| メールマガジン臥龍通信 | HOMEへ |
![]() |
|
臥 龍 通 信 第72号 <2004.03.29発行> http://www.Nakajima-MSI.com |
|
|
※「臥龍通信」は、ご登録メンバーの皆様に配信しております。 |
||||||
|
|
||||||
| ◆ INDEX ◆ | ||||||
◆ 臥 龍 通 信 第 72号 ◆ 「攻殻機動隊」と「イノセンス」 ◆ Nakajima-MSI INFORMATION ◆― 臥龍通信入退会のご案内 |
||||||
| ◆ 臥 龍 通 信 第72号 ◆ 「攻殻機動隊」と「イノセンス」 |
||||||
| 「攻殻機動隊」と「イノセンス」 押井守監督のアニメ映画「イノセンス」が公開されています。立派な大人が「マンガ」や「アニメ」の話を真面目に語るのはどうかと考える人も多くいることでしょう。 しかし、アニメ映像の説得力はすでにスタジオ・ジブリの作品である「となりのトトロ」や「風の谷のナウシカ」や「千と千尋の神隠し」などで日本人は経験済みです。 人間の新たな世界観を構想する想像力と作品として表現する創造力は、現在は映像作品として最大限に発揮されています。 その人間の想像力と創造力の最頂点とも言える大人の映像作品「イノセンス」が公開されました。今回は、原作は士郎正宗、脚本・監督は押井守、音楽は伊藤君子「Follow Me」、プロデューサーは石井光久・鈴木敏夫といった人材が作り上げた「イノセンス」と「イノセンス」の前の物語である「攻殻機動隊」を取り上げます。 日々をビジネスの現場で忙しく働く社会人の皆さんには、アニメなど興味もないという方々が多くいらっしゃるはずです。そんな社会人の皆さんにアニメ入門とも言える作品がありますが、あえて今回は難解な「攻殻機動隊」と「イノセンス」をご紹介します。 「イノセンス」は、1995年に世界的にも高く評価された士郎正宗の原作マンガ「攻殻機動隊」が、押井守監督で『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』という作品として発表されてから続く「攻殻機動隊」の延長のお話です。「攻殻機動隊」の『GHOST IN THE SHELL』のお話が分かっていないと「イノセンス」を理解するのは難しいかもしれません。この「攻殻機動隊」の『GHOST IN THE SHELL』は翌年の1996年には、米国のビルボード誌のビデオチャートで1位を獲得し、「タイタニック」のジェームズ・キャメロンや「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟など、数々のハリウッド映画の監督や作品に多大な影響を与えました。ちなみに、映画の「マトリックス」の三部作を見た人も「アニマトリックス」まで見た人は多くないと思いますが、「マトリックス」の舞台設定を理解するには「アニマトリックス」を見ないと分からない部分があります。日本のアニメ・スタジオが多く参加した「アニマトリックス」を見ても、「攻殻機動隊」の影響は明らかです。「攻殻機動隊」の発表で、士郎正宗と押井守という日本人は世界的にも多大な評価を得るアニメ作家と監督として認知されました。今回の「イノセンス」はスタジオ・ジブリの作品でプロデューサーだった鈴木敏夫が参加して、非常に巧みなプロモーション活動を展開しました。また、音楽を伊藤君子という歌手を起用してテーマ曲である「Follow Me」はその歌詞にもこの作品の意味がこめられています。まさに奇才のコラボレーションが「イノセンス」には生かされています。 「イノセンス」は現在も公開中ですから、あまり内容を公開してしまうと面白くないので、「イノセンス」を理解するために、1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』という作品を予備知識としてまず説明しておきたいと思います。 人間はいかにして人間として、個として存在しえるか。人間とは個とは何か。 これらの答えを未来の電脳社会の環境を設定して追及した作品が、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』という作品であったような気がします。 科学技術の発展によって、人間は際限なくサイボーグ化していき、脳以外の全ての人間器官を機械化した人間の人間としての存在をいかに人間が認識していくのか。『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』という作品には、キーワードがあります。人間を極限まで機械化した体(ボディー)をこの作品では「義体」と呼びます。義手、義足等の延長線上にあるもので、失った肉体を補うために作られた人工の肉体のことです。 『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』は、西暦2030年、情報ネットワークが進展し、犯罪が複雑化して、電脳犯罪を事前除去する組織である公安9課、通称「攻殻機動隊」の話です。人間の脳以外の部分を完全義体化したサイボーグである草薙素子(くさなぎもとこ)が主人公で、この素子が「イノセンス」の素子につながってきます。 また、「GHOST IN THE SHELL」の意味も「GHOST 」は人間の「魂」を意味し、「IN THE SHELL」の「SHELL」は「義体」という意味です。「完全機械化された肉体に宿る魂」が「GHOST IN THE SHELL」の意味と考えられます。極限までサイボーグ化した機械肉体に「人工知能(AI)」を搭載しても人間ではなく、人間には「魂(GHOST)」があるというわけです。