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臥龍通信

臥 龍 通 信 第95号 <2005.1.20発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 95号 ◆
    クルド人を救え

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 ◆ 臥 龍 通 信 第95号 ◆
    クルド人を救え

クルド難民を救え

最近、青色発光ダイオードの和解で、「日本の司法制度は腐ってます。」と言い残して、日本を去った中村修二さん以来、日本の司法や官庁の行いには激怒することが多いのですが、久々に見過ごしにできない事件が起きました。

日本はこれまで外国人の居留や難民の受け入れには非情と言うくらいに冷たい国家でしたが、いよいよ間接的な殺人行為を行い、これからも行おうとしています。

トルコの少数民族クルド人のアハメト・カザンキランさん(49)と長男の2人が1月17日午前、入管に仮放免延長手続きに訪れた際に「延長する理由がない」として収容され、1月18日午後、突然に成田発イスタンブール行きトルコ航空機で強制退去させられました。カザンキランさんは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による難民認定を受けていますが、日本政府の外務省や法務省は一切認めず、法務省と外務省の退去強制処分取り消しを求め最高裁判所で係争中でしたが、突然に収監されトルコに強制送還になりました。

トルコ政府はクルド人抹殺政策をこれまでも行ってきており、クルド人の住んでいるクルディスタンは、人口推定2000万〜3000万人で日本の約1.5倍の地域で、現在大きく4地域に分割されて存在しています。北クルディスタンはトルコに、西クルディスタンはシリアに、東クルディスタンはイランに、南クルディスタンはイラクに分割され、現在もクルド民族は統一した国家を認められていません。

紀元前612年、インド=ヨーロッパ語族のメディア人がアッシリア帝国のニベアを陥落させた年がクルド暦元年で、クルド人は、その地理的事情から、常に周辺諸国の争いに巻き込まれてきました。そしてクルディスタンは、その大部分がオスマン帝国に、残りがペルシャなどに取り込まれた状態で20世紀を迎えました。第一次世界大戦後に、クルディスタンは複数の国民国家に分割されることが確定し、1920年に結ばれたセーブル条約で一度はクルド人国家の樹立が決定されましたが、1924年のローザンヌ条約でその決定は欧米列強国家の都合で、現在のパレスチナ・イスラエルと同様のことがクルド民族にも起こりました。クルド人は、分割支配する各国政府に対して、独立・自治を求めて戦うことになりますが、国内にクルド人を抱えるトルコ、イラン、イラクなどの各国は、相互にクルド人の自決権を認めないことで利害を一致させています。

トルコ国内には、約1500万人のクルド人が居住しており、トルコ政府は、共和国建国以降「クルド人」という民族は存在しないとする政策を貫いています。トルコ政府は、彼らを「山岳トルコ人」という名称で呼び、その民族の存在さえも否定し、できれば国内のクルド民族を抹殺しようと民族弾圧を継続してきました。

トルコ政府の迫害を逃れて、難民としての国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による難民認定があるにもかかわらず、日本政府(法務省・外務省)は難民と認めないために、日本政府の難民認定がなければ、難民は日本以外の第三国に出国することができません。日本政府は第三国に行けなければ、難民として逃げてきた政府に強制送還されます。北朝鮮難民を北朝鮮政府に強制送還して難民を北朝鮮政府に引き渡すようなものです。日本政府の強制送還決定が難民にどのような結果をもたらすかは考えなくても分かります。

その強制送還の決定が1月18日に、裁判中にもかかわらず日本政府によって実行されました。そして、残った家族など女性3名も1月24日には、同じ強制送還が強行されそうです。何とかクルド人難民を助けたいのですが、方法があまりありません。裁判所も法務省も外務省も非情な決断をするのですから、外務大臣の町村議員に直接抗議メールを送ることぐらいでしょう。

外務大臣 町村信孝連絡先メール
Emailinfo@machimura.gr.jp

日本人が海外を旅行中に突然政治紛争が起こってまずは隣国に逃げても、国境で入国ビザがないから、殺されるかもしれない紛争地域に戻れといわれるようなことが起きたら、皆さんはどうしますか?

