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臥龍通信

臥 龍 通 信 第123号 <2005.09.14発行>
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 ◆ INDEX ◆

  ◆ 臥 龍 通 信 第 123号 ◆
    郵政選挙(終わりの始まり)

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 ◆ 臥 龍 通 信 第123号 ◆
    郵政選挙(終わりの始まり)
郵政選挙(終わりの始まり)

今回の郵政選挙で、自公政権は大勝利して、衆議院の3分の2以上の議席を獲得しました。
自民党は212議席から296議席に増加して、公明党の31議席をあわせて与党連立政権は327議席になりました。民主党は177議席から113議席と惨敗し、野党はすべてあわせても480議席の衆議院で153議席となってしまいました。小泉自民党のまさに圧勝でした。都市の20代や30代の無党派が自民党に投票し、都市でも地方でも自民党は圧勝しました。国家中央の国家財源を握っている自民党に、地方は相変わらず中央からの財源配分を期待した地方の自民党頼りの選挙で、無所属となった元自民党議員より自民党公認の落下傘候補を支持する選挙区も多く出ました。地方では中央政府の財源を期待し、都市では地方を切り捨てる改革路線を支持して、都市と地方はまったく逆の思惑で自民党の圧勝を支えました。マスコミ各社は相変わらず「新しい選挙の自民党の宣伝に躍起です。」が、地盤(組織)、看板(知名度)、カバン(資金)が必要な選挙はまったく変わっておらず、何が「新しい選挙の自民党」なのか、マスコミ各社の「自民党のための国民洗脳」の報道には驚きさえ覚えます。今回の選挙で、政党交付金を握っている自民党中央執行部は、候補者の選挙資金(カバン)と候補者の中央とのパイプが誰であるかという証明のために首相を応援に出して組織(地盤)への圧力を強め、派手なマスコミ報道によって看板(知名度)までコントロールして、落下傘候補の多くの当選を可能にしました。「地盤、看板、カバンの選挙から脱却した新しい自民党」という宣伝をマスコミ各社は盛んに報道しますが、正確には自民党中央執行部の「地盤、看板、カバンの掌握による中央支配体制の選挙強化」の選挙で、古い選挙体制となんら変わることはありません。中央執行部が決定すれば、国民のために働く覚悟がない「都議会選挙で数千票の得票で落選した候補者」でも、「選挙活動を一回もしなかったスーパーの経営者」でも、「政治を考えたことがない派遣社員」でも、「街宣車の名義だけ貸した選挙事務局長」でも、中央執行部の言うことに従いさえすれば、これまで国会で政治信念を持って国会議員として活躍してきた議員より優先して国会議員になれる体制になったのです。国民のために政治家として奉仕する専門知識や覚悟や信念が重要ではなく、党執行部の言いなりになるかならないかが、日本の国会議員になる重要な条件になったのです。

今回の選挙は、問題の多い選挙でしたが、最も問題だったのがマスコミ各社の報道であったと思います。国民はマスコミ報道や新聞などで政党や政策を評価するのですが、国民に対するマスコミ各社は選挙の争点を明確にして、マスコミ各社の独自の判断も報道するべきですが、まさにワイドショウ選挙になってしまい、マスコミ各社の独自の評価報道など皆無でした。選挙をマスコミ各社が視聴率獲得の道具にしてしまったことが、ワイドショウの小泉劇場選挙を可能にしてしまいました。日本の知性でもあるマスコミ報道各社の国民に対する明確な意見の表明は義務でもありますが、実際は「小泉劇場」の面白さだけを追いかける結果になりました。小泉首相は今回で自民党の政党助成金を握り、国会議員の公認権を握り、自民党の権力と資金を掌握し、国家財政の分配権まで確保し、国会議員と地方に対する絶対権を手にするに至りました。これまでの政権で中央と地方に対して首相がこれだけの強大な権力を行使したこともありませんでした。まさに、日本は新しい時代を迎えつつあります。

