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臥龍通信

臥 龍 通 信 第75号 <2004.04.25発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 75号 ◆
     「韓流」の映画とドラマ

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    「韓流」の映画とドラマ
「韓流」の映画とドラマ

韓国のテレビ・ドラマの『冬のソナタ』が、NHKで放送され日本で異常なほどのヒットしました。NHKの放送されたドラマだけでなく、『冬のソナタ』の出版物も数十万部を売り上げる大ベストセラーになりました。主演のペ・ヨンジュンの来日には、日本のファンが「ヨン様」と言って、空港に数千人が押し寄せてテレビでも報道されました。

韓国のテレビ・ドラマの『冬のソナタ』が日本で人気が出る前に、すでに多くの韓国映画が日本で公開されて、大変な人気がありましたが、『冬のソナタ』のヒットはこれまでの韓国映画のヒットとはちょっと違った内容でした。『冬のソナタ』の中で展開する純愛に日本のファンはとりこになりました。『冬のソナタ』のヒットは過激な題材や内容ではなく、韓国の自然や人間の情感を「美しい純愛」として表現したことにありました。 最近は、韓国の映画やドラマを韓国流ということで、「韓流」という言葉が使われ始めています。韓国のドラマや映画が、日本だけでなく中国や台湾などでも人気が出ると、やはり「韓流」という言葉は、アジアの韓国を代表する文化的な言葉になりそうです。

韓国の映画は10年ほど前から大きな変化がありました。1998年に公開された、ホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』は主演のハン・ソッキュの演技もすばらしいのですが、全体に流れる雰囲気が日本で1995年に公開された岩井俊二監督の中山美穂と豊川悦司が主演した『ラブレター』を見ているような気がします。1999年に韓国で公開された『ラブレター』は韓国映画界ばかりでなく、韓国にも中山美穂と豊川悦司の多くのファンをつくる大ヒットとなりました。すでに1999年の韓国公開前に、1995年当時から『ラブレター』は多くの韓国人が見ており、その影響は正式な公開前から韓国の映画界の関係者に大変な影響を与えました。まさに『ラブレター』以前と以後の韓国映画界は、日本映画の『ラブレター』によって大きく変化したのです。中山美穂の「お元気ですか?」、「私も元気です」という日本語が日本文化に否定的であった韓国で考えられないほど流行しました。韓国人の日本文化の理解に『ラブレター』がどれだけ貢献したかは、日本人が想像できないくらいの影響を韓国社会に与えたのです。これまで歴史的に韓民族を支配し、植民地政策によって韓民族を虐げてきた大日本帝国の印象ばかりを教えられてきた韓国人に、日本の『ラブレター』という映画は日本の豊かな自然とそこに住む日本人の細やかな情感を韓国人に強く印象付けました。韓国人の日本人に対する印象の変化は、後にワールドカップ開催の成功を左右する大きな要因ともなりました。

2000年に公開された『イルマーレ』は韓国の映画ですが、日本の映画ではないかと思うほどの静かな情感が溢れています。主演のイ・ジョンジェの演技もすばらしいのですが、 相手役のチョン・ジヒョンは『猟奇的な彼女』でヒロインを演じたことでも知られています。1998年の『八月のクリスマス』と2000年の『イルマ-レ』を見ていると、日本映画の『ラブレター』を思い出さずにはいられません。 過激な題材や演技で、日本の話題を奪った韓国映画が注目されてきましたが、いよいよ『冬のソナタ』によって韓国の情感溢れる映画やドラマの時代が来そうです。2002年の『二重スパイ』、2001年の『火山高』や『猟奇的な彼女』、2000年の『JSA』、1999年の『シュリ』など、韓国映画は過激な題材と演技で日本でも高く評価されましたが、『冬のソナタ』につながる『八月のクリスマス』や『イルマーレ』という韓国人の情感溢れる映画も忘れることはできません。

韓国と日本の文化交流は始まったばかりです。これまで日本の文化を拒否しつづけてきた韓国が日本の文化を受け入れる時代がやっと来ました。映画やドラマに始まり、やがて文化交流の領域は大きく拡大していくでしょう。今後は韓国の映画やドラマも歴史大河映画やドラマが韓国と日本で公開されていくでしょう。日本の「徳川家康」や「大奥」のような韓国の宮廷抗争や歴史的な人物像がこれまで以上に理解されていくでしょう。韓国の歴史大河ドラマや映画は、韓国の新羅時代や高麗時代や朝鮮時代の支配者と被支配者の関係や生活や文化を学ぶのに重要なヒントを与えてくれます。韓国文化を理解するためにも日韓の歴史大河映画やドラマの早い時期の韓国と日本での公開が待たれています。

