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臥 龍 通 信 第 42 号 <2003.03.10発行> http://www.Nakajima-MSI.com |
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| ◆ 臥 龍 通 信 第 42 号 ◆ 日本の知性創造サイクルの変革 |
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ひとくちに"ベンチャー企業"と言っても、日本と欧米・アジアなど諸海外のベンチャー企業とでは大きな違いがあります。日本では、ビジネスモデルなどの詳細な検討もしないで、安易にベンチャー企業が設立されることもしばしばあります。 日本のベンチャー企業には、@経営力、A資金力、B判断力などが無いにと言っても過言ではありません。韓国や中国やインドのベンチャー企業は、設立する段階で10〜20名の世界的にも卓越した人材が集結します。韓国でいえば、ソウル大学出身で米国大学院留学経験者の修士や博士が、国内財閥や米国企業のマネジメントを経験して、数十人結集して各経営分野の専門家集団としてベンチャー企業を立ち上げます。経営力がベンチャー企業でありながら、すでに大企業に匹敵する経営陣が集結します。また、資金も一族や学閥などの血縁・地縁のネットワークで膨大な資金が集まります。アジアでの考え方は、一族の繁栄のために、一族が経済的にも人材的にも、優秀な人材の起業を支援します。数千人から数万人の一族の相互扶助が数千年の歴史で確立された社会では、一族から多くの人材を教育し、現在では多くの企業家を輩出し、資金も一族が支援し、成功すれば利益は一族全体に還元されます。日本人の多くが明治時代までは姓をもっていなかった事実は、一部の武士や公家階級意外は一族の意識さえ持てなかったことを意味します。数千年をさかのぼるアジアの姓の一族意識は、日本における明治以後の姓の一族意識とは大きく違います。アジアと日本の血族意識の違いが、現在のベンチャー企業の経営力や資金力という起業にも大きく影響しています。 そして、一族の優秀な人材による経営力と膨大な資金力がベンチャー企業の事業判断力にも影響します。日本のベンチャー企業のように限られた人材や人脈、乏しい資金力では、まともな事業判断さえできません。限られた経営人材、資金、技術、ノウハウだけで起業するベンチャー企業は博打と一緒です。日本人は企業組織で人材と資金を考えてきましたが、アジアは永遠に続く血族と地縁と学閥の組織で人材と資金と技術を考えてきました。中国の経済発展を支えた直接投資の70%が、華僑6000万人による投資であり、海外留学の人材供給で可能になったことを考えると、アジアの一族という組織の力を痛感します。個人に分断され、来るべき時代の人材育成も資金支援も難しくなった日本で、世界的なベンチャー企業を生み出すための新たな組織やコミュニティが必要です。 韓国で考えるとソウル大学に入学する優秀な人材が出れば、ソウル大学からハーバード大学大学院留学資金まで5000万円を超える教育資金を一族が支援し、支援を受けた人材は一族の新たな人材の教育にまた資金支援をしていく。一族の多くの優秀な人材が新たな人材育成の資金供給を行う人材育成サイクルが韓国やアジアにはあります。そして、ベンチャー起業にも一族の資金支援があり、成功すれば新たな一族のベンチャー起業に資金提供していく。アジアの一族組織による教育・起業・再投資のサイクルが現在のアジアの大躍進を支えています。アジアの人々は教育こそが最大の投資であり、確実な利益を生むことを知っています。個人の限られた人材と資金で世界的な知性教育に苦戦する日本のベンチャー企業は、事業判断もできずに個人資金を浪費していきます。ベンチャー企業の設立メンバーの学歴、論文、特許、出版書、講演歴、事業実績など、各分野での卓越した専門家の紹介だけでも200ページを超えるような堂々たるベンチャー企業の事業計画書が、日本でも目にする日が来ることを心待ちにしています。 世界的な知性を得るための教育は、国内大学だけでなく海外大学院留学などの資金だけで2000〜5000万円ほどかかります。