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臥 龍 通 信 第86号 <2004.09.05発行> http://www.Nakajima-MSI.com |
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◆ 臥 龍 通 信 第 86号 ◆ 実力主義の人間管理と能力管理 ◆ Nakajima-MSI INFORMATION ◆― 臥龍通信入退会のご案内 |
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| ◆ 臥 龍 通 信 第86号 ◆ 実力主義の人間管理と能力管理 |
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| 実力主義の人間管理と能力管理 今回は、日本人の生活を左右する実力主義の企業管理制度の特集です。 日本人は社会制度として、「終身雇用制度」や「年功序列制度」などの制度を採用してきましたが、現在では「能力主義」による「勤務評価」や「賃金体系」に移行する企業が多くなりました。古い社会制度と新しい社会制度の混在する過渡期の日本ですが、「能力主義」を採用した企業でも、古い制度のなごりを残した形式的な「能力主義」が多く見かけられます。21世紀の日本企業が考えるべき実力主義の「能力主義」と「人材管理」について、今回は考えます。 人間管理の人材管理 日本企業は人材管理制度として、これまで「終身雇用制度」や「年功序列制度」を採用してきました。「終身雇用制度」の優れた点は、企業が社員の雇用を終身保証し、社員の教育も企業が行なうという社員の人生に対する企業保証にありました。入社・結婚・出産・育児・退職と社員の人生に企業が深く関与し、社員は企業で家族のような関係の中にありました。社員の人生は、まさに企業の人間関係が中心で守られてきました。「年功序列制度」による給与の増加は、社員の家族構成の変化にも対応して、安定した雇用と人間関係の中で、安定した家庭生活が可能でした。企業と社員はまさに大きな家族(ファミリー)で、人生の大半の時間と生活は企業の人間関係の中で成立していました。社員の人生は退職までは企業に守られ、退職後は国家による年金に守られ、日本社会と日本人の人生は安定したものとして考えられてきました。社員の健康や結婚や出産や人間関係にも企業は社員に対して、大きな援助と支援をしてきた結果、日本社会は安定した安全な社会を維持することができました。 日本企業のこれまでの「終身雇用制度」や「年功序列制度」は、企業と社員の関係を考えて見ると、まさに社員の「人間管理」あるいは「人生管理」であったと言えます。企業に人生の大半の時間を捧げてきた社員に対して、企業は社員の人生生活を保証する「人間生活管理」で報いてきたのです。企業の社員に対する管理が「人間の人生生活全般の管理」にあったのがこれまでの企業の人材管理でした。社員の人生設計や生活までも保証する企業制度は、多くの社員家庭安定の基礎であり、日本社会の治安安定の基盤でもあったのです。 ずっと主任であった社員が、ノーベル賞をもらったからといって、いきなり役員になるような「能力主義」が考えられなかったのが、これまでの「終身雇用制度」と「年功序列制度」でした。日本的な伝統である年配者を敬う「年功序列」の企業習慣は、「能力」と「地位」は違ったものであることを意味していました。社員の誰もが「能力」があるから「地位」があるとは考えなかったのです。入社年度によって順番に昇進して行くことを、社員の誰もが認めていたのがこれまでの社員雇用制度でした。年齢や性別は企業社会でも気にしなければならない重要な要素であったし、年下や女性の上司ということが組織内で摩擦を生む原因とも考えられました。 日本企業には、社員の能力評価と能力報酬と能力職位の密接に連動した人事の考えがまったくなかったのです。 最近は、「能力主義」の管理に移行する企業が増えていますが、「人間管理」の慣習があった企業が簡単に「能力主義」の管理ができるかと言えば、そう簡単ではありません。社員という「人間」を管理してきた企業が、社員という「人間」ではなく、社員の「能力」の管理をするということは、社員の「能力」と「評価」の管理をしなければならなくなります。「能力」に関係ない「年功序列の地位」を社員に与えてきた企業ですから、もともと社員の厳しい「能力評価」のシステムが社内にありません。全社員が納得した評価システムがまずなければ、企業の「能力主義」の評価と管理は不可能なのですが、全社員が納得する評価項目を整備した「社員評価システム」に御目にかかるのは日本では至難の技です。社員の「人間管理」と社員の「能力管理」との違いが明確に理解されていないと企業の「能力主義」は社内に大きな不満を生み出します。そして、社員の「能力主義」に対する評価や報酬に対する不満は、企業社員の不祥事や内部告発へと発展します。 能力管理の人材管理 能力主義の前提となる項目にはいろいろありますが、第一に企業が評価する「能力項目」の選定があります。企業が社員のどんな活動や成果を評価するのか。その評価項目が明確でなければ、能力評価がまずできません。第二に企業は「能力評価」の結果に対して、いかなる「能力報酬」を約束するのかも明確にされなければなりません。報酬なき能力評価など意味がありません。第三に企業が「能力評価」に対して、いかなる権限と地位を与えるかも明確にされなければなりません。社員に与えられる地位と権限に対して、どのような評価と報酬が約束されるのかを企業は全社員に提示しなければならないのです。そして、最も重要な項目が「能力評価基準」と「個人の能力項目」の蓄積された「人材評価管理データベース」の構築です。「人材評価管理データベース」の構築は、「能力主義評価と報酬」の実施には不可欠になってきます。この「人材評価管理データベース」を社内でどこまで開示して行くかは企業の決定ですが、人事だけが情報を独占して握っている企業では、多くの場合「能力主義」の社員評価は失敗してしまいます。現場の管理職が部下能力の広範囲な能力を把握して、最高の効率で社員能力を発揮させるには、「人材評価管理データベース」が「能力主義」を具体的に実践するために不可欠な要素であることが、まだまだ企業には理解されていません。 