アジアで韓国ばかりでなく、中国の映画で大きな話題となった映画にチャン・イーモウ監督の『英雄(HERO)』があります。ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーなどの出演者や映像のすばらしさは、日本人を驚かせました。中国では『英雄』以前と『英雄』以後では、中国の映画界は全く違うと言う評価を得るほどの中国映画界の歴史を記念する作品になりました。『英雄』の全編に展開される美しい自然と色彩美には圧倒される迫力がありました。西洋の文化美に対して、アジアン・ビューティー「アジアの美」の大きな台頭を感じさせる中国映画でした。 民族文化の歴史と美意識の究極を表現する「映画やドラマ」の文化的な影響力を、21世紀は大いに活用する必要があります。国際関係が政治の国益に傾きがちな時代に、映画やドラマの公開が、アジア民族の価値観や情感の理解に貢献するとすれば、映画やドラマの公開はアジア民族の重要な国際貢献の手段となります。

アジアのアジアン・ビューティの台頭に対して、日本はジャパニメーションのアニメで存在感を増しています。2004年は、士郎正宗の『イノセンス』と『アップルシード』、大友克洋の『スチームボーイ』、宮崎駿の『ハウルの動く城』と日本を代表するアニメーション作家の作品が世界に向かって公開されます。ただ、日本のアニメーションの制作はほとんどが韓国や中国に下請けとして出されており、スタジオ・ジブリの作品も制作は日本でできなくなりつつあります。アニメーションの動画制作の仕事は職人芸として重要な人材の育成でもありますが、日本では賃金が安く、アニメーションの職人芸はなくなりつつあります。アニメーションを重要な産業と考える米国では、アニメーションを教える大学が約200校ほどあり、米国のアニメーターの育成には政府や大学が積極的に動いています。韓国でも国家政策としてアニメーションの人材育成には注目しており、韓国でアニメーションを教える大学が日本の数校に比べて、すでに100校を超えました。

日本では多くの場合、マンガでヒットした作品がアニメーションになりますが、一般書籍で大ヒットは10万部以上で、音楽CDが100万部で、マンガが1000万部です。新人漫画家が大ヒットすれば、数千万部の売上があり、マンガの1作品の連載で収入は数億円から数十億円という莫大な額になります。まさに、学歴や性別に関係ない現在のジャパン・ドリームが新人漫画家という職業で実現しています。 国家ではなく民族としての存在を世界に問うことは、なにも製造業の製品や経済力ばかりでなく、優れた文化作品でも十分に世界に民族の存在を認めさせることができます。平和的で他民族の情感を動かし、武力や経済力に頼らない平和的な他民族理解に貢献するのは、やはり文化の力ではないでしょうか。製造技術者の特許を大きく凌駕する大ヒット漫画家の収入は、日本では技術者の特許のように注目されませんが、漫画家の成功報酬は莫大でサラリーマンが一生かかってもらう給与所得の何倍にもなり、世界の文化交流にも貢献するという重要な役割も日本の漫画家は担っています。日本人の若者が目指す職人芸の最大の収入と能力発揮の場が漫画とは驚きますが、それが日本の現実です。

ところで、ベルリンの壁を崩壊させたのは、武力ではなくテレビという文化の力でした。人類の最大の危機であった米ソ冷戦は、武力ではなくテレビの力によってソ連崩壊という形で解決されました。武力では解決できないことを文化が解決していくという教訓を我々は忘れてはいけません。どんな民族も武力では支配できないことを文化の支配が語っています。多様性のある人類民族の文化の交流と理解が、悲惨な武力行使を無意味にしていきます。武力や経済力を重視する国家の存在よりも、様々な文化の力を重視する民族の存在が21世紀には重要です。

国家は滅亡しても、それは民族の滅亡を意味しない。米国は多民族国家ですが、米国には黒人もヒスパニックもアジア人もユダヤ人も国家としてではなく民族として存在します。民族が単独で国家を形成しなければ地球上に存在できないと考えるのは間違いだと米国を見て感じます。国家の存亡よりも民族の存亡の方がはるかに重要であると考えれば、国家体制の維持のために酷使される国民の存在の意味が問われます。国家体制の維持ために酷使される国民の存在の意味を考えると、イラクと北朝鮮と日本の違いは国民酷使の程度の差ではないかと思ってしまいます。増加する日本国民の税金は、国家体制維持のための税金であって、国民のための税金ではないのではないか。ふとそのように考えてしまうのは私だけでしょうか。

