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臥龍通信

臥 龍 通 信 第88号 <2004.10.15発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 88号 ◆
     観光立国日本(ビジット・ジャパン)

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 ◆ 臥 龍 通 信 第88号 ◆
    観光立国日本(ビジット・ジャパン)
観光立国日本(ビジット・ジャパン)

最近、小泉政権下で進められている政策のひとつに観光促進の「観光立国(ビジット・ジャパン)」というものがあります。世界中から多くの観光客を日本によんで、日本を好きになってもらい観光収入も増やそうという計画です。
政府としては、2001年で日本の海外観光収入が約6991億円で、海外観光支出が約4兆3215億円ということで、海外観光収支の大赤字を解消したい思惑もあるのでしょう。

日本は経済規模で世界第2位の「経済大国」ということになっていますが、日本国民としては実感がありません。また、世界中に販売され知られている日本製品の国家なのに、観光訪問してみようと考える海外の観光客がほんとうに少ない国家が日本です。

日本は現実に世界第2位の経済国ですが、訪問したい憧れの国家としては世界33位という結果は、世界が感じ考える日本と日本人が思っている日本には大きなギャップを感じます。日本人は世界第2位の経済大国だから、世界の人々も日本人や日本という国家を知っており、興味もあるはずと考えますが、現実は日本人にも日本という国家にもまったく興味がないという有様です。

実際に、クロアチアやサウジアラビアやウクライナやアラブ首長国などよりも観光客が少なく、韓国よりも少ないのでは、日本人と日本という国家の認知度は日本人が思っているよりもはるかに低い世界33位と考える以外にありません。

つまり、日本企業や日本製品は知っているし、評価もしているが、日本人や日本という国家については何も知らないし、興味もないし、観光訪問したい憧れの国家とも思わないというわけです。日本製品の認知度世界1〜2位、日本人と日本という国家の認知度世界33位ということなのでしょう。

世界の人々が考える行ってみたい憧れの国、観光訪問したい国の実績の世界第1位はフランスで、1年間に7700万人以上の観光客が訪れます。世界第2位はスペインで1年間に5170万人以上が訪れ、米国が第3位で、イタリアは第4位の約4000万人の観光客が訪れます。

アジアでは、中国が最大の観光国で世界第5位の観光大国で、1年間に3660万人が訪れます。中国圏(中国・台湾・香港)では、年間観光客は5588万人で、世界第2位のスペインよりも観光客が多くなり、実質世界第2位の観光大国が中国圏です。

アジアのランキングでみると、第1位は中国(3660万人)、第2位は香港(1656万人)、第3位はマレーシア(1329万人)、第4位はタイ(1087万人)、第5位はシンガポール(699万人)、第6位がマカオ(656万人)、第7位は韓国(534万人)、第8位が日本(523万人)、第9位はインドネシア(503万人)、第10位は台湾(272万人)で、日本は世界ランキングで33位、アジア・ランキングで8位ということになりました。

日本という国家は、世界的に有名な日本製品の認知度に比べて、世界から見てもアジアから見てもそれほど訪問したいと思わない国家だというわけです。日本製品に興味はあるが、日本人や日本という国家には興味がないというのが世界の日本に対する見方なのでしょう。まさに、日本企業と日本製品の認知度は高いが、日本人と日本という国家の認知度は極めて低いという現象は永い間放置されてきました。

この永い間放置されてきた日本の認知度の低さを打破するために、小泉首相が出演する日本観光を宣伝するCMが海外でも流れるようになりました。小泉首相がCM出演して語る「日本へようこそ!ビジット・ジャパン」キャンペーンが始まりました。
海外で宣伝を始めれば、日本人や日本という国家に対する認知度が上がり、観光客が増えると簡単には思えませんが、まずは宣伝しないよりはましです。現実にアジアの多くの国家が日本のような海外宣伝を本格的にやっているわけではありませんが、日本よりはるかに多くの海外観光客を集めています。