隣国の難民は難民だから入国を許され、日本人は隣国の人間ではないから難民ではないので、国境を越え戻ってきた人間を撃ち殺そうと待っている兵士のところへ戻れと言われたら。そして、「君の政府は国連が認めた難民も受け入れない政府だから、そんな政府の国民を難民として保護する気持ちはない。そんな政府で生まれたことを不運に思え。」といわれたら。

日本政府はほんとうに人命を尊重する国家なのか。北朝鮮の拉致問題も日本政府のクルド人に対する対応を見ていると、世界は日本政府が人命を尊重する国家ではないと判断し、拉致問題に協力することさえ考えないでしょう。

韓国は日本の韓民族に対する併合時代の民族名と民族言語の否定を非難はしても、現在の存在さえも否定されているクルド民族には関心もないのです。そして、そんな民族弾圧を行ってきた日本政府の韓国に対する謝罪もクルド人に対する対応を見れば、まったく同情も反省もしていないと感じます。

クルド人はイラクでも、1988年にハラブジャで行われたイラクの化学兵器による無差別攻撃では、約5000人の死者を出しました。1991年の湾岸戦争には、米国に協力して蜂起したクルド人に対するイラク軍の攻勢により、大量の難民が発生しました。クルド人は現在もイラクにクルド人自治区として約300万人が住んでいます。今回のことが報道されれば、イラクのクルド人の第一の敵が米国ではなく日本になることも考えられます。クルド人をトルコ人に売り渡した日本政府に対するクルド人の怒りは予想以上のことがあるかもしれません。弾圧され続けた民族の怒りほど恐ろしいものはありません。イラクの自衛隊はクルド人という新たな敵と新たな危険を想定しなければならないかもしれません。

難民申請の確認のために日本の法務省は愚かにもクルド人難民二家族の認定申請者の五人の名前をクルド人の存在さえ否定しているトルコ治安当局に教えたり、日本の法務省役人がトルコ軍や警察関係者を訪問したりしました。そのために危険を感じた家族が新たに日本に逃げてくることにもなりました。これらクルド人難民のすべてがトルコ政府に日本政府から引き渡されるのです。

クルド人のアハメト・カザンキランさん(49)と長男の2人は、裁判中なので居留期間の延長手続きに入国管理局にいって、裁判の結果が出る前に延長の必要はないと一方的に拘束され次の日にはトルコに強制送還されました。アハメト・カザンキランさんとその家族は日本に居住したいと言ったわけではありません。日本政府が難民認定してくれれば、難民を受け入れる第三国に出国できるので日本政府に要請していただけです。日本政府は難民認定がなければ、日本からどこにも出国することができず、トルコに強制送還以外の道はないことを知りながら認定をすることもなく、アハメト・カザンキランさんを強制送還しました。

クルドの民族は誇り高い民族で受けた仕打ちは必ず返すので、今も各国政府に抵抗して、各国政府も簡単にクルド民族抹殺政策を完結できないでいます。日本政府は今回明らかにクルド民族を敵にしたと考えるべきでしょう。

また、日本政府の難民に対する今回の措置は、世界中の人権機関と人権団体に大きな失望と怒りをもたらすでしょう。そして日本政府が訴える北朝鮮拉致問題にも大きな影響を与えるでしょう。世界から日本政府は人命と人権を本気で考えているのかという疑惑をもたれるでしょう。日本人の人権と人命の尊重は日本人の人権と人命の尊重であって、人類社会の人権と人命の尊重ではないといわれるでしょう。難民を次々と死へと追い込んでいく、日本の国際貢献と人道支援とはいったい何であるのか。北朝鮮の人権を問題にする日本ですが日本政府の難民人権無視の対応を考えると、北朝鮮と同様の人権無視の国家ではないか。国際社会で日本の国際貢献と人道支援という言葉だけがむなしく空回りしています。


参考資料:「臥龍通信」

発行日 発行No タイトル
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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