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臥龍通信

臥 龍 通 信 第74号 <2004.04.08発行>
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 ◆ INDEX ◆

  ◆ 臥 龍 通 信 第 74号 ◆
     日本のIT産業の実力

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 ◆ 臥 龍 通 信 第74号 ◆
    日本のIT産業の実力
日本のIT産業の実力

日本のITに対する政府の重点施策は、首相官邸に設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(通称:IT戦略本部)による平成13年(2001年)からのe-Japan戦略から始まりました。その当時の最先端政府計画がすでに時代に遅れたもので、すでにアジアでも達成された数値目標を4年後に実現するなどというとんでもない計画でした。その後に出てくる電子政府計画でも、世界に大きく遅れて現在も追いつくような状況ではありません。 あまりに悲惨な内容なので公表しなくなりましたが、日本のソフトウェア輸出と輸入の政府統計がなくなりました。以前は日本電子工業振興協会が発表していましたが、日本のソフトウェア国際競争力を表すソフトウェア輸出が約90億円で輸入9189億円の1%ほどという日本のソフトウェアの現状はいまだ真面目に議論されません。日本のIT業界では、ソフトウェアの輸入が輸出の100倍もあるなどとは一般に国民にはあまり知らされていません。

日本のソフトウェア輸出入の比率
     1994年  1998年  2000年
米国    0.7%   0.2%   0.5%(輸出39億円/輸入8217億円)
欧州   32.2%   4.6%   4.6%(輸出30億円/輸入642億円)
アジア  61.3%  30.0%   6.8%(輸出18億円/輸入263億円)
全体    2.1%   1.5%   1.0%(輸出90億円/輸入9189億円)
出典:社団法人日本電子工業振興協会

米国からの輸入としては、マイクロソフト社のPCソフトのWindowsがありますし、欧州からの輸入は企業の基幹業務(製造・販売・物流・会計・人事・給与・金融などの企業の基幹となる業務)ソフトで有名なドイツのSAP社があります。個人で使うPCのソフトウェアのWindowsは有名ですが、ドイツのSAP社や米国のPeople社などの企業業務ソフトウェアでERPと呼ばれているソフトウェアは一般にはあまり知られていないかもしれません。実は日本の多くの企業が海外のソフトウェアを利用して、企業の基幹業務を維持しています。日本企業の業務を動かしているのは、現在では企業の社員ではなくコンピュータのソフトウェアと言っても良いでしょう。膨大な情報を瞬時に処理する情報処理のシステムがなければ、日本企業は企業経営を維持することはできません。日本のIT産業は設計から開発終了まで3年〜5年もかかる企業情報システムの開発製造を放棄して、現在は海外のソフトウェアを輸入して利用しているのが現状です。 海外のSAP社だけでも、ソフトウェアを日本企業に販売しないとすると、すぐにも日本の代表的な企業の企業経営は3年から5年はストップすることになります。どれだけの日本企業が海外のソフトウェアに依存した企業経営をしているかを再度検討する必要があります。

ドイツのSAP社のソフトウェアを利用する代表的な日本企業

エレクトロニクス
●アルパイン株式会社 ●アンリツ株式会社 ●沖電気工業株式会社 ●オリンパス株式会社 ●京セラミタ株式会社 ●コニカミノルタホールディングス株式会社 ●株式会社三協精機製作所 ●三洋電機株式会社 ●シャープ株式会社 ●スタンレー電気株式会社 ●セイコー株式会社 ●セイコーインスツルメンツ株式会社 ●セイコーエプソン株式会社 ●ソニー株式会社 ●大日本スクリーン製造株式会社 ●太陽誘電株式会社 ●ティアック株式会社 ●TDK株式会社 ●株式会社ニコン ●日本エリクソン株式会社 ●日本航空電子工業株式会社 ●日本サムスン株式会社 ●日本ポラロイド株式会社 ●日本モレックス株式会社 ●ノキア・ジャパン株式会社 ●パイオニア株式会社 ●パナソニックコミュニケーションズ株式会社 ●株式会社日立製作所 ●富士ゼロックス株式会社 ●富士ゼロックスプリンティングシステムズ株式会社 ●ブラザー工業株式会社 ●HOYA株式会社 ●松下電器産業株式会社 ●三菱住友シリコン株式会社 ●三菱電機株式会社 ●ヤマハ株式会社 ●横河電機株式会社 ●株式会社リコー

自動車
●いすゞ自動車株式会社 ●住友ゴム工業株式会社 ●ダイムラー・クライスラー日本株式会社 ●東洋ゴム工業株式会社 ●日産自動車株式会社 ●日産ディーゼル工業株式会社 ●日野自動車株式会社 ●富士重工業株式会社 ●株式会社ブリヂストン  ●ポルシェ・ジャパン株式会社 ●マツダ株式会社 ●横浜ゴム株式会社