国家公務員と言っても、特別職やキャリアやノンキャリアの公務員では立場も待遇も違いますが、国民が問題にするのは国家公務員のキャリア組みの官僚エリートことだと思いますが、官僚エリートは小泉改革に賛成です。官僚エリートの立場は小泉改革ではまったく変わりません。国家組織が民営化されても、特殊法人や独立行政法人や民営化企業に天下って、官僚以上の給与と待遇が確保されていますから、官僚エリートは小泉応援団です。小泉改革の公務員を減らすというのはノンキャリアや一般職員を減らすことで、官僚エリートの特権は国家公務員より民営化のほうが特権は強化され、現在の政権は官僚エリートの特権改革する気持ちなどまったくありません。財界も1986年度の法人税率(43・3%)や法人事業税率(12%)の合計55.3%の税金が減税によって、現行の法人税率(30%)や法人事業税率(9・6%)の合計39.6%になり、日本企業の法人税減税で10兆円以上の利益を上げていることで、日本の財界も小泉首相の応援団です。金持ちの個人所得税の最高税率も1986年の70%が、1999年には37%になり金持ちの所得税は約半分のままで、金持ちも小泉政権の応援団です。国家官僚と日本財界と金持ちを味方につけた絶対政権は、庶民の支持ももらい郵政民営化の選挙で大勝しましたが、自民党のマニフェストには、政権公約として、「(庶民に対する)税制の抜本的な見直し」や「防衛庁の防衛省への格上げ」や「憲法改正」などが約束されています。官僚エリートと財界や金持ちを味方に、「国家財政の赤字に対する国民増税」と「国家防衛の強化のための防衛省の創設、海外派兵と交戦権を認める憲法改正」など、多くのことが「国民との約束」として明記され、国民はすべて賛成を表明してしまいました。自民党を支持した若者にはこれから様々な給与控除が廃止されて、年金の強制徴収や消費税の増加も始まり、自らが苦しむ大増税となるでしょう。

新しい自民党などと言われていますが、多くの自民党議員はこれまで膨大な借金を作ってきた借金責任者でもあるはずですが、これまでの無能な政治に対する責任は問わずに、新しい自民党など言っては、借金を減らす増税をもうすぐ要求してきます。消費税の増税は今回の自民党に投票した20代や30代の世代を直撃するでしょう。また、年金の問題は2年以上も先送りされて、ある日突然に国税庁と同じように強制徴収となるでしょう。国民が文句を言っても、選んだのはあなたであって、公約に書いてあり国民との約束ですと過酷な政策が実施される可能性もあります。

今回の選挙ではっきりさせる争点がありました。国家は破綻の危機にある約774兆円の国家借金をどう解消するのか。何年で誰が負担して返していくのか。毎年の国家財政の赤字をなくすために、どれだけの税金を誰が負担するのか。年金を安定させるためにはどれだけの年金保険料をどれだけの期間、国民は支払うのか。これまでの国家経営の失敗による国家の借金の責任はだれにあるのか。そして誰がどのような責任を取るのか。今後覚悟しなければならない国家財政の赤字と国家借金の返済負担は国民の収入の50%なのか75%なのか。とにかく、20年先のまでの国家経営の予測も国民には提示して、今後の4年の具体的な政策を政治家は提示する責任がありましたが、国民が問うことも、政治家が語ることもありませんでした。

今後の数年間はまず給与控除の廃止で手一杯で大幅な増税はないでしょうが、2年後は、いよいよ医療や年金や介護や国家借金の増税が始まれば、我々は国外に逃れる方策を考えねばなりません。破綻する国家経営の責任を国家経営者が追及されることもなく、国民だけが国家経営失敗の責任を取ることなど考えられませんから、税金を逃れて国外に避難する方法も国民は考えておく必要がありかもしれません。金持ちほど国外に逃れることは楽にできますから、金持ちでない国民は金持ちが国外に逃げ始めれば、金持ちの分まで税金は増えることになりますが、愚かな決断をした大多数の庶民の責任を一緒に負うほど金持ちは愚かではありません。愚かな政権を選択した愚かな選択の責任も国民にはありますから、金持ちが海外に逃げて庶民が金持ちの税金の分まで過酷な税金に苦しむことになっても自業自得なのでしょう。

