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臥龍通信

臥 龍 通 信 第91号 <2004.11.30発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 91号 ◆
    日本の国家経営者

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 ◆ 臥 龍 通 信 第91号 ◆
    日本の国家経営者
日本の国家経営者

日本では、国家経営者である内閣総理大臣は議院内閣制によって、国会より選ばれます。大臣は首相の指名によって選ばれますが、内閣総理大臣や大臣などの国家経営者の知性や見識が国家経営に重大な影響を及ぼします。最近の国会答弁での国家経営者の発言やテレビでの発言には、国家経営者としての責任も誇りも知性も感じられません。

海外29ヶ国から、多くの日本人海外派遣社員や国連職員のアクセスがある『臥龍通信』ですが、日本の国家経営者が日本の国会やテレビ放送で、どのような発言しているか、今回は特集したいと思います。

まず、小泉首相の発言で有名なのは、「人生いろいろ発言」です。国会の答弁で、年金の未納問題で、野党から追及された小泉首相は、選挙で落選した時代に、ある企業の社長に「働かなくてもいいよ。君の仕事は選挙に当選することだから。」と言われ、社員として入社しても働かずに給与と厚生年金を払ってもらっていました。「勤務実績がないのに給与をもらい、厚生年金にも加入していた。」事実に、野党は「勤務実績がなくても、厚生年金に加入するというのは、詐欺行為にも等しい。」として、追求しました。

小泉首相は、「会社員でも働かず、好きにしていいという企業もあるのだから、企業もいろいろ、社員もいろいろ、人生もいろいろです。何が悪いのですか。」と答弁しました。 「企業で働いていない一般の国民は国民年金に加入し、企業で働く厚生年金には加入できないことになっているのに、名義だけで厚生年金に加入することは詐欺行為だ。勤務実績もなく厚生年金に加入できれば、国民年金の加入者はすべて厚生年金に加入できることになる。年金行政の根幹をゆるがす大問題発言だ。」と野党は小泉首相を攻撃しました。

小泉首相は、「世の中には良い人もいるもんだと感謝しており、会社もいろいろ、社員もいろいろなのですから、私のしたことのどこが悪いのか理解できない。」と答弁しました。 そして、小泉首相は、「選挙に落選した時代に私を雇ってくれた企業の社長には今でも大変感謝しているし、社長のお墓にお参りに行きたいくらいだ。」とも答弁しました。

国会答弁後に分かったことですが、小泉首相を雇ってくれ、大変感謝している企業の社長は死んでおらず、現在でも生きており、お墓参りなど行けないことが判明しました。

マスコミのインタヴューで、「答弁された社長は生きているということですが、どう思われますか?」という質問に、小泉首相は「良い人は長生きするもんだね。」と答えただけでした。

この小泉首相の「人生いろいろ」発言は有名にはなりましたが、日本の国民はこんな答弁をする首相を羞じて非難するどころか支持して、参議院選挙では与党の勝利に終わりました。

お世話になった社長が生きていることも知らずに、葬式にも行かず勝手に死んだことにしてお墓にお参りしたいと国会で堂々と発言したとんでもない日本の最高権力者は、その後も意味不明の国会答弁を繰り返していますが、最近の有名発言は「イランの自衛隊派遣についての非戦闘地域」発言です。

国会で野党に「非戦闘地域の定義」を聞かれて、小泉首相は「自衛隊がいるところが、非戦闘地域だ。」と発言しました。自民党の有力議員は小泉首相の発言はジョークだろうと言っていましたが、国会の真面目な答弁でジョークなどとんでもないことです。マスコミでは「イラク全土から多国籍軍を引き上げて、イラク全土に自衛隊を派遣すれば、イラクは非戦闘地域になって治安が安定するのか。」と非難が集中しましたが、国民はあいかわらず小泉首相を支持しつづけています。

北朝鮮問題でも、「人道支援は拉致被害者の問題とは別に考え、経済制裁の考えはない。」と発言したり、「国民の増税は私の任期には実施しないが、議論は多いやるべきだ。」と首相を辞めた後の国民に対する大増税の準備と実施は私の責任ではないという態度です。

日本の国家経営者は、統治能力も重要ですが、まずは真面目で正直であって欲しいのです。国会審議の答弁を詭弁やジョークでごまかして、羞じることもない国家最高権力者では、世界第二位の経済大国である日本人の面子はまるつぶれです。

政府与党の公明党の大物議員も、テレビの討論会で「年金問題」の批判を受けて、批判した一般出演者に、「そんなに政府案を批判するのであれば、対案を出すべきだ。対案も出さずに批判ばかりするのは理屈に合わない。」と発言しました。 国会議員は国民の税金で、国民のための政策審議や法案審議を行っている専門職ですが、一般の国民は仕事をかかえ、国会法案を作る時間も国会議員のような歳費もありません。あきらかに不備がある年金法案を国民が批判すると、国会議員のような歳費も時間もない国民に「対案を出せ。」と迫る国会議員など、国会議員を辞めて欲しいと思います。

