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臥龍通信

臥 龍 通 信 第63号 <2003.10.17発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 63号 ◆
    企業就労と健康と個人の幸福

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   企業就労と健康と個人の幸福
企業就労と健康と個人の幸福

日本の製造業がバブル以降で過去最高の収益を上げ、企業収益の改善が株式市場でも歓迎されています。日本の製造業は1991年の売上が166兆円で、2003年の製造業の売上は153兆円と13兆円減少しましたが、日本から家電産業全体が壊滅し消滅したくらいの規模で売上が減少しました。しかし、売上から固定費と変動費を引いた企業収益は過去最高となりました。 市場が小さくなり、企業売上が減少する日本で、過去最高の収益を上げた日本企業は、大幅な人員整理やリストラという人件費の削減やカットによって達成されたものです。つまり、払うべき給与をカットして給与総額を削減した結果の収益であって、本来は社員給与となるべきものを企業収益にしてしまったわけです。

もちろん、企業が社員にどれだけの給与を支払うかは企業の自由な選択に委ねられています。社員給与をカットして、企業収益として計上しても法律に違反するわけではありません。社員が文句を言わず働いている以上、企業外部の人間が文句を言うことではありません。

日本経済の縮小は、デフレのために縮小しているとの説明がありますが、自動車もテレビも日本の製造業製品は、販売当初から価格は急速に低下してきました。家一件分の価格であった自動車や年収の数年分の価格であったテレビがいかに安くなったかを考えると、20世紀はデフレ経済の真っ只中にありました。 一方、変わらない現象もあります。ラーメンが65円のころ、新卒社員給与が2万円で、現在ラーメンが650円で、新卒社員給与20万円であれば、一体何が変わったのでしょう。

日本の経済を考える上で重要なことは、国民が幸せかと言うことです。 年功序列や終身雇用制が崩壊し始めて、年俸制を採用する企業が増えました。年俸制を誤解している企業も多いのですが、とんでもない就労を強要している企業が日本にはたくさんあります。まず、働き方ですが、午前10時から午後24時まで働かせ、休日まで出社させ、年俸制だから残業手当も休日出勤手当てもない企業がたくさんあります。時間計算すれば、1日14時間も働き、土曜日などの休日出勤すれば、週に80時間以上働くことになります。1ヶ月で350時間以上も働くわけですから、個人の家庭生活などありようがありません。通常の8時間労働であれば、1ヶ月170時間ですから350時間は2倍以上です。企業は年俸制を理由に、社員にこれまでの2倍の時間働かせて、給与は逆にカットする方法が可能になりました。1ヶ月に350時間も働いて、給与が30万円であれば時給換算すると、時給857円です。時給で考えれば、フリーターの時給の方が高くなります。

こうやって企業利益が最高と言われても、働く社員はほんとうに幸せなのかと疑ってしまいます。個人生活や家族との生活を犠牲にして、リストラされるよりはまだいいとして、働かなければならない社員の皆さんの苦労が聞こえてきます。 企業の労働条件に不満があれば、いつでも辞めて転職すればいいと言われる時代になりました。

しかし、転職市場は転職者を紹介手数料稼ぎの商品として人間を扱う場合があります。売上のために、転職者の人生を安易に扱う場合があるのです。場合によっては、能力など関係ない紹介をする転職斡旋企業もあります。例えば、「売上が欲しい企業があるので、これまでの人脈で年間5千万円の受注を確約する取引先があれば、転職できます。」というような転職コンサルタントがたくさんいます。個人の能力や適性や転職先企業の内容ではなく、仕事ではなく売上だけを受注できれば良いという紹介の転職相談などありえないと考えますが、現実は違います。

また、日本の転職市場の考え方は、転職者は有能であるから転職回数が多く、転職経験のない人間は評価しないと言う米国の考え方とは違います。転職者は能力がないか、企業になじめない人間として考えます。転職者は相変わらず社会適合能力がない人間として考えられます。能力があるから転職していくのか、能力がないから転職していくのかといったコンサルタントの判断はなく、前提はすべて社会適合能力ない人間として、転職相談はスタートします。私のように転職するたびに、職位と年収を上げる転職をしても、企業人事の判断では落伍者であり、企業に忠誠心のない者として認識されます。個人は企業に能力を提供し、仕事の実績によって報酬をもらうのであって、忠誠心の高さで報酬をもらうのでないことが認識されません。

