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臥龍通信

臥 龍 通 信 第132号 <2006.03.08発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 132号 ◆
    未来を考える

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 ◆ 臥 龍 通 信 第132号 ◆
    未来を考える
未来を考える

日本人は、未来を考えたり、自分の人生設計について、どれだけ真剣に考えているのでしょうか。日々の生活に埋没してしまい、その日その日を生きているだけという日本人もたくさんいるに違いありません。今回は、日本と日本人の未来を考えます。

私はもう50歳になりますが、2100年の世界を見ることはもはやできません。どんなに頑張っても、私は2050年の世界を見ることができるか分かりません。しかし、私の子供は確実に2050年の世界を見ることができますし、孫は2100年の世界に確実に生きていることでしょう。2100年の世界は私には見ることも感じることもできない世界ですが、孫の世代には確実な現実として存在するでしょう。自分はすでに死んでいるかもしれない2050年や到底生きてはいない2100年の世界を気にすることは無意味だし、死んだ人間には関係ないこととは、私には思えません。2050年は子の世代の世界であり、2100年は孫の世代の世界で、子や孫の生きる世界はどんな世界であろうがもはや関係ないなどとは私には思えないのです。2050年や2070年が私には関係なくとも、私の子供の生きる現実としての世界のことであれば、私は気にせずにはいられません。

日本の政府統計では、2050年には日本の人口は約9200万人で、2100年で日本の人口は約4800万人になると発表しています。中国やインドの人口増加や朝鮮半島の統一による人口増加など考えると、日本の人口減少は子や孫の時代に大きな変化を及ぼすでしょう。人口は国力の絶対的な条件の一つですが、人口減少は確実に日本の国力を奪っていくでしょう。2100年の日本が現在の日本とどうのように違う日本になっているか想像できませんが、少なくとも現在の日本の豊かさや経済力は期待できません。

日本の人口が2100年には5000万人以下になるということは、朝鮮半島が平和統合されれば約7000万人で、2100年には1億数千万人の人口になっている可能性があります。朝鮮半島の人口が約1億2千万人と日本の人口が約4800万人であれば、現在の日本と韓国の関係と同じ状況です。日本と朝鮮半島の人口と市場が逆転する孫の時代を考えると、私はつい何かできないかと焦ってしまいます。

地球温暖化
日本という国家が単独でどんなに努力しても、変えられない現実があります。地球の温暖化は世界的な問題となっても、どう人類として対処していくかの具体的な方法論や行動がいまだに実施されないままです。地球環境シミュレーターによれば、2070年には北極の氷が消失します。北極は氷の世界ではなくなるのです。当然、日本の周りを流れる暖流や寒流という海流や気候にも大きな変化が起きます。シベリアの永久凍土の大地は豊かな農地へと変貌し、世界的な農業の大変化が生まれます。2100年には、本州のすべての地域でりんごが栽培できなくなり、青森はりんごの産地ではなくみかんの産地となっています。日本のりんごは北海道だけで栽培できる環境に日本の環境は変わると考えられます。日本の人口も2007年に1億2700万人であったのが、2050年には9200万人まで減少して、すでに2050年で現在の人口より約3500万人の人口が減少し、2100年までにはさらに4000万人の人口減少が起きるかもしれません。日本の人口は100年たらずで、孫の時代には5000万人レベルの人口になっているかもしれません。九州地域や四国や本州の太平洋岸の地域は、日本経済の中心地域ですが、2100年には熱帯地域となり、マラリヤや治療法が開発されていないデング出血熱の発生地域となります。孫の世代はこれまでにない人口減少と未知の伝染病を経験することになり、日本の社会は大きく変貌することになります。

地球環境シミュレーターによれば、2100年にはアマゾンの60%以上の地域が砂漠化します。米国でも砂漠化が始まり、世界全体の砂漠化が進みます。砂漠化した農地からの食糧生産の減少で食料大国であった米国でも1000万人以上の食料難民が発生します。ベトナムでは3300万人、インドネシアでも2700万人の食料難民が発生し、民族の大移動が起こります。世界では新たに2億6000万人以上の食料難民が、食料を求めて移動し始めます。世界中のどの国家の軍隊の力をもってしても、押しとどめられない民族の大移動と混乱が起きます。アフリカや中央アジアや東南アジアや中国でも砂漠化が進み、米国や南アメリカでも砂漠化は加速度的に進みます。日本の食糧輸入国の多くが砂漠化の危機を迎えて、日本に対する食料輸出など考える余裕さえなくなります。

日本の食糧輸入
対日輸出のために利用されている海外の農地面積は小麦ととうもろこしと大豆の主要3品だけで、約6,730,000haで四国の3.6倍の広さになります。日本全国の農地が4,794,000haですから、日本の農地をすべて小麦ととうもろこしと大豆の生産に使っても、日本が必要とする生産量は国内生産では確保できません。2100年に日本の人口が減少していることは、世界的な食糧不足にはプラスにはたらくかもしれません。食糧輸入量の減少や食料価格の上昇に対して、1億2千万人の人口が5千万人の人口になって、人口が少ないことが日本人の生存の可能性を高めるかもしれないのです。