つまり、「義体(SHELL)」の中に「魂(GHOST)」があることが人間としての条件となっています。 『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』という作品には、草薙素子以外にもう一人の主人公が存在します。通称「人形使い」という人工知能(AI)です。人間によって作られた人工知能が電脳ネットワークの海の中で、情報を収集し学習して成長し、個としての意識をもつに至る人工知能です。「人形使い」の人工知能は自分の死である消去を恐れて、電脳生命体としての亡命を主張します。 人間が脳の存在だけを拠り所にする以外に生命としての説明ができない人間に、電脳生命体は新たな主張を展開します。人間は遺伝子という情報によって作られ、個として存在するのは個としての記憶があるからだというのです。人間が遺伝子と言うプログラムと記憶によって人間であり、個であるならば、電脳生命体もプログラムであり、個としての記憶を所有する生命体で、人間と違いはないと主張します。 ただ、電脳生命体は自分のクローンであるコピーは残せるが、人間のように親の遺伝子の半分づつを継承する子孫は残せません。だから、人間の脳が電脳ネットワークに接続される時代には、人間の脳と融合し電脳生命体のコピーであるクローンではなく、新たな電脳生命体を生み出し、ネットワークに多くの電脳生命体の子孫を人間と同じように残せると電脳生命体は考えます。 その電脳生命体が融合する相手として選択したのが草薙素子で、電脳生命体は人間との融合で新たな電脳生命体へと進化し、自分のコピーではない多様性のある子孫を残せるようになります。電脳生命体は生命の全ての機能を獲得することになるのです。生命が種としての多様性を確保するために自分のコピーではない生命を可能にする減数分裂をするように、電脳生命体も自分のコピーではない生命の多様性を可能にする融合によって、新たな電脳生命を生み出すというわけです。新たな電脳生命は新たな情報を収集して、個としての記憶の蓄積によってさらに多様性を増大させていきます。新たな生命の誕生と進化が『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』の話の中で展開していきます。 人間は親の記憶をなぜ子孫に残せないのか。個としての多様性が進化に必要であれば、親の記憶を子孫が持つことは、親の個としての記憶をコピーすることになり、クローンと違いはありません。親の遺伝子の半分をそれぞれ継承して、新たな種としての多様性を獲得し、新たな環境に適応するために、親の記憶を全て消去した形で個としての新たな記憶を獲得することが人間の多様性と進化を可能にしてきました。親の記憶のコピーを子孫が持つことは、親が永遠に生き続けることで、人間の個としての多様性は失われるというわけです。生まれてくるのは自分という恐ろしい現象が親の記憶のコピーで生まれるのです。死による親の記憶の消滅は、人間の個としての多様性を確保する進化には重要なことなのです。 「生命」とは何か。「魂」とは何か。未来社会を舞台に『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』は深く人間に問いかけてきます。まさに、人間の想像力と創造力の結晶のような内容にすばらしい映像美で、人間の根源の問題を問いかけてくるのです。 人間の個人としての存在は、その人間の単なる知識ではなく、記憶に由来していることは否定できない事実です。人間の感情や人格を決定しているのも、まさに人間の個としての記憶です。人間の脳に存在する記憶を、外部記憶装置に置き換えていった時に、新たな電脳生命体の可能性というものが生まれるというのが、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』では鮮明に描かれています。 そして、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』で電脳生命体と融合した「素子」の話が「イノセンス」へと続いていきます。 人間の脳の電気的な仕組みと思考との関係や遺伝子の解明が加速度的に進む21世紀には、新たな「生命」と「個としての人間」の問題が生まれるだろうことを、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』は感じさせます。 いまだ、科学的に「生命」を定義できないでいる人間に、「人間」や「生命」を再度問いかける大きな機会を、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』と『イノセンス』は皆さんに提供するでしょう。 人間は古代から死を恐れ、永遠の生命を求めつづけました。長生きしたい、死にたくないという人間の欲望は、科学技術の生命科学を進歩させてきました。人間の種としてのプログラムである遺伝子の操作までするようになった人間の生命科学は、今後『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』のような「義体」の技術も可能にしていくことでしょう。 しかし、人間の生命に関する考え方には大きな疑問があります。 人間の生命は長生きすることが重要なことであるかということです。 歴史的に考えれば、人間は「人間の命をかけても守らなければならないものがある。」と言っては戦争をはじめ、「人間の命以上に重いものはない。」と言っては戦争を終結させてきました。権力者は人間の生命を政治の道具に使ってきましたし、個人は長生きしたいし、死にたくないと生命の延命方法を求めつづけてきました。