国民が政府法案を批判すると「批判ばかりでなく、対案を提示しろ。」と迫るのであれば、「国会議員と同じだけの歳費と時間をくれれば、対案も考える。」と答えたい心境です。 国家政策の重要な法案立案と法案審議の専門家が、自分達の仕事を批判されたからと言って、国民に専門家以上の法案立案という仕事を一般国民に無報酬でやれなど、どこに知性があればいえるのでしょうか。

日本の国家経営の最高責任者である内閣や各省庁の官僚は、国家最高の知性集団であって欲しいと願うことは、もはや日本では不可能なことなのでしょうか。

最後は、日本の国連常任理事国宣言です。国連の常任理事国には、日本、ドイツ、ブラジル、インドなどが国連でその意志を表明しました。国連での小泉首相の常任理事国宣言の演説は、マスコミではあまり取り上げられませんでしたが、小泉首相の演説を聞いていた国連加盟国の席はがらがらで、ほとんどの席が空席で誰も聞いていないという悲惨な演説でした。国連では、世界第二位の国連資金を出している日本の首相演説は注目されることもなく、莫大なODA予算を使って援助してきた経済支援国にさえ注目されずに終わりました。

国際貢献を強調する日本政府ですが、まず山積する国内問題を解決してからでも国際貢献は遅くはないと思います。治安、教育、年金、福祉、医療など国内の国内情勢の足元が崩壊しそうな日本で、海外に出て行き国際貢献などしている余力が現在の日本にあるのか。国民の税金を官僚の幸福と福祉のために浪費している官僚組織の制御もできない国家経営力と国家経営者が、国民のための政治ではなく政治家としての実績と名誉だけを追い求めるために、国民の貴重な国家資産を使われては日本の未来がありません。

愚かな国家経営者を選ぶ国民は、自らの愚かさで苦しむしかないのでしょうか。国家経営への参加という重要な義務を疎かにしてきた日本国民の愚かさは、現実の危機として国民を直撃します。

日本人は多くの誤解の中で生きていますが、「民主主義」に対しても誤解があります。「民主主義」がまるで自動的に国民を幸福にするかのような誤解が日本人にはあります。国王が君臨する王国や民族国家でも、国民は幸福に暮らす国家が世界中にあります。優れた国家君主による幸福な国民生活と政治汚職と政治腐敗にまみれた国民を苦しめる民衆主義とどちらが優れているかを考えれば、単純に「民主主義」が優れているとは言えません。

民主主義は、国民自らの愚かさでその精神と制度をおとしめる政治体制となりえる危険性を常に持っています。 民主主義は、個人の自由や権利を保障する理念がありますが、人間の自由や権利は個人が社会や対立する組織に対して主張して行動しなければ、人間の自由や権利は無視されて、ないのと同じです。

日本社会に山積する面倒で難解な問題の意思決定は、政治や官僚や業界団体などに任せることは楽なことですが、意思決定を他者に任せることは、その人間達の言いなりについて行くことでしかありません。 第二次世界大戦の日本も民主主義の国家でしたが、民主主義の中でも独裁は可能である教訓は日本人が忘れているだけで、現実に民主主義の独裁は可能なのです。民主主義とは、意思決定のルールのひとつにすぎず、民主主義の運用方法を悪用すれば独裁は合法的に可能になるのです。

民主主義の自由と権利とは、まず自由と権利を得るために戦う自由があり、自らが望む自由と権利のために戦い、自分のための自由と権利を勝ち取れということです。 自分が望む自由と権利を求めて戦わない人間には、民主主義では他者の意思決定に従いついて行くだけの道があるだけで、自分の自由と権利など約束されないのです。 民主主義の多数決の原理は、自分の望む自由と権利を獲得するために戦い、多数の賛同を得るという決定方法です。自由と権利を主張し戦わない国民は、政府や官僚組織の決定に従うだけの税金を納めるだけの奴隷になりさがるのだけなのです。

一部の特権階級だけが多くの国民を支配する政治体制を日本は再び復活させるのでしょうか。多くの国民が反対する年金法案が国民を無視して可決され、もはや国民の不利益であるどんな法案でも国会で成立させてしまえる状況を日本国民は作り出してしまいました。米国の覇権主義に同調して自衛隊の海外派兵や国連軍の創設や憲法改正や武器輸出法改正や国連安保常任理事国入りの先には、21世紀の超大国中国の覇権に対する、大多数の国民の反対を無視した国民徴兵法案成立という悪夢が待っているかもしれないと考えるのは、私の考えすぎでしょうか。

参考資料:「臥龍通信」
発行日 発行No タイトル
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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