1996年には最低所得層の下位20%で、翌年には最低所得層の50%が最低所得層から抜け出すことができましたが、1997年に最低所得層の69%が最低所得層を抜け出せずに固定化して、2000年には最低所得層の75%が固定化する状況が生まれました。
農林水産業の労働者を除外した日本の正規労働者は、1995年に3762万人で、2004年には369万人減って、3393万人になりました。一方、非正規労働者は1995年に988万人で、2004年には559万人増加して1547万人になりました。日本企業は正規労働者を非正規労働者にすることによって、厚生年金に払うべき約5兆円の保険料を払わずに済み、非正規労働者1547万人は国民年金という低額保険者になりました。日本企業は国家年金制度で非正規労働者を増加させることで、約5兆円の厚生年金支払いを免除され、非正規労働者は国民年金の強制徴収という過酷な時代が来ます。

日本の財界の言うことは、「国家の税負担が大きいと企業の国際競争力が低下する。」というお話ですが、欧州企業は大変な企業負担があっても、国際競争力があります。年間に約10兆円の法人税負担と約5兆円の雇用保険料負担を免除されなければ、日本企業は国際競争力を失うというのであれば、もはや日本企業は国際社会で競争など不可能ということです。本来は年間約15兆円の税金や年金支払いを日本企業が免除され、経営者が無能だからという理由で日本企業の税金や年金の分までの財政赤字の負担を国民にだけ押し付けてくるのは、どうしても納得ができません。今後も日本企業の国際競争力の維持のために国民は日本企業の税金負担や年金負担を肩代わりして背負わなければならなくなります。国際市場で同じ競争条件では日本企業は国際競争できない企業経営者ばかりだから、日本企業の負担の年間約15兆円を国民に負担してもらおうという無能な経営者を保護するようでは、日本企業は国民に負担を回さなければ、永久に国際社会で生き抜いて行けない企業になってしまいます。国際市場原理の導入といいながら、政府と企業が協力して企業存続のための税負担や年金負担を国民に背負わせる企業保護政策を今回は国民全体が賛成してしまい、日本の国民はこれから大きな企業負担まで引き受けることになりました。

国と地方を合わせた長期債務残高は平成17年度末見通しで774兆円と先進国で最悪の水準で、悪化した財政を再建する道筋として、小泉政権は毎年の税収で歳出をまかなう「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」を、2010年代初頭(平成20年代半ば)までに黒字化する目標を掲げていますが、後5年は財政赤字はさらに蓄積していき、やっと毎年の財政赤字がなくなるころには、国家の借金は積もり積もって900兆円を超えるかもしれません。平成17年度の政府一般会計予算で15兆9478億円もの赤字ですから、政府の歳入と歳出のギャップを埋めるためには、歳出削減だけでは不可能で、国民増税するしか方法はありません。

日本の国民所得は、2004年で全体所得の80%を最高所得層の20%が握っています。金持ちの個人所得税の最高税率も1986年の70%が、1999年には37%になり、単純に考えると全国民収入の80%の70%が税金ですから、全国民収入の56%が金持ちの税金でしたが、2004年には80%の収入の37%になりましたから、金持ちの税金は全国民収入の29.6%になりました。全国民収入の26.4%の税金が免除されたままで、これは国民の下位80%の全収入の20%を超える額の税金が免除されたことになります。金持ちの所得税を1986年の70%に戻すだけで、国民の80%の所得税を無税にしても余りある税金収入があるのですが、金持ちの減税措置は現在も続いており、金持ちの税金収入の減税分は、下位の国民80%が税金負担として引き受けることになります。日本の金持ちや企業の減税などの負担をこれから国民が負担していくことになりますが、国民は金持ち優遇と企業優遇の決断に全面的に賛成を表明してしまいました。

日本の「市場原理主義」とは、「金持ちと企業の対する市場原理を無視した保護政策」で、「強いものはより強く、弱いものには過酷な保護政策」です。「規制緩和」も、「金持ちや企業の負担の規制緩和」で「官から民へ」の「民間企業の社員の衣を着た官僚の際限のない給与や退職金や天下りの官僚民間企業の創設」です。民間企業になった官僚民間企業は、国家公務員でもない民間企業ですから、どんな特権が新たに作られても国民は株主でない限りは一切の文句を言えなくなります。