薬品
●エーザイ株式会社 ●大塚製薬株式会社 ●杏林製薬株式会社 ●小林製薬株式会社 ●参天製薬株式会社 ●三共株式会社 ●塩野義製薬株式会社 ●住友製薬株式会社 ●第一製薬株式会社 ●武田薬品工業株式会社 ●田辺製薬株式会社 ●中外製薬株式会社 ●富山化学工業株式会社 ●日本新薬株式会社 ●バイエル薬品株式会社 ●藤沢薬品工業株式会社 ●三菱ウェルファーマ株式会社 ●山之内製薬株式会社

機械・エンジニアリング
●石川島播磨重工業株式会社 ●宇部興産機械株式会社 ●株式会社荏原製作所 ●川崎重工業株式会社 ●株式会社クボタ ●株式会社熊谷組 ●栗田工業株式会社 ●コベルコ建機株式会社 ●株式会社小松製作所 ●株式会社積水工機製作所 ●ダイキン工業株式会社 ●中電プラント株式会社 ●日本電気エンジニアリング株式会社 ●株式会社ミスミ ●三井造船株式会社 ●三菱化学エンジニアリング株式会社 ●三菱重工業株式会社 ●安川エンジニアリング株式会社 ●株式会社安川電機 ●四電エンジニアリング株式会社

化学
●旭化成株式会社 ●出光石油化学株式会社 ●宇部興産株式会社 ●鐘淵化学工業株式会社 ●カネボウ株式会社 ●株式会社クラレ ●呉羽化学工業株式会社 ●昭和電工株式会社 ●昭和電工パッケージング株式会社 ●新日本石油化学株式会社 ●住友化学工業株式会社●デュポン株式会社 ●帝人株式会社 ●東リ株式会社 ●東レ株式会社 ●日産化学工業株式会社 ●株式会社日本触媒 ●日本ゼオン株式会社 ●日本テトラパック株式会社 ●バイエル株式会社 ●BASFジャパン株式会社 ●三井化学株式会社 ●三井住友ポリオレフィン株式会社 ●三井武田ケミカル株式会社 ●三菱化学株式会社 ●三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 ●三菱ガス化学株式会社 ●三菱樹脂株式会社

鉄鋼・素材
●旭硝子株式会社 ●王子製紙株式会社 ●三協アルミニウム工業株式会社 ●山陽特殊製鋼株式会社 ●セントラル硝子株式会社 ●同和鉱業株式会社 ●株式会社日鉱マテリアルズ ●日新製鋼株式会社 ●三井金属鉱業株式会社

石油
●エクソンモービル有限会社 ●九州石油株式会社 ●コスモ石油株式会社 ●昭和シェル石油株式会社 ●東燃ゼネラル石油株式会社

小売
●イオン株式会社 ●株式会社天満屋 ●株式会社ファミリーマート ●株式会社ヨドバシカメラ

情報サービス
●株式会社アイ・ティ・フロンティア ●九電情報サービス株式会社 ●株式会社JR東日本情報システム ●TIS株式会社  ●東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 ●日本ビジネスシステムズ株式会社 ●日鉄日立システムエンジニアリング株式会社 ●日本ユニシス・ソフトウェア株式会社 ●株式会社日立国際ビジネス ●株式会社日立情報システムズ ●富士ゼロックス情報システム株式会社 ●株式会社富士総合研究所 ●株式会社富士通システムソリューションズ

メディア
●株式会社イマジカ ●株式会社小学館 ●株式会社集英社 ●全国朝日放送株式会社 ●電通ヤング・アンド・ルビカム株式会社 ●株式会社電通テック ●株式会社電通 ●凸版印刷株式会社 ●株式会社東京放送 ●株式会社日経BP ●株式会社博報堂 ●株式会社ベネッセコーポレーション ●株式会社リクルート

金融・保険・証券
●イオンクレジットサービス株式会社 ●NECリース株式会社 ●オリックス株式会社 ●さくらカード株式会社 ●新光証券株式会社 ●ジー・イー・エジソン生命保険株式会社 ●第一生命情報システム株式会社 ●野村證券株式会社 ●プロミス株式会社 ●株式会社三井住友銀行 ●株式会社みずほコーポレート銀行

公共・公益
●岡山大学 ●関西電力株式会社 ●核融合科学研究所 ●九州電力株式会社 ●国立情報学研究所 ●高知大学 ●JA全中●独立行政法人 国際協力機構(JICA) ●独立行政法人 造幣局 ●長野県厚生農業協同組合連合会 ●鳴門教育大学 ●広島大学 ●北陸電力株式会社

航空・船舶・運輸・倉庫
●全日本空輸株式会社 ●日本航空株式会社 ●西日本旅客鉄道株式会社 ●北海道旅客鉄道株式会社

通信
●株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ ●エヌ・ティ・ティ・ソフトウェア株式会社  ●エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 ●エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 ●株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー ●エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 ●CSKネットワークシステムズ 株式会社 ●西日本電信電話株式会社 ●東日本電信電話株式会社 ●ボーダフォン株式会社 ●アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社 ●アビームコンサルティング株式会社 ●インテル株式会社 ●中央青山監査法人 ●日本ヒューレット・パッカード株式会社 ●株式会社日本総合研究所 ●日本アイ・ビー・エム株式会社 ●マイクロソフト株式会社

