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臥龍通信

臥 龍 通 信 第61号 <2003.09.26発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 61号 ◆
    地域主義の新たな潮流

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 ◆ 臥 龍 通 信 第61号 ◆
   地域主義の新たな潮流

地域主義の新たな潮流

地方自治体の統合が進み、地方自治にも新たな展開が始まっています。3千を超える地方自治体を千にまで統合してしまう地方自治の動きは、税制の問題や地方自治の独立を進展させる一方で、地域復興に成功した自治体の努力を潰しかねない状況もでてきました。地方自治体が地域復興に努力し、市町村が地域の名称を有名にして地域復興を実現しても、地方自治体の統合により関係ない地区までが有名になった名称が使えるようになり、地域特産物が努力した自治体の独占ではなくなるというようなことも出てきました。市町村の地域の名称は品質と信頼に裏付けられた「ブランド」です。「ブランド」を確立した地域以外の努力しなかった地域までが「ブランド」を使える地方自治体の統合の状況が、全国の地方自治体の新たな問題となっています。

また、地域間ブランド問題が発生する中で中央政府に対する自治体統合による広範囲な地方政府の独立も加速しています。長野県の田中康夫知事も地方自治の新たな独立を目指していますが、中央優先主義から地域優先主義への動きは新たな時代を迎えそうです。地域がゆたかになるために地域のヒト・モノ・カネ・情報・技術を地域のために有効活用していこうという動きは、今後の地方自治の独立の大きな柱となっていくと考えます。

数年前に、日本のトップ企業の多くの企業内研修講演で、日本企業の長中期経営計画の中に地域主義のリスクを考えておくべきだと講演して、経営企画部のスタッフは驚愕の表情でメモを取っていましたが、経営者にはあまり響かなかったことを覚えています。地方自治の進展と独立が行き着く先はどういう時代なのかを想像する力が、今の日本企業の経営者には欠けています。

新たな地域主義の企業リスク

例えば、九州地域は沖縄も合わせて県民所得の合計は約36兆円です。県民貯蓄の合計も約81兆円あります。九州地域の住民が日々に消費する商品やサービスは、アジア諸国に比べてもけっして小さくありません。九州地域の住民が九州に工場がない製造業の商品は買わないと決め、九州に本社機構がない建設業や流通業のサービスも利用しないとするならば、現在の東京本社の日本企業はどのような状況になるでしょう。
九州の住人が、本州に本社がある企業の商品やサービスを利用しないとすれば、現在の日本企業は企業経営上大きな打撃を受けます。日常生活に必要な食品や購入店舗も本州企業の商品や本州企業のスーパーから買わず、地域スーパーから地域企業の商品を買うとすればどのような状況がうまれるでしょうか。
自動車も家電も住宅も九州に工場がなければ地域企業からの購入を優先的に選択するという流れは、地方自治と地域復興の究極の選択としてありえる選択です。 地域のお金が本州企業に流れ、本州企業からの雇用貢献もお金の還流もないならば、地域のお金は地域企業の利益になり、雇用も確保できるように地域企業優先の消費行動を地域住民が選択することは今後十分に考えられることなのです。

九州地域の住民が商品やサービスを地域企業の利益と雇用を優先して、大阪や名古屋や東京に本社のある本州企業からできる限り購入しないという時代が到来し、他の地域も地域企業優先主義をとれば、本州企業は最悪70%の売上減少という状況が考えられます。 地域のお金は地域の企業に落とし、できる限り地域の雇用を確保する地域主義は、21世紀の本州企業の多くに大打撃を与えるでしょう。

地域優先主義は地域の復興と雇用を生み出しますが、一方では本州企業の倒産とリストラと賃金カットとなって大都市を襲います。地方からお金を吸い上げてきた大都市の大企業が、地域主義の時代には大きな経営転換を要求されます。地域主義が進展すれば、日本企業は地域の雇用や利益に見合う地域貢献を要求されるでしょう。地域のお金は地域の幸福のために使い、大都市の大企業に利益を上げさせることなど、地域住民にとっては、何ら意味のないことになってしまうでしょう。

大阪や名古屋や東京のために地方があるという構図の崩壊が21世紀の地域主義です。 地域で製造された農産物や畜産物を中心にハムや醤油や味噌や牛乳を地域スーパーで購入し、地域で育てた職人が建てた住宅に住み、地域で製造された衣料や家電や自動車を利用する。すべての購入物は地域製造の商品を選択していく地域主義は、すでに動き始めたと思っています。

日本の大企業が地方に商品を売るだけで、地域雇用にも地域復興にも貢献しないのならば、地域の独立と幸せのための地域主義は止めようもない流れになると思います。 すでに、地域主義のリスクを長中期経営計画に想定する日本のトップ企業もありますが、また、目の前の大火事にならないと分からない大企業経営者や管理職も多いのです。大企業経営者や管理職の中には地域主義が本格化しても、その時期にはもう定年で企業にはいないから、10年先の問題など、どうでもいいという発言やもし将来的に地域主義が進展することがあれば、我々が責任を取らずにすむという発言が企業内研修講演の時にはあり、企業の責任回避の極致を見た気がしました。

地方自治の独立は、日本の大企業商品消費から地域企業商品消費へのシフトを意味し、地域企業復興が意味するものは、大都市の大企業のための雇用と投資から地方のための雇用と投資への大転換でもあります。

外資系企業がこれまで日本市場を攻略できなかった大きな理由に、日本製品を優先するという日本の地域主義がありました。日本製品に日本人がこだわらなくなったことが、外資系企業の日本市場攻略を可能にしました。地域主義の経済が進展すれば、外資系企業ばかりでなく、大都市の日本企業も容易に地方市場を攻略できなくなります。

地域の雇用を守り、地域復興に貢献し、地域に利益を再投資する地域企業の新たな台頭が地域の幸福を可能にし、地域の絶大な信頼と支援を勝ち取っていくでしょう。 市場は変わらないと考えるのは勝手ですが、これからの日本市場は地域主義の進展で大きく変化するはずです。こんなはずではなかったという企業経営者の嘆きが数年後に聞こえてきそうです。地方にモノやサービスを売っても、地方の雇用や投資に貢献してこなかった大都市大企業が驚愕する時代の到来はそう遠くないのかもしれません。

日本全国の市場を独占し、世界に誇る大企業が日本に存在することが、地方にいかなるメリットがあるのか。東京に本社を建て、全国の市場を独占・寡占してきた大企業経営の終焉の時代が来つつあります。日本の大企業の地域貢献が重要な経営課題となる時代は近いのです

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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