国民は国家経営の失敗による国家借金の約774兆円を支払うことを約束し、日本企業の年間約15兆円の負担を負担し、日本の金持ちの減税分の税金まで負担する決断をしました。破綻する医療や介護や教育や年金の更なる負担も受け入れました。国民の総意による過酷な税負担の始まりです。私は国民の総意は尊重しますが、付き合うつもりはありません。違法ではなく合法とされている海外への避難は今後の2年間の政治を見て考えるつもりです。国民の80%が税負担で疲弊すれば、いずれは日本企業や金持ちにも減税廃止と増税が待っています。日本国内に住む限り国家経営の失敗の責任はいずれ回ってきます。政治も過酷ですが、国民生活も過酷です。違法でない限り何でもありの日本ですから、日本国民がどんなに税金で苦しむことになっても、国家や日本社会に頼らない優雅な海外生活ができる準備がそろそろ必要かもしれません。語学力もなく資金もない国民は低所得の中で過酷な消費税に苦しむことでしょうが、それは自らの選択ですから受け入れるしかないのかもしれません。戦後60年で思い出すのは、国土は焼け野原となり、国民を騙し続けてきた報道機関の嘘の報道を信じきって、国債は紙くずになり過酷な税負担に耐えてきた国民が二度と同じ間違いを犯さないと覚悟したことです。歴史は繰り返すのでしょうか。21世紀の国際市場における経済戦争で日本企業は勝ち続けているのでしょうか。国民は経済戦争の勝利のために国民の個人資産をどれだけ犠牲にすればいいのでしょうか。世界的な経済戦争における日本の国家戦略はほんとうに成功しているのでしょうか。いざとなれば国家存続のためには、何でもありの国家権力は国民を無限に犠牲にしていきます。政治とは過酷なものなのです。

企業からの政党献金を止める約束で国民の税金から支給される政党交付金は、2005年で政党交付金を試算すると、大勝した自民党は157億9400万円となり、惨敗した民主党は117億7300万円という国民の税金が政党に交付されます。野党が止めようと提案する企業献金と政党交付金の二重取りや国会議員の特権的な議員年金などの問題を改革もせず無視して、自分たちの特権だけは改革否定しておいて、自公民政権のどこが構造改革政権なのでしょうか。

今回の国民の選択は、21世紀の重要な国民社会と政治倫理の在り方を判断するものでした。日本社会は「与える政治」から「奪う政治」への転換を支持しました。これまで日本社会で認められていた権利や利益を奪うことによって、政治に従わせる強力な政権を支持したのです。日本社会の弱者である障害者に新たに保険負担を要求することは、これまでの特権を奪うことですが、政府は容赦なく弱者であろうが何であろうが、奪うと決めたらこれまでの利益など、既得権益は廃止すると奪っていきます。親の資産のない障害者は働くこともできない中で、保険料費用の10%負担を要求されれば、死ぬしかありません。当然、国民の既得権益である所得控除は廃止され、税額は大幅に増加するでしょう。つまり、所得控除の廃止は増税ではないという詭弁で、国民の既得権益の所得控除はすべて廃止されるでしょう。嘘や詭弁がまかり通り、敵対者からはすべてを奪うことで権力を強化する政権は、まさに時代遅れの独裁恐怖政治そのものです。金持ちや企業に対して税率を戻して増税するぞといっては支持を強要し、官僚には省庁を廃止するぞといっては協力させ、国会議員には公認を与えず、刺客を送るぞと、今回の政権に対抗できる勢力は、もはや日本には存在しません。サラリーマンの所得控除や障害者の保険料負担免除など、利益や権益を与えることは必ずしも悪いことではなく、特別な利益や権益が必要な場合もあるのです。
「利益や権益を与える政治」から、「利益や権益を奪う政治」への転換は、日本全国にばら撒く利益や権益がなくなってきた中央政府の新たな政治転換です。「利益権益を与えるから、中央政府を支持してくれ。」から「中央政府を支持しなければ、これまでの利益権益をすべて奪う。」という大転換なのです。そして、自分たちの政党交付金や議員年金の特権は温存したまま、国民の既得権益を奪い取り、圧倒的な議会勢力で、サラリーマン所得控除の全面廃止、年金保険料の増加と強制徴収、健康保険料の増加、消費税の増加など、個人課税と負担は際限なく増大していきます。私ははっきり予言できます。自公政権は構造改革の前に必ず国民増税を打ち出してきます。まず、国民から構造改革で増税され、官僚・企業・金持ちはずっと後になるのです。

