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臥龍通信

臥 龍 通 信 第87号 <2004.09.05発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 87号 ◆
     IMDと社内大学

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 ◆ 臥 龍 通 信 第87号 ◆
    IMDと社内大学
IMDと社内大学

国際経営開発研究所(IMD)
スイスの国際経営開発研究所(IMD)は、毎年「世界競争力ランキング」を発表していて有名ですが、「2004年度版世界競争力ランキング」で発表された世界の主要60ヶ国の国家と地域を対象にしたランキングで、日本は総合順位で2003年より2ランク上昇して23位でした。

ランキング世界第一位は米国で、2位はシンガポール(2003年4位)、3位はカナダで、日本は人口2000万人以上の30ヶ国・地域の中では9位(2003年9位)、アジア、太平洋地域の15カ国・地域中では8位でした。
スイスのIMDは経済活動、行政効率、インフラ整備状況など4つの分野で、国内総生産(GDP)成長率など323項目の指標評価によって、1989年から毎年世界競争力ランキングを発表しています。日本の「経済活動」の分野評価は、総合評価で2004年は17位でした。

スイスの国際経営開発研究所(IMD)は、「世界競争力・ランキング」の調査だけでなく、ビジネス・スクールとしても有名です。IMDのMBA教育や企業幹部社員を対象としたエグゼクティブ・プログラムは世界的にも最高の評価を受けています。IMDのMBA教育は、急速に変化する世界の進歩に、世界的な企業経営者の「知識や理論の減価償却」(陳腐化)を防ぐために、世界的に活動するグローバル企業数百社とのラーニング・ネットワークを築き、「世界経営者会議」などにも貢献しています。

IMDは1990年に、ジュネーブのビジネス・スクールであるIMIとローザンヌにあったIMEDEの統合によって誕生しました。

IMEDEは、日本で「日曜洋画劇場」のスポンサーで、日本が急速に変貌する1960年代から多くの有名人を登場させたり、ヨーロッパの日常生活を紹介してきたネスカフェのCMでも良く知られているスイスのネスレ社が1957年に設立しましたが、ネスレの経営陣がハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を訪れて、ネスレ社員のためのビジネス・スクールを検討していた時に、ネスレは教育機関を社員教育に限定することなく、高い志を持ったヨーロッパで最高峰のビジネス・スクールを創設するべきだとのハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のアドバイスによって、ネスレ社は、欧州、米国、アジアなどの世界企業の参加を要請して、今から約50年前に設立されました。

IMIは、カナダに本社を持つアルカン社が1946年に創設して、英語とフランス語を公用語とするアルカン社とドイツ語とフランス語とイタリア語を公用語とするネスレ社の協力が、1990年に世界ビジネスの文化的な多様性を尊重する世界企業経営者の教育機関を世界的な大企業の協力も得て、生み出すことになりました。

スイスのIMDの規模は、教授陣54名をあわせても総勢は70名の小規模な教育機関です。しかし、IMDから輩出されるMBAはヨーロッパ最高峰の教育を受けたと評価され、日本企業でも、トヨタ、キャノン、ソニー、松下、日立、東芝、富士通、シャープ、味の素、電通、伊藤忠などの企業が社内トップの優秀な社員を派遣して、世界企業の経営者としての教育を受けさせています。

ヨーロッパ最高峰のMBA教育機関であるIMDは、スイスのネスレ社とカナダのアルカンによって創設されたことを考えると、欧米企業の人類社会に対する貢献の高い志が見えてきます。企業の存続と利益追求だけを考えてきた日本企業には到底真似できない人類社会に対する欧米企業の高い志と信念が感じられます。

社内大学(企業内大学)
世界最初の本格的な社内大学は、米国のゼネラル・エレクトリック社が1953年に創設した「リーダー研修センター」であると言われています。1960年代には、マクドナルドのハンバーガー大学やディズニー大学が創設され、現在は2000を超す企業内大学が世界に存在すると言われています。2010年には、世界中で社内大学が米国の約3700大学を超える数になるとも言われています。