加速度的に変化する社員の広範囲で多様な知性能力を、企業が有効に活用するためには、日々変化する社員の知性能力の管理と評価と報酬の社内システムが必要になります。社員の最も得意とする能力業務や多様な社員能力に、その才能を最大限発揮してもらうだけの社員の知性能力管理システムが企業には必要となるのです。社員という「人間能力」のごく一部を企業業務に使い、好きでも得意でもない業務を続けることが、いかに社員能力の非効率性を生み出すかは説明するまでもありません。社員の給与は、企業で仕事する我慢料と考えられるくらい人間の特性を無視した人事が行なわれれば、企業業務の効率化など考えられません。 社員が好きで得意な仕事をできない理由は、企業が社員の能力を正確に把握していないことにあります。「社員能力」の管理をしてこなかった日本企業の最大の欠点が、「能力評価と能力報酬」を可能にする「社員能力管理」の意識欠如にありました。 「企業のための人生」を生きてきた多くの日本人は、転職も考えずひたすら企業のために働いてきました。職業人としての知性も企業が指示する教育で十分な時代がありました。 しかし、企業が一方的に「社員能力」の評価をして、リストラされる時代には、「社員能力」の責任は社員個人の責任となりました。「能力なき者は去れ」が「能力主義時代」の法則となりました。さらに、企業に入社後の「能力開発」は個人の責任であるために、個人が「能力開発」のための大学院進学なども考えなければならなくなりました。企業が社員の大学院進学を支援してくれれば良いのですが、多くの企業で社員の大学院進学支援の態勢が遅れています。企業を辞めて大学院進学して、卒業後に新たな企業に就職することが、すべての国民に可能であれば良いのですが、そのような社会制度も日本では確立していません。 能力主義を実施し、一方では能力習得の支援をしない日本企業では、社員は陳腐化する能力を再構築できず、多くの国民が知性競争や能力習得競争から脱落して行きます。 国家公務員の海外大学留学制度も、莫大な留学費用の返還制度がないために、帰国後に官庁を辞めて転職する公務員が毎年約10%もいます。自己資金ではなく、国民の税金を使った海外留学の方法として公務員になる国民が増えても困りますが、日本に高度な知性教育を支援する制度も機関も十分に整備されていないことが原因とも考えられます。 能力主義とは、まず「高度な知性教育と能力開発」に対する社員の挑戦の自由を保証しなければ、能力主義の実現など不可能で、日本の能力主義が企業に利用されて社員の給与カットやリストラの口実にしかなりません。日本企業が社員に対して「能力主義」を要求するならば、企業は社員に対して「社員の能力開発の自由」を約束しなければなりませんが、日本企業では仕事をしながら大学院に通うことなど容認する企業や上司はまだまだ少ないのです。 21世紀の企業経営には、過去の成功経験よりも最先端のビジネス手法の習得がはるかに重要です。多変量解析や統計解析や共分散構造分析などの理論を知らないマーケティング部長や商品開発部長が日本企業には数多く存在します。線形計画法も知らない製造部長や物流部長もいます。金融工学の最先端理論も知らない財務担当部長もいます。 数年前までは、数百人で数ヶ月かかった経営分析も瞬時に分析する経営分析ソフトも存在します。世界はまさに加速度的にビジネスの知性を高度化させています。世界的な知性の高度化に個人の知性が陳腐化させないためには、凄まじい個人の知性に対する努力が必要になります。 加速度的に知性は進歩しており、最先端の教育を受けつづけられる企業制度が日本でも確立しないと日本企業の知性は加速度的に陳腐化していきます。 日本企業がこれまでの「人間管理経営」から「能力管理経営」へと進化して、社員個人の得意とする高度な能力開発に積極的に企業が支援し、最も強い能力分野で社員が働けるようになることが理想です。 好きで得意である仕事をする集団と好きでもない仕事を嫌々する集団とでは、企業経営の効率は大きく違ってきます。社員の生活は保証しないが、社員の能力挑戦の生活そのものは縛られる実力主義など、永久に実力主義を実現できません。社員の多様な能力の日本一や世界一への挑戦を企業が支援もせず、まして妨げるようでは、日本の実力主義は素人の低レベルの競争に過ぎなくなってしまいます。 「リーダーが足りない。それも10%や20%ではなく、200%も400%もだ。」という言葉は、米国ハーバード大学ビジネス・スクール名誉教授のジョンP・コッター教授の言った言葉です。「日本の能力主義」の隠れた最大の欠陥が、日本人は無意識に「リーダーは先天的な資質を備えた人物である。」と考えるところにあります。欧米やアジアの国民は「リーダーは後天的な教育によって生得できる能力」と考えます。能力に対する考え方が「先天的」と考えれば、伝統芸能の世襲制は十分理解できますが、人間能力の後天的な部分を合理的に考えれば世襲制の根拠がありません。 日本一や世界一を目指した日本人の後天的な努力は、アテネ・オリンピックでも証明されました。最近の日本のノーベル賞受賞者は、企業人として能力を高く評価されてきた人物ではありませんでした。社員個人の世界一に対する孤独な挑戦がノーベル賞として評価されました。日本一や世界一を目指す社員の自己教育に対する挑戦を企業が支援することが、21世紀の日本企業の真の再生を可能にします。 社員の能力を限定し、社員の能力や生活を縛る「人間管理経営」から脱却して、社員の多様な能力開発を支援し、社員の多様な能力を最大限活用する「能力管理経営」へと企業の考え方が移行しなければ、日本における実力主義の企業経営は不可能なのです。日本の実力主義経営が社員の加速度的に陳腐化する日本人知性の再構築を支援し、常に世界最先端の教育を目指す人材が企業経営や国家経営の最前線で働けるような企業社会と社会制度が日本で実現することを期待しています。
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| 中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋 隆 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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