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臥龍通信

臥 龍 通 信 第78号 <2004.05.10発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 78号 ◆
     激動する世界情勢

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 ◆ 臥 龍 通 信 第78号 ◆
    激動する世界情勢
激動する世界情勢

拡大する欧州経済
2004年5月1日に拡大欧州連合がスタートしました。 すでに加入していた、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、英国、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、スウェーデン、フィンランドの15ヶ国に、新規加盟のポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、キプロス、マルタの10ヶ国で、25ヶ国の欧州連合が成立しました。

さらに、トルコ、ブルガリア、ルーマニアが加盟準備に入っており、クロアチアやマケドニアも将来的には加入の予定です。 25ヶ国の拡大欧州連合は、人口4億5490万人で2003年のGDP合計は9兆7310億ドルで、米国のGDP9兆7130億ドルを超える規模になりました。日本の2003年GDPは約4兆8000億ドルで、欧州連合と米国は経済規模で日本の約2倍です。拡大欧州連合は、今後も加盟国を増加させ欧州地域の経済統合を進めていきます。拡大欧州連合の動きは英国の動きでも変化するでしょう。英国が最終的に米国連合に加担するのか、欧州連合に加担するのかでは、世界の動きは大きく違ってきます。 アジアでは中国とインドが台頭して、アジア連合の動きがあります。欧州連合や米国連合やアジア連合の狭間で日本の戦略が求められています。

米国GDP    約9兆7130億ドル
欧州連合GDP 約9兆7310億ドル
日本GDP    約4兆8000億ドル

最近ですが、霞ヶ関の官僚たちが中国に大きくシフトし始めました。米国一辺倒だった日本の国家戦略の中枢である霞ヶ関の官庁の官僚が、中国との提携や連携に大きく動き出しました。日本企業の中国市場進出に従って、日本の官僚がすでに米国ではなく中国に近づき始めたことは、日本でもあまり知られていません。米国や韓国が中国と行ってきた提携関係に大きく遅れてしまった日本の官僚組織がやっと中国に動き始めましたが、これまで中国対策と戦略で大きく遅れをとった韓国や米国に日本が追いつくのは大変難しい現状があります。「靖国問題」や「領土問題」や「台湾問題」など、日本が抱える中国問題は依然として解決されてはいません。21世紀に日本はどこに流れ着くのか。戦略もなく、国家としての総合力もなく、組織防衛の省益のために動き出した日本の官僚組織の実力をこれから拝見しようと思います。


BRICs
BRICs「ブリックス」とは、ブラジル、ロシア、インド、中国(チャイナ)の総称です。この4ヶ国の人口は約27億人で、2002年のGDP合計は2兆5000億ドルで、米国の約25%、日本の約50%のGDP規模ですが、米国有名証券会社のゴールドマン・サックスは2039年には、ブラジル・ロシア・インド・中国の4ヶ国のGDPが、日本・米国・英国・ドイツ・フランス・イタリアのG6の合計GDPを追い越すと米国投資家向けのリポートで発表しました。米国連合のブラジル、欧州連合のロシア、アジア連合のインドと中国の21世紀の台頭に、米国の投資家も新たな時代を予感し始めています。これまでの先進国が高齢化と少子化に苦しむ中、新興勢力が新たな21世紀の世界勢力図を大きく変化させています。また、地域の連合による統合経済圏の構築も始まっており、日本の21世紀の世界戦略はまだ明確にされていません。米国と中国との狭間で揺れ動いている時間は日本にはありません。省益と縦割り行政の苦悩をいまだ解決できない日本の国家総合力のないあいまいな戦略の中で揺れ動く日本の政治と行政に日本の21世紀を切り開く競争力があるのでしょうか。政治不信と国家経営力のなさは、いまや日本国民の忍耐の限界に来ています。


2004年世界競争力ランキング
欧州のIMD(経営開発国際研究所)が4月に「2004年世界競争力年鑑」を発表しました。
日本は1993年までは1位でしたが、その後20位以下に転落していまだに復活できていません。今回のランキングも世界60地域の競争力順位で日本は23位でした。アジア・ランキングでは、2位のシンガポール、6位の香港、12位の台湾、16位のマレーシアなどに追いつけず、日本は23位(昨年は24位)、中国は24位(昨年は29位)、タイは29位(昨年は30位)、インドは34位(昨年は50位)、韓国は35位(昨年は37位)など、アジア全体としての台頭が目立ちました。特に昨年の50位から34位にランクされたインドの急速な台頭ぶりは驚きです。

世界ランキング1位の日本が現在23位と低迷している原因ですが、まず「法人税率」と「起業家精神」は世界60地域で最下位の60位、「株主の責任と権利の明確化」や「企業上級管理職の国際経験不足」や「外国人労働者の法制度」では59位で、「政府の効率性」や「ビジネスの効率性」なども37位と、先進国でも最低の国家と企業の効率性が指摘されました。 日本の世界競争力を考えると、IMDの日本低迷の指摘がよく理解できます。税制と精神と責任と権利と管理職能力、そして国家と企業の効率性が日本の低迷の原因とIMDが指摘しているのは日本国民としても納得する結果ではないでしょうか。

私には信念があります。「国家づくりは人づくり。」という信念です。
学生だけでなく、企業社会人をいかに教育する環境と制度を構築するか。企業社会人の高度な再教育の問題に、アジア各国は1998年から大きく動きました。韓国も中国もインドもシンガポールも「国づくりのための人づくり」の政策を最重要課題として取り組みました。