過酷な労働条件で働き、企業収益を最高にするために、個人生活を犠牲にし、転職を考えれば、さらに過酷な現状が待っているでは、日本の労働者は幸せにはなれません。まず、給与収入から何かを買うという時間さえもないのですから、日本経済の縮小は当然のことです。

企業の年俸制を理由とした際限ない就労の状況を改善するには、政府が動くしかありません。通常社員の2倍の仕事を与え、個人生活を犠牲にした通常社員の2倍の時間を働かせて、人件費は1人分で仕事が遅れれば無能と言われリストラの対象とされ、それで過去最高収益といっている日本企業や経済アナリストの常識が疑われます。

年俸制は基本労働1日8時間として、超過する部分についてはやはり残業手当や休日出勤手当てを支払う制度にし、違反企業には多額の罰金と超過人件費の支払いを規定する必要があります。 社長や役員は、社員ではなく経営者ですから24時間企業経営を考えるのは当然のことです。しかし、一般管理職や社員に経営者と同じ際限ない就労など強要すべきではありません。社長や役員と同様な給与であれば社員も納得しますが、給与は格差があり、就労は経営者と同じでは社員の不満はいずれ爆発します。

現在、日本の国民の50%は貯蓄が800万円以下の世帯です。過酷な企業就労で、労災に認定されなければ、個人が病気になった場合の負担は相当なものになります。企業のために働き病気になれば、3ヶ月程度の入院でも数百万円の手術費と入院費がかかります。6ヶ月入院などすれば500万円や病気によっては800万円などの貯蓄はいっきになくなってしまいます。また、有名病院の集中治療は月額300万円以上にもなります。 意識不明の集中治療が長引けば、3ヶ月で1千万円の現金が必要になります。企業が病気になった社員を見捨ててしまえば、家族に待っているのは生活保護かホームレス生活です。個人生活や個人の健康を犠牲にしなければならない企業就労は、政府が罰則を持って企業に対処する必要があります。

私のことで恐縮ですが、今年9月に熊本に住む母親が病気になりました。熊本の大病院を5ヶ所回りましたが、原因がわかりませんでした。痛みと高熱に苦しむ患者を見ても、データに異常は見つかりませんと平然と言う医者には大きな怒りと憤りを感じました。そして、6回目の病院での精密検査でやっと肺炎だと判明しました。大病院の専門医は専門外の病気をまったく判断できず、専門医に出会うまでは効果的な治療もしてもらえない状況には驚きました。そして、肺炎治療が進んでも他の症状の原因は発見できず、1ヶ月以上も検査入院を繰り返して、今月6日に意識不明の重体となり、12日に亡くなりました。救急センターに運ばれ、異常はないと帰されてから4時間後には、再び重体で運ばれての結果でした。

昨年も、妹が病気にかかり、やはり大病院を6ヶ所まわって精密検査しても原因がわかりませんでした。7回目の病院でやっと冠動脈血栓であることが判明し、発見が遅ければ死亡していました。 病気が判明しても、それ以後に重要なことがあります。妹の場合、大手術でしたので、だれが手術するかが重要になります。費用をかけてでも、有名な専門医に手術をお願いすることが重要になります。以前に癌で母親が癌病棟で、母親ともう一人だけが、多額の謝礼を払い癌専任医学教授の手術を受けました。10年後生き残った人間は、専任医学教授の手術を受けた2人で、その時に同室であった他の患者10名は死亡していました。病気を発見するだけでも大変な時間と費用がかかり、入院後も莫大な費用がかる現在の日本医療の実態が実感として経験できました。

個人生活や家族生活を犠牲にして、自分の健康まで犠牲にする企業就労の現状を少しでも改善するために、政府に対する働きかけを強化していきたいと思います。 個人や家族の生活が、贅沢ではなくても幸せであることを最重要課題として、日本国民が大きな声を上げる時期が来ていると感じます。

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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