日本の大学数は現在約710大学で、2007年問題によって、今後は約10年で日本の大学数は約500大学に淘汰されると考えられます。日本と米国の人口比は約2倍で、大学数は現在でも約5倍の格差があり、今後は米国の大学数が日本の8倍〜10倍という時代も来そうです。現在でも米国の大学は日本の約5倍で、中国の大学は米国を超える規模にもなりました。世界的な知性教育戦争はすでに大きな格差を生み出し始めています。企業の社内大学という機関が日本では整備されず、日本の大学はこれから淘汰・倒産の時代を迎える時に、21世紀の日本の企業経営者や国家経営者を教育することが日本で可能なのでしょうか?

世界の社内大学はすでにインターネットを活用した「学習」に移行しており、社内大学のMBAプログラムも世界的な教育機関の提携によって、学習者に提供されるようになりました。

インターネット社内大学

バークレー・バンク大学
シティ・オブ・テンプ
コールドウェル・バンカー大学
ヒューメイン・ソサイアティ
マクドナルド・ハンバーガー大学
NCRテラデータ
オールド・ミューチュアル大学
テクストロン・オートモーティブ大学
ユニオン・フェノーサ大学
シーメンス・ナレッジセンター
シンボル・テクノロジーズ大学
トヨタ大学

米国社内大学ベスト10

1、ファイザー
2、キャピタル・ワン
3、アメリクレジット
4、IBM
5、KLAテンコール
6、インテル
7、アーンスト・アンド・ヤング
8、ザ・リッツカールトン・ホテル
9、デロイト・トウシュ
10、ハネウェル

グローバル・コンサルタント企業アクセンチュアの社内大学の中核を担うアクセンチュア戦略変革研究所のロバート・トーマスは、リーダーとして成長するための4つの能力要素をあげています。

1、「変革適応能力」
市場や技術だけでなく、自分を取り巻くすべての環境や本人自身の変化にも適応する能力。

2、「周囲とのコミュニケーション能力」
目標となるビジョンの共有と伝達のための周囲とのコミュニケーション能力。

3、「目標説得力」
達成しなければならないことが何であるかを主張し、説得する能力。

4、「インテグリティ」(清廉潔白)
志や価値観や専門知識のバランスを保ち、清廉潔白である能力。

そして、4つの能力は「クルーシブル」(厳しい試練)を受けることによって習得できると言っています。

過去の成功事例にしがみつき、環境の変化に気づかず、企業の新たなビジョンも提示できず、達成すべき目標さえ見失い、接待や談合にまみれて来た、日本の多くの企業経営者は、すでに世界で3000を超える社内大学で、日々厳しい教育トレーニング受ける企業経営者の姿など理解できないと思います。

欧米企業の弱肉強食の経済競争ばかりが、日本でも議論されますし、勝ち組と負け組といった議論の背景が欧米企業の厳しい競争社会の弊害と議論されることも多くなりました。 しかし、欧米企業を詳細に見ていくと、競争に対するルールがあり、公平な競争に対する厳格な態度や企業の利益だけではない人類社会への貢献なども見えてきます。

日本企業の社内大学の規模や内容は、欧米企業だけでなくアジアの企業にも遅れを取りそうです。日本のごく少数の企業だけが社内大学を創設するのではなく、日本の全企業で社員の高度な挑戦を支援できる体制が必要です。
年齢や性別や人種や言語や文化に制約されているようでは、日本企業はいつまでたってもグローバル企業としての成長が望めません。すべての社員に高度な知性への挑戦を可能にする日本企業の新たな努力を期待します。

関連資料:「臥龍通信」
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥龍通信第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第109号「東シナ海ガス田問題」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のイネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」
臥龍通信第93号 北朝鮮問題
臥龍通信第60号 日韓の近代・現代史
臥龍通信第59号 国連問題と日本の外交
臥龍通信第50号 朝鮮半島の中国と米国の関係
臥龍通信第43号 日本の安全保障

発行日 発行No タイトル
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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