<日本の輸入食料の海外農地>
小麦      1,969,868ha
とうもろこし  2,527,000ha
大豆      2,233,983ha
---------------------------
四国     約1,879,600ha


歴史的な一族繁栄
日本は封建制度から、中央集権制度の国家になってからまだ135年ほどですが、アジアでは中央集権の王制や帝政の国家が2000年以上も前から存在しています。アジアの歴史を考えると、外交や軍事や税制や文字や貨幣や教育の統一を成し遂げ、中央集権の国家として、全国に科挙という全国試験を実施して、身分の世襲制に対して能力による人材の登用の制度も確立して、民族や宗教や身分に関係ない能力主義を実現したのも中国が最初ではないでしょうか。一族の経済的成功による繁栄を最優先する中国の民族性は、そう簡単には変わらないと思っています。中国の歴史を見ていると、私は現在の共産中国も共産主義の衣を着た資本主義の民族に見えてきます。国内が平和であれば、商売に専念でき経済的に豊かになれるから、同じ税金を支払うなら平和を維持する強力な力のある支配者を望む中国人は、支配者がモンゴル人であろうと満州人であろうと英国人であろうとかまいませんでした。一族の繁栄のための平安を維持できる支配者こそが支配者の資格であって、その支配者が中国人でなくても容認できる現実主義の民族は歴史的に資本主義民族です。中国に対する日本の間違いは中国に平安ではなく、100万以上の軍隊で混乱を招いた中国人の平安を破壊する破壊者であったことです。

日本人のほとんどに苗字がなく、日本人が姓名を名乗るようになったのは135年前の明治になってからです。日本人の一族意識は姓名を名乗る歴史が一部の日本人から日本人全体になるまでに多くの時間が必要でしたが、中国や韓国は2000年の姓名による一族の歴史があります。当然、一族の認識や一族の繁栄という考え方も中国や韓国や日本では大きく違います。韓国の親戚の認識は30親等で、15代さかのぼった先祖の子孫はすべて親戚と考える韓国と親戚という認識が極めて狭い日本人とは一族の繁栄という考え方も違ってくるのです。

韓国人の姓は270ほどといわれており、金・朴・李・崔・鄭の五大姓だけで、韓国全体の人口のおよそ半分を占めます。同姓であるだけでは同族とは言えず、あくまでも祖先の出身地を示す本貫も同じでなければ同族とは見なされません。同姓であり本貫(出身地)が同じである者が父系血縁関係にある同族と考えられ、婚姻は民法上受理されなかった時代がありました。数百年前の同一祖先の子孫が結婚できないということは、日本人には到底理解できない慣習です。

本貫(出身地)が金海の金氏は389万人、本貫が慶州の金氏が150万人ほど存在し、膨大な数の会ったこともない一族が同じ一族としての意識を共有している韓国はまさに一族の歴史が違います。なぜ韓国人は自分の祖先をさかのぼることができるのか。韓国には族譜を刊行する宗親会があるからです。韓国で自己紹介する時には、韓国人の姓と本貫(出身地)を明らかにすることは常識であり、自分が誰の子孫で何代目にあたるのか、韓国人は当然のごとく知っています。韓国人の父系血縁一族という考え方と慣習は、韓国人の社会生活に大きな影響を及ぼしています。血縁や一族という言葉が、韓国人と日本人とでは如何に異なるのか、日本人には想像もできないことでしょう。

韓国人以上に一族の繁栄を考える中国人は、2000年以上も経済繁栄を追及する経済的な民族で、短期間で資本主義的成功を実現することも容易に考えられます。教育による選抜人材育成の歴史も1000年以上の歴史のある中国や韓国に比べて、135年前に全国選抜教育を始めた日本では歴史的な伝統と意識が違います。教育による人材育成の歴史は中国や韓国の歴史には日本は到底及びません。一族の繁栄のための経済的成功を実現する子孫に対する教育の意識も日本とアジアは大きく違います。一家族の繁栄ではなく、一族全体の資産管理の歴史を持つ中国や韓国は、一家族の成功ではなく一族全体の繁栄のための選択と集中の戦略を実行してきた歴史があります。中国人や韓国人にとっては数十人や数百人の一族が協力する数十億円の資産運用など、100年先を考えた子孫繁栄の戦略は珍しくないことなのです。一族で能力のあるものは能力を提供し、資産があるものは資産を提供し、何もないものは労働を提供して、一族の繁栄に必死になって働くというアジアの歴史は、家族単位で分断され一族の繁栄を100年単位で一族全体で考えられない多くの日本人とは大きく違うのです。日本の公家や武家にはアジア的な一族繁栄という考えがありましたが、名前のなかった多くの日本人には一族繁栄という明確な認識も戦略もありませんでした。