日本のマスコミ報道の「危機感」のなさにも驚きます。なぜ国家経営の失敗の責任を問わないのか。なぜ国家借金の約774兆円をどれだけの期間で誰が負担しどのように返済するのかを問わないのか。毎年の財政赤字の負担を誰がどのように負担するのか。今後10年や20年で総額どれだけの負担を誰が負担しなければならないのか。大変な財政赤字と国家経営の失敗による借金が他人事のように大変だと叫ぶのは誰にでもできることで、報道機関は明確な答えを要求し国民に報道する義務があるはずです。国民は報道機関に評論など期待してはいません。明確な事実と方法論を明らかにしてくれることを期待しています。「既得権益の打破」と言った政権でしたが、「既得権益の打破」とは国民が持っていた「金持ちと企業に対する国民の公平な税負担」の既得権益の打破だったことが国民には理解できているのでしょうか。地方が持つ既得権益、都市が持つ既得権益、国民が持つ既得権益などを打破して生み出す国益とは一体何なのか。官僚を生み出すための教育制度、官僚と政治家を上位と考える国民の価値観、国家とは官僚であり、企業であり、金持ちの複合体です。国益とは官僚利益であり、企業利益であり、金持ちの利益であり、特権階級20%の「国家利益」であって国民80%の「国民利益」ではないとそろそろ気がつくべきです。「国益」は「民益」とは限らないのです。

日本の改革政党として「日本の構造改革」、「官から民へ」、「大きな政府から小さな政府」のキャッチフレーズと政策は、もともと民主党の主張でした。自民党と公明党は、「財政出動の経済政策や高福祉国家の大きな政府」の政策を現実に行ってきて、国民に対して膨大な774兆円の借金を積み上げてきました。「大きな政府と莫大な借金国家」を作ってきた保守政党の自民党と公明党が、いつから「改革与党」になったのでしょうか。民主党の主張をすべて奪った改革政党の衣を着た保守政党をどうすれば簡単に信用できるのでしょうか。現在の日本の混乱と破綻を生み出した張本人の与党が、これまでの政治責任を反省するのではなく、改革する与党として再登場して、改革を主張してもこれまでの責任を取るだけですから、改革はこれまでの責任者としては当然のことです。これまでの政治責任を「痛みをともなう改革」と言って、国家経営失敗のすべてを国民に責任を取らせて、大増税という負担を要求するのでは、政権与党はこれまでの国家経営失敗の政治責任を取ることになりません。最初からやる気のない改革政党の衣を着た政権保守党の「日本の構造改革」、「官から民へ」、「大きな政府から小さな政府」のキャッチフレーズにすっかり騙された国民の運命はこれからどう動いていくのでしょうか。

小泉政権の「聖域なき構造改革」の意味は、あらゆる意味での既得権益の廃止で、その既得権益の廃止順位は政権に委任されました。地方に分配されていた中央の財源の削減と廃止、都市労働者に約束されていた所得控除の全面廃止、所得がなくなった高齢者や障害者に対する保険料の負担増加、消費税の増額などがまず最初に始まり、公務員給与の削減や議員年金の廃止や企業献金の廃止や企業法人税の増額や金持ち所得税の増額などは、国民増税の後に必要であれば行われるでしょう。「聖域なき構造改革」とは官僚主導の「国民の既得権益の全面廃止」なのです。つまり「国民がこれまで持っていた権利を聖域としないで構造改革する」という意味だったのですが、国民は全面的に自分たちの聖域否定に賛成しました。金持ちも官僚も財界も既得権益については、構造改革を否定していますが、まず国民が自分たちの既得権益の放棄を宣言しましたから、すべての負担はまず国民が負担することになります。現在の財政改革の毎年の財政赤字負担の増税と国家借金の774兆円の負担に、医療改革の保険料増額に、高齢者や障害者の医療保険料の増額、年金保険料の増額と強制徴収、さらに教育改革のための国家教育費削減による個人教育費負担の増加、防衛庁の防衛省への拡大、憲法改正による交戦権の肯定、海外派兵の合法化と増税だけでなく、平和を宣言していた国家安全保障の変更まで、多くの国民の既得権益を国民は放棄しました。欧米と中東のキリスト教とユダヤ教とイスラム教の永遠に続く宗教戦争でもあるテロ戦争に米国と一緒になって参戦する日本は、自らが望んで十字軍以来の宗教戦争であるテロ戦争の脅威の中に飛び込んでいきます。中国もインドも参戦しない欧米の宗教戦争になぜ日本は参戦するのでしょうか。また、欧米先進国にはキリスト教の「弱者最優先」の倫理観がありますが、日本には勝者賞賛弱者切捨ての風潮が蔓延しています。新たな世界戦争参戦の脅威と国家経営の失敗という二重の苦しみに、国民がどこまで耐えられるのか、国民の覚悟をしっかり見て行きたいと思います。