日本社会の在り方を決定する日本人の文化は、今後の社会問題の解決と無関係ではありません。日本文化の有り方が日本人の価値観を形成して、日本社会の犯罪や教育や医療などに大きな影響を及ぼしていきます。国家復興や経済復興を考える以前に、日本の文化復興こそ日本人は望んでいると思います。武力や経済力ではなく、新たな日本やアジアの文化復興にこそ大きな期待をしたいと思います。

ちなみに、『冬のソナタ』だけではありませんが、韓国語には男性語や女性語といった日本語にある区別がありません。韓国語で台詞を聞いていると、男性と同じ言葉を女性が使う韓国語は、日本人の感覚からは大きな違和感があります。親しい男女間の会話で、男性が『お前は何を食べる?』と聞いて、女性が『お前と同じものを食べる。』と答える韓国語には、女性の台詞にちょっときつい印象がついて回ります。デートで女性から『お前は今日の予定をどう考えているのか?』などと言われても、親しみを感じるようになるには時間がかかります。『冬のソナタ』のヒロインの韓国語が翻訳されて、美しい日本語の女性語で聞こえてくると韓国人の情感が日本語として伝わってきますが、男性語と同じ韓国語で聞くと韓国語を学び始めたばかりの日本人には本当にきつく聞こえてしまいます。韓国のソウル大学に留学してから30年以上も韓国語を使ってきた私としては、韓国語の方が日本人としてではなく、韓国人としての情感が感じられます。女性語が基本的にない韓国語もまた韓国の文化なのですが、文化をほんとうに理解するためにはやはり語学は重要だと感じます。明治以降に名前を持った日本人と違って、千数百年の一族の歴史がある韓国女性は結婚しても名前が夫の名前に変わることもありません。ミス朴やミス金は結婚しても、ミセス朴やミセス金になるだけで、一族の名前を死ぬまで捨てることはありません。日本人では考えられない男性と同じ言葉を使う結婚しても名前も変わらない韓国女性の存在もまた「韓流」なのでしょう。

参考資料:公開コンテンツ
9.  韓国固有の価値観 (1) 〜 韓国語の価値観
 韓国固有の価値観 (2) 〜 韓国社会の価値観
 韓国固有の価値観 (3) 〜 韓国の政治における価値観
 韓国固有の価値観 (4) 〜 韓国の企業経営における価値観
 韓国固有の価値観 (5) 〜 韓国人の価値構造
2002.05
8.  韓国の歴史的社会文化構造 (1) 〜 韓国人の血縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (2) 〜 韓国人の地縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (3) 〜 韓国の軍閥と学閥
 韓国の歴史的社会文化構造 (4) 〜 韓国の財閥
2002.05

参考資料:臥龍通信
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.05.21 第51号  「裁判員制度」の法制化  
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革
2003.02.03 第40号  日本にはマネジメントがない
2003.02.03 第38号  競争社会に生きる競争嫌いの日本人
2003.02.03 第37号  日本の管理職とアジアの知性
2002.11.17 第36号  世界的な知性競争に対する日本の対応 
2002.11.17 第35号  大学生たちのムーブメント〜『中大を元気にする会』講演のまとめ
2002.09.08 第34号  アジアの台頭〜アジア経済圏実現の可能性と“ヒトづくり革命”
2002.09.08 第33号  教育の崩壊〜大人が子供に教えるべきこととは
2002.09.08 第32号  時代と人間を見抜く
2002.07.01 第31号  発展する中国の製造業〜知性に対しての厳しい評価とインセンティブ 
2002.07.01 第30号  21世紀の中国〜アジア型人民相互扶助経済モデル
2002.06.24 第29号  ワールドカップに見る韓国の国家再生の努力と覚悟
2002.06.24 第28号  韓国のビジネス最新事情
2002.06.24 第27号  スタープレーヤーの時代
2002.05.27 第26号  日本人の歴史認識〜アジアの歴史認識と大国優位意識   
2002.05.07 第25号  世界競争力から見た日本−台頭するアジア諸国と置き去りにされる日本 
2002.03.29 第24号  21世紀のサラリーマンの生き残り方法 −マルチジョブの人生 
2002.03.29 第23号  アジアの躍進と日本 −大陸民族の大躍進と日本人の特権意識
2002.01.22 第21号  ブロードバンド時代のオンラインゲーム
2002.01.15 第20号  韓国と日本のブロードバンドの誤解と実態
2001.12.25 年末特別号  日韓国家情報化計画比較
2001.12.17 第19号  韓国と米国と日本の政治 

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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