商社・卸売
●伊藤忠商事株式会社 ●株式会社大塚商会 ●住友商事株式会社 ●豊田通商株式会社 ●日商岩井株式会社 ●ニチメン株式会社 ●ブルガリ ジャパン株式会社 ●丸紅株式会社 ●三井物産株式会社 ●三菱商事株式会社

食品
●アサヒ飲料株式会社 ●アサヒビール株式会社 ●味の素株式会社 ●江崎グリコ株式会社 ●カゴメ株式会社 ●カルビー株式会社 ●キリンビバレッジ株式会社 ●株式会社紀文食品 ●キリンビール株式会社 ●株式会社ニチレイ ●日本たばこ産業株式会社 ●日本デルモンテ株式会社 ●フィリップ・モリス株式会社 ●森永製菓株式会社 ●株式会社ロッテ

消費財
●ウエラ・ジャパン株式会社 ●コダック株式会社 ●サンスター株式会社 ●ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ●株式会社トミー ●日本ロレアル株式会社 ●日本リーバ株式会社 ●プロクター・アンド・ギャンブル・アジア・ピーティーイー・リミテッド ●三菱鉛筆株式会社 ●株式会社リーボックジャパン

その他サービス
● 株式会社沖電気カスタマアドテック ●株式会社カプコン ●国際航業株式会社 ●コナミ株式会社 ●セコム株式会社 ●株式会社セガ ●株式会社デニーズジャパン ●株式会社パソナ ●日立計測器サービス株式会社 ●富士通サポートアンドサービス株式会社

ドイツのSAP社のほんの一部ですが、これだけの日本企業を代表する企業がSAP社のソフトで経営を維持していることに、国民の皆さんは驚かれると思います。海外の企業ソフトウェアはドイツのSAP社だけではありません。日本の代表的な企業のほとんどが海外の企業ソフトウェアなしでは、企業経営が成り立ちません。ドイツのSAP社と同様な企業基幹業務システムを日本のIT産業が開発するとすれば、最低5年以上の期間と数百億円のコストが必要で、日本のIT産業にもはやその技術力も資金力もありません。

2003年に日本のソフトウェア輸出額はとうとう中国に抜かれ、日本の100倍以上の1兆円を超えるソフトウェア輸出を実現しているインドのソフトウェア業界を考えた時、日本のソフトウェア産業の現状を国民の皆さんはどのように考えられるでしょうか。 日本企業の基幹業務ソフトウェアが海外で開発され、日本のエンジニアの仕事は海外のソフトのチューニング(調整)だけでは、モノづくりの日本のIT職人技能は企業の現場で永遠に失われます。日本のソフトウェアの国際競争力は米国やインドに遠く及ばず、中国にも対抗できない現状はさらに進んでいます。

日本企業の社長の能力と基幹業務の情報システムを比較すると、社長がどんなに優秀でも陳腐な基幹業務システムであれば、企業は厳しい企業競争の中で倒産に直面します。数万人や数十万人の企業業務を効率的に遂行する企業基幹業務システムの構築が優秀な社長の存在よりも企業には重要な時代に、日本のソフトウェア産業の惨状は多くの国民にも知られることなく進行しています。

日本の製造業から始まり、鉄道、航空、電力、通信、金融、食品、化学、医薬などの日本企業のほとんどの企業業務システムが欧米のソフトウェア企業に依存しているなど、まさに悪夢のような現状です。外国のソフトウェア企業に依存した日本の企業活動と企業経済など、日本経済を動かしている日本企業の業務効率の国際競争力ばかりでなく、企業情報のセキュリティの側面からも国家戦略として成立するのでしょうか。

日本のIT産業の現状を例えれば、日本が戦争するのに、日本の武器が敵国よりもはるかに劣るために、敵国が武器を売ってくれるので、敵国の武器を購入して戦争しようとするようなものです。敵国で生産された優れた武器で戦えば、日本民族は優秀だから必ず戦争に勝てるという戦略を日本政府や日本の業界が本気で考えているとすれば、もはや戦略というより愚かさの極致で批判する言葉もありません。企業情報システムは世界的な企業活動を効率的に遂行する企業の頭脳であり神経です。企業の頭脳と神経を外国企業に依存する日本企業の国際競争力を、もう一度国家戦略という観点から再検討する必要があります。

ちなみに、日本の科学技術雑誌の「ダイヤモンド・ループ」が廃刊になりました。日本のトロン・プロジェクトが米国政府やマイクロソフト社の圧力によって、日本政府も支援を中止して世界に誇る日本のソフトウェアは大きな打撃を受けたことなどを特集してきた雑誌が廃刊になるのは、ほんとうに残念です。世界を目指す日本の科学雑誌が廃刊に追い込まれ、ゴシップ週刊誌だけが売れる日本国民の知性の在り様が、さらに日本国民の知性と技術力を陳腐化させています。

参考資料:
発行日 発行No タイトル
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革


中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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