さて、問題です。中国や韓国は男性の陳さんと女性の李さんが結婚すると、男性の名前はもちろん陳さんですが、女性の名前はミス李からミセス李になるだけで、女性の名前は結婚しても変わることはありません。日本では男性の田中さんと女性の森さんが結婚すると、女性の森さんは日本の習慣では、田中さんの名前に変わります。結婚で変わる名前の習慣と結婚で変わらない名前の習慣では、一族と言う考え方にどんな違いが生まれるのでしょうか。一度皆さんも歴史や文化を調べて考えてみてください。

日本人は個人としての成功は考えますが、一族の成功という考え方を明確に持っているでしょうか。一族の優秀な人材に一族全体が自分の子供より優先して教育資金を出すという習慣があるでしょうか。一族に支援された人物が一族全体に貢献するという意識が日本人にあるでしょうか。数十人や数百人の単位で人材育成や投資を考える一族繁栄の考え方が日本人にあるでしょうか。一族の優秀な人材に対して海外留学やスポーツ選手の育成のために一族が団結して支援する考え方が日本人にはあるでしょうか。支配する政府に治安以上のものを求めない生き方は、一族のすべての人間を一族全体が責任を持って面倒を見る体制で、教育や雇用や生活や病気までも一族が責任を持つ体制です。一族に奉仕することは一族に守られる生き方であり、一族を離れることは誰も助けてくれない生き方を選択するという自己責任の厳しい生き方になります。

日本人は子や孫の未来を真剣に考えているのでしょうか。少子化で兄弟もなく、孤独に生きていく世代に、一族の絆も希薄であれば、その人生とはどんな人生になるのでしょうか。

最近は、ガリレオ・ガリレイを超えられない若者によく会います。世界はすべて自分を中心に回っていると思っている若者にはほんとうに驚かされます。現実の社会は、国家や企業や様々な組織の周りを自分がまわっっているのですが、自分が世界の中心と誤解して自分中心の世界観にどっぷりつかっています。教えられることを当然のことと考え、自分では調べも考えもせず、教えられていないことを言い訳にする身勝手さを恥ずかしいこととも感じない若者には失望の極致です。私は見ず知らずの他人に教えなければならない義務も責任もありません。教えられて当然と思う感謝なき若者には言う言葉もありません。自分以外の他人ばかりか、家族のために生きることさえ納得できない個人主義の若者には、一族の繁栄という考え方は到底理解できません。他者をどれだけ幸福にしてきたかが、人間の社会的評価であるとすれば、自分のためだけに生き、だれからも評価されず、だれからも感謝されず、だれからも注目されることもない孤独な人生を現在の若者は選んでいるように見えます。日本社会で生きていくルールさえ満足に教えられないまま社会人となる若者にはもはや深く同情するしかありません。

参考文献:
臥龍通信第66号「年金問題の本質」
臥龍通信第117号「独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)」
臥龍通信第121号「郵政民営化法案の欠陥」
公開コンテンツ「日本の官僚主義」
公開コンテンツ「厳しい国家財政」
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥龍通信第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

発行日 発行No タイトル
2005.12.20 第129号  民主主義と資本主義A
2005.12.20 第128号  民主主義と資本主義@
2005.12.08 第127号  日本人の伝統とプライド
2005.12.08 第126号  耐震偽装住宅問題
2005.10.06 第125号  市場原理主義と小さな政府
2005.09.21 第124号  小泉政権と国家財政
2005.09.14 第123号  郵政選挙(終わりの始まり)
2005.09.07 第122号  日本社会の貧困
2005.09.01 第121号  郵政民営化法案の欠陥
2005.08.31 第120号  日本政治の構造改革
2005.08.22 第119号  戦後60年の政治
2005.08.15 第118号  戦後60年の総決算
2005.08.10 第117号  独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)
2005.07.28 第116号  世界ブランドランキング2005
2005.07.08 第115号  日本の少子化と女性問題
2005.07.08 第114号  米国政府要望書
2005.07.01 第113号  日本の右傾化
2005.06.17 第112号  日本の戦後と靖国問題A
2005.06.17 第111号  日本の戦後と靖国問題@
2005.06.02 第110号  狂気の日本
2005.06.02 第109号  東シナ海ガス田問題
2005.05.23 第108号  中国から見た日本
2005.05.13 第107号  日本の国際競争力(IMD2005)
2005.04.18 第106号  最近の中国対立
2005.04.18 第105号  明治の成功と失敗
2005.04.18 第104号  報道の意図と文脈
2005.03.22 第103号  ライブドア騒動の深層
2005.03.15 第102号  日本の時代遅れの国際感覚
2005.03.05 第101号  日本のブランド戦略とデザイン戦略
2005.03.05 第100号  中国の知的財産権問題と日本の歴史問題
2005.02.22 2月号外  頑張れホリエモン
2005.02.20 第99号  21世紀の知的財産権戦略
2005.02.20 第98号  日本の対中貿易
2005.02.10 第97号  不動産ファンド
2005.02.10 第96号  中国のエネルギー戦略
2005.01.20 第95号  クルド人を救え
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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