評価の結果よりはるかに低い、日本の大人社会の国際評価の低さを日本の大人はもう一度考え直すことが必要です。

参考文献:
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

発行日 発行No タイトル
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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