世界競争力ランキング2位のシンガポールの例に考えれば、シンガポールは1998年から国際的な人材教育のために、海外の大学・大学院の国内誘致を始めました。シンガポールに現在進出して大学・大学院教育をしている海外の大学は、米国からマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、ジョージア工科大学、デューク大学、ジョンズ・ホプキンス大学、シカゴ大学経営大学院、フランスINSEAD、オランダのアイントフォーヘン工科大学、ドイツのミュンヘン工科大学、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学、中国の上海交通大学など10校以上の海外大学があります。海外から誘致した大学ではすでに5万人の学生が学んでいます。シンガポールはアジアの物流拠点や製造拠点というだけでなく、アジアの世界的な2〜3ヶ国語でビジネスできる高度な人材教育拠点としても機能し始めています。中国人やマレー人やインド人やインドネシア人が世界的な教育を受けられるアジアの知性拠点としての国家戦略は、10年後には海外進出大学だけでも10万人を教育するアジアの世界的な人材教育センターとしての機能を発揮するでしょう。新入社員ですでに2〜3ヶ国語のビジネスが可能で、管理職になる前にもう一度大学院でMBA教育を受けるアジアの企業人材に、日本企業の人材育成が今後どのように対抗していくのか。「分かってはいるけど自分にはアジアの人材のような向学心は実践できない。」と語る企業管理職や「5年や10年では日本の制度は変えられない。」と平気で発言する政治家や官僚を置き去りにして、世界はまさに激動しています。

2004年世界競争力ランキング
1位 米国
2位 シンガポール
3位 カナダ
4位 オーストラリア
5位 アイスランド
6位 香港
7位 デンマーク
8位 フィンランド
9位 ルクセンブルク
10位 アイルランド
11位 スウェーデン
12位 台湾
13位 オーストリア
14位 スイス
15位 オランダ
16位 マレーシア
17位 ノルウェー
18位 ニュージーランド
19位 BAVARIA(ドイツ・ババリア州)
20位 ZHEJIANG(中国・鎮江市)
21位 ドイツ
22位 英国
23位 日本
24位 中国
25位 ベルギー
29位 タイ
34位 インド
35位 韓国


国際刑事裁判所問題
現在、国際連合で設立準備が進められている問題に、国際刑事裁判所(ICC)というものがあります。国際刑事裁判所は国際社会に重大な影響を及ぼす大量虐殺、戦争犯罪や人道に対する罪を犯した「国家」ではなく「個人」を裁く常設の国際裁判所のことです。国家の名のもとに、責任があいまいにされてしまう戦争犯罪や人道侵害に対する罪を「個人」として裁くことができるための裁判所です。

国際刑事裁判所(The International Criminal Court =ICC)は戦争犯罪、人道に対する罪、またジェノサイド(大量殺戮)と呼ばれる国際人道法を犯した「個人」を裁くための常設裁判所です。管轄権が「国家」に制限されているハーグの国際司法裁判所と異なり、国際刑事裁判所は「個人」を起訴する権限を持つことになっており、その管轄権は時期的および地域的に制限されません。

1998年6月15日、160ヶ国の代表がローマに集まり「国際刑事裁判所設立のための国連外交会議」(United Nations Diplomatic Conference of Plenipotentiaries on the Establishment of an International Criminal Court)が開催されました。7月17日、5週間におよぶ議論の結果、代表国家の圧倒的多数の賛成で常設国際刑事裁判所設立のための条約(Statute)が採択されました。ハーグの国際司法裁判所の管轄が「国家責任」を追及する権限がありますが、国際刑事裁判所は「個人の責任」追及が時期や地域に限定されずに追及されます。

2004年5月7日現在で、国際刑事裁判所設立条約批准国(94カ国)の中に、米国と日本は参加していません。米国はイラクでの人権侵害に大きな岐路に立たされていますが、米国の基本的な立場は、国外での米国軍の犯罪行為には米国国内法の適用外となり、違法行為としての対象になりません。また、紛争地域の法律が事実上存在しなければ、米国軍の犯罪行為を裁く法律は地球上に存在しないということです。米国軍の紛争地域での拘束や裁判や虐待に関する結果を裁く法律が地球上に存在しない状況に、世界は恐怖しています。今回のイラクでの虐待事件は、米国政府がその行為を裁く気になったので、米国軍法で裁かれます。米国政府が裁く気がなければ、米国軍の虐待や拷問を世界の誰も裁く法律さえ存在しない事態に、世界は新たな国際裁判所を必要としています。

国際刑事裁判所は米国軍の個人の犯罪行為を地域や時期に限定されずに裁くことができる裁判所ですから、米国は国際刑事裁判所条約の批准を現在も拒否しています。 驚くべきことに、日本政府は米国との協調関係から国際刑事裁判所条約の批准を拒否しています。世界の主要国の多くが批准している国際刑事裁判所条約を米国との協調を優先して条約批准を拒否している日本の態度に、世界各国は日本の人道支援に対して大きな疑いと疑問を感じ始めています。戦争放棄と人道支援を基本方針とする日本政府が、国際的な個人の犯罪行為を裁く裁判所の設置に反対している態度は、世界に日本に対する大きな不信感を拡大させています。 日本が北朝鮮の拉致問題を国際的な問題として訴えようとしても、国際刑事裁判所の設置に協力しない日本政府に対して、世界各国の国民は本当に同情してくれるのか。日本の人類に対する誠意と責任と義務が試されています。

参考資料: 国際刑事裁判所問題日本ネットワーク
http://member.nifty.ne.jp/uwfj/icc/index.htm

参考資料:「臥龍通信」
発行日 発行No タイトル
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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