日本人個人で世界的な教育を受けるために大学と大学院に、修士で最低1000万円、海外留学して大学院まで行けば3000〜5000万円はかかり、現在の日本人には高度な教育を実現するには難しい現実があります。今や、企業には社員を海外大学院に社費で派遣する力も覚悟もないでしょう。日本人に能力があっても、個人と企業の経済力が世界的な知性の創造教育を制限しているのが現状です。2〜3ヶ国語を使いこなし、海外留学の経験を持つ膨大な数の論文・特許を創造する人材が、日本ではその投資金額に見合う給与体系になっていないのも問題です。教育投資に見合う評価と報酬がなければ、無理して海外の大学院留学などしません。 現在の日本人は、企業や研究機関に所属して、組織資金を使うことによって、かろうじて個人資金では不可能だった世界的な知性への道を見出しています。日本の卓越した世界的な知性教育は、組織に制限された資金で現在は成り立っています。自由な知性への飛躍は個人の資金では難しく、企業の資金で可能になっても企業組織の思惑に制限されるというのが現状ではないでしょうか。この日本の悲惨な知性創造のサイクルを変革する時代が来ています。日本企業が実績主義や実力主義で報酬を考えても、日本人個人と企業の人材育成の限界が企業経営だけでなく、日本社会全体の人間の知性としての世界競争力を奪っていきます。日本の21世紀の世界的な知性教育の膨大な資金は、いったい誰が負担していくのか。個人や企業や政府が日本全体の問題として、21世紀の知性教育と資金制度を真剣に考えなければならない時代が到来しています。卓越した才能を認められず制度の中で抹殺されていく多くの才能を見つけ出し、才能の開花を支援する制度と機関が必要です。オリンピックを目指し、卓越した才能に支援するのと同様に、世界を目指した卓越した知性の支援の必要性を強く感じます。知性の悪平等の教育とは決別すべき時代が来ています。 今年1月、日本貿易振興会の九州講演の際に私は、九州の地方自治体が金融機関に保証し、海外大学院の入学許可が出る人材には3000万円以上の留学資金を貸し付ける保証人になる制度を考えて欲しいとお話をしました。九州各県で毎年200名程度、九州7県では年間1400名ほどでいいから、卓越した人材の留学資金の援助制度を考えて欲しいと講演を通じて訴えました。海外で最先端の技術や知識を習得した卓越した人材達は、3000万円の投資など10年もあれば返済できます。あるいは、10年以上地方で働けば資金返還を免除してもいいくらいだと考えます。10年継続すれば1万4千名の人材が帰国し、日本で新たな事業を創造してくれます。九州地域だけで20年間で約3万人の世界的な人材が育成されるなら、九州地域の経済は大きく変貌すると訴えました。未来に対する最も確実な投資が、世界的な知性投資であることを九州の金融機関の方々にも訴えました。地方自治体は金融機関に留学資金の利子負担と保証を与え、留学資金を受け取った人材は10年以上の地方貢献をするか、元金を返済するかを選択できる制度でもなければ、日本の世界で戦える知性育成は不可能になります。こういった日本の知性教育の育成制度が、新たな知性に対する国民のインセンティブにもなり、多くの知性が世界を目指すことになるでしょう。モノを担保に投資するのではなく、世界的な競争力ある産業を創造し、新たな雇用を生み出す卓越した人間知性への投資の方が、リスクも少なく、最も確実であるということを、自治体も金融機関も理解するべきではないでしょうか。 例えば、九州がもしこのような制度を実施したとするならば、21世紀の日本の知性は九州にありと宣言できる体制が整うでしょう。沖縄を含む九州全域で、中国沿海部と台湾と韓国との黄海経済圏を網羅した高度な経営力の新たな人材が数万人準備できることになります。個人でも企業でも政府でも難しくなった日本の世界的知性への資金負担の限界が今存在しています。アジア型相互扶助の世界的知性教育システムに対抗するには、日本の世界的な知性教育の資金的限界を打破する日本の知性創造サイクルの変革が必要になっているのです。 |
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| 中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋 隆 | ||||||
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