人間の生命とは死からの開放を求めた人間の長生きできることに価値があると思われてきたのです。自分をサイボーグ化してまでも生命を永らえる人間の存在を、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』で見せつけられると、生命の死に対する考え方が変わってきます。死なないためにはどんな方法でも容認する人間の欲望が見えてきます。 人間にとって必要な生命への認識は、死を恐れ死にたくないために生命を永らえることではなく、生きている過程の生き様にこそ価値があるということではないでしょうか。死という現実から逃げるのではなく、正面から対峙して死を自分の人生として受け入れることが重要だと感じます。人間の生命の価値はどれだけ永く生きたかではなく、死までの時間にいかに生きて、何をなしたかではないでしょうか。生命の死を人間がどう受け止めるべきなのかということを、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』は人間に深く問いかけてきます。 人間は自分が死を迎えるまでに何をなすかを忘れて、ただ死の延命技術だけを進歩させた時、人間は絶えられない退屈な時間を過ごすことになるでしょう。人間の生命が生きた時間が問題ではなく、生きた生き様の内容であることを考えると科学技術の進歩も人間のあり方が大きな意味を持ってくるのです。 生命とは何か。死とは何か。個としての人生とは何か。様々な問いかけが『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』の中で展開します。 贅沢で楽な生活を長生きして楽しみたい。そのためにはどんな方法でも容認していく人間の欲の深さが、日本社会で何を生み出していくのか。私の想像力は現在の日本社会にまで拡大していきます。 高度な先進国である日本で、住む人間のことを考えない職人によって建てられた日本の住宅の約60%が欠陥住宅であると言われる日本の建築技術や医療知識がない医者の医療ミスをなくすことができない日本の医療技術、大人としての認識に欠ける教師を放置して高度な教育も難しくなった教育技術、外国人や未成年者だけでなく警察内部の犯罪さえ防止できない日本の警察技術、食べる人間のことを全く無視した食物生産を続ける国民の食の安全さえ満足に確保できない食料技術、国家財産を自分達の権益に食いつぶして責任も取らない国家経営で国家を破綻に向かわせている国家経営技術などといったことを考えると、贅沢と楽しみだけの生命の延命のために「義体」化していく人間の姿は、人間の尊厳を忘れた日本人の技術主義の行き着く先だと感じます。 日本人が正直に正しく生きることよりも、経済的な成功を優先し始めた時に、まともなモノづくりやヒトづくりができなくなりました。その国を知りたければ、その国の住宅と食べ物と教育と治安を見れば分かります。世界的なモノづくりの日本の技術水準は日本の欠陥住宅の現状を見れば分かります。百年や千年でも住みつづけられる日本の家づくりの技術は25年で立て替えなければならない家づくり技術に陳腐化し、まともに住むことさえできない家づくり技術へと堕落しました。さらに深刻なのは、住宅に欠陥があると知りつつ販売して良心の呵責も感じない日本人の存在です。明らかに不正であり違法であることが、まったく気にならなくなった日本人の社会で生きていくことはもはや苦痛です。 自分の生きた内容に価値を見出さない日本人が増加して、欠陥住宅を作りつづけ、医療ミスを増加させ、危険な食物を作り続け、子供の教育をおろそかにし、犯罪を増加させ、国家経営を破綻させるとすれば、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』が問いかける生命の尊厳など、日本人には理解できないし、理解する価値もない内容かもしれません。 良い機会なので、『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』と『イノセンス』という難解な大人のアニメに皆さんは一度挑戦してみてはいかがでしょうか。 先日、私は『イノセンス』を見てきましたが、やはり『攻殻機動隊』の前作品を見てないと理解できない部分が多くありました。そして、作品の内容よりも日本アニメの映像美の究極といえる美しさに驚かされました。いよいよ日本アニメは、世界の究極の美を表現するまでのレベルになったと感じました。世界は『イノセンス』の美しさに驚き、打ちのめされるでしょう。『イノセンス』は、新たなアニメ世紀の幕開けを飾る記念すべき作品になると思います。大人のアニメ作品である『GHOST IN THE SHELL・攻殻機動隊』と『イノセンス』を皆さんもご覧になって、問題だらけの日本を少しの間忘れて、日本の職人芸が存分に発揮されている日本アニメの究極の美を堪能してはいかがでしょうか。 |
||||||
| 中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋 隆 | ||||||
|
●『臥龍通信』バックナンバーはこちら→ http://www.nakajima-msi.com/mzbackno.html ●ご意見・ご感想はこちら→info@nakajima-msi.com |
||||||
| ◆ Nakajima-MSI INFORMATION ◆ | ||||||
|
||||||
|
Copyright(C) 2004 Nakajima Management Science
Institute E-mail:info@nakajima-msi.com |