日本に観光に来て欲しいと宣伝するのも良いことですが、まずは世界中の人々に一度は行ってみたい国、一度行けば二度行きたくなる国と評価されるだけの国家としての魅力が必要だと感じます。自然に富み、文化あふれ、東洋の礼儀と知性の国家として世界中から尊敬され、海外観光客の驚きと感動の日本人と日本にならなければならないわけです。

最近は、多くの有名温泉地で温泉水の循環ろ過使用で、塩素消毒しているだけでなく、温泉水でもないのに温泉と偽ってきた多くの温泉旅館が告発されました。日本の農産物や畜産物の産地の虚偽表示は現在でもなくなりません。顧客を裏切り、欺く日本の業者は日本の食の安全と信頼を失わせています。日本の観光の中心の温泉や食事が様々な業者の不祥事で信頼が大きく失われています。日本で生活する日本人が、日本人や日本という国家がほんとうに素晴らしく、この国に生まれて大変に幸せであると日々の生活で日本人が感じることができない限り、世界中の人々も日本のファンにはなってくれません。

また、地下鉄で良く見かける高校生の座席占拠や車内化粧など、外国人には見られたくない場面が数多く日本には存在します。繁華街の日本の高校生のミニスカートと化粧を見て、日本の高校生は昼間から売春をやっているのかと、子供を放置して教育できない日本の親と教師を非難する外国人は少なくありません。

以前に、「臥龍通信第32号 時代と人間を見ぬく」(2,002.09.08発行)で書きましたが、大学をやめ、モデルの世界に飛び込んだひとりの女性が初めての海外旅行で12時間もかかり日本に到着して、彼女は表参道の安アパートに米国人の女性と共同生活をしながら日本での仕事を探しました。初めての海外生活、初めての日本で地下鉄も分からず彼女は、多くのプロダクションの面接を経験し、ほとんど注目されない日本のカタログやCMの仕事を二ヶ月ほど体験しました。彼女はあまり評価されない日本での仕事に見切りをつけて米国に行き、その後ヴォーグ誌の表紙を飾り、モデルとしてもハリウッド・スターとしても成功します。彼女の名はシンディ・クロフォード、日本の芸能界はシンディの才能を見抜くことはできなかったのです。

日本に滞在し、日本で評価されず、後にハリウッド・スターとなった人物は数多くいます。人間の才能を発見できない日本社会で、才能ある外国人も日本に訪れては去っていきます。日本は外国人にとっても日本人にとっても、本当に魅力ある国家なのでしょうか。

日本の観光客増加計画は良いことなのですが、日本が世界の人々を魅了するだけの歴史と文化の魅力ある東洋の礼儀と知性の国家であるかが、まず問われています。

観光訪問者世界ランキング(2001年世界観光機関資料)
順位 国名 観光訪問者数
1位 フランス 7701万人
2位 スペイン 5174万人
3位 米国 4183万人
4位 イタリア 3979万人
5位 中国 3660万人
6位 英国 2418万人
7位 カナダ 2005万人
8位 メキシコ 1966万人
9位 オーストリア 1861万人
10位 ドイツ 1788万人
11位 香港 1656万人
12位 ハンガリー 1587万人
13位 ギリシャ 1418万人
14位 ポーランド 1398万人
15位 マレーシア 1329万人
16位 トルコ 1278万人
17位 ポルトガル 1160万人
18位 タイ 1087万人
19位 スイス 1000万人
20位 オランダ 959万人
21位 ロシア 794万人
22位 サウジアラビア 751万人
23位 スウェーデン 748万人
24位 シンガポール 699万人
25位 クロアチア 694万人
26位 ベルギー 672万人
27位 マカオ 656万人
28位 南アフリカ 655万人
29位 アイルランド 647万人
30位 ウクライナ 632万人
31位 アラブ首長国 544万人
32位 韓国 534万人
33位 日本 523万人
34位 チュニジア 506万人
35位 インドネシア 503万人


参考資料:「臥龍通信」
発行日 発行No タイトル
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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