ちなみに、今回の郵政選挙では、「郵政民営化に賛成の国民審判を受けた大勝利」と自公政権は言っていますが、小選挙区の自民党と公明党と郵政民営化賛成の無所属議員の賛成派得票数は3389万7275票で、郵政民営化反対の民主党、社民党、共産党、郵政民営化造反議員の反対派得票数は3419万4372票で、郵政民営化反対の決定をした約30万票が賛成派票を上回っていました。全体の国民審判は郵政民営化反対の勝利でしたが、小選挙区制の制度では反対派が大敗北することになりました。この小選挙区制度の欠陥の結果で、国民の郵政民営化反対の勝利した3419万4372票は死に票となりました。今回の選挙は20代の若者が多く投票しましたが、地理や歴史も学ばず、第二次世界大戦の同盟国と敵国の国名や世界地図での位置も満足に答えられない、また日本語さえ中学レベルの大学生が数十万人いる状態では、自民党が保守政党か革新政党かの区別もつきません。「日本の構造改革」、「官から民へ」、「大きな政府から小さな政府」のキャッチフレーズに騙されて、自民党を革新政党と誤解した多くの若者がいたはずです。今回の民主党の大敗北の最大の原因は、これまでの民主党の主張であった「日本の構造改革」、「官から民へ」、「大きな政府から小さな政府」のキャッチフレーズを自民党に奪われ、自公政権が革新党政権となり、民主党が保守政党と誤解されたことなのです。革新の衣を着た保守に革新の旗を奪われ、革新を保守と誤解させた自公政権の宣伝に今回の民主党は大敗北したのです。

参考文献:
臥龍通信第66号「年金問題の本質」
臥龍通信第117号「独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)」
臥龍通信第121号「郵政民営化法案の欠陥」
公開コンテンツ「日本の官僚主義」
公開コンテンツ「厳しい国家財政」
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥龍通信第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

発行日 発行No タイトル
2005.09.14 第122号  日本社会の貧困
2005.09.01 第121号  郵政民営化法案の欠陥
2005.08.31 第120号  日本政治の構造改革
2005.08.22 第119号  戦後60年の政治
2005.08.15 第118号  戦後60年の総決算
2005.08.10 第117号  独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)
2005.07.28 第116号  世界ブランドランキング2005
2005.07.08 第115号  日本の少子化と女性問題
2005.07.08 第114号  米国政府要望書
2005.07.01 第113号  日本の右傾化
2005.06.17 第112号  日本の戦後と靖国問題A
2005.06.17 第111号  日本の戦後と靖国問題@
2005.06.02 第110号  狂気の日本
2005.06.02 第109号  東シナ海ガス田問題
2005.05.23 第108号  中国から見た日本
2005.05.13 第107号  日本の国際競争力(IMD2005)
2005.04.18 第106号  最近の中国対立
2005.04.18 第105号  明治の成功と失敗
2005.04.18 第104号  報道の意図と文脈
2005.03.22 第103号  ライブドア騒動の深層
2005.03.15 第102号  日本の時代遅れの国際感覚
2005.03.05 第101号  日本のブランド戦略とデザイン戦略
2005.03.05 第100号  中国の知的財産権問題と日本の歴史問題
2005.02.22 2月号外  頑張れホリエモン
2005.02.20 第99号  21世紀の知的財産権戦略
2005.02.20 第98号  日本の対中貿易
2005.02.10 第97号  不動産ファンド
2005.02.10 第96号  中国のエネルギー戦略
2005.01.20 第95号  クルド人を救え
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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