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臥龍通信

臥 龍 通 信 第121号 <2005.09.01発行>
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 ◆ INDEX ◆

  ◆ 臥 龍 通 信 第 121号 ◆
    郵政民営化法案の欠陥

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 ◆ 臥 龍 通 信 第121号 ◆
    郵政民営化法案の欠陥
郵政民営化法案の欠陥

「郵政民営化法案」の欠陥は、現場無視の法案になっていることがまず問題です。
つまり「民営化する側の議論」はよく報道されますが、「民営化される側の議論」が一切ありません。「郵政民営化の議論」は巧妙に国民に隠された議論になっています。

国民は郵政事業をよく知りませんが、
郵政事業は平成15年で、
普通郵便局1310ヵ所
簡易郵便局4470ヵ所
特定郵便局1万8935ヵ所
合計2万4715ヵ所の郵便局で郵政事業は成り立っています。
普通郵便局と簡易郵便局の5780ヵ所は郵便局の土地や建物などを国家資産や地方自治体委託で運営されていますが、全国1万8935ヵ所の特定郵便局は特定郵便局長の個人資産で郵便局の土地と建物を用意した「郵便局の土地を個人資産で手に入れ、郵便局の建物を個人資産で建てた特殊な公務員」です。特定郵便局は国家と国民のために個人資産で郵便局を建てて、郵政事業に協力している言わば、郵政フランチャイズ・チェーンで、郵政事業はすべて国家資産によって運営される国家事業ではなく、国家の保証で、個人の資産を使って土地と建物を提供する特定郵便局によって成立しています。特定郵便局長の個人資産で建てられた郵便局1万8935ヵ所の「民営化」と「民間企業化」がまず可能であるのかがマスコミ報道では一切出てきません。全国1万8935ヵ所の社員の個人資産で会社の土地と建物を提供する民間企業が存在できるのか、そのことが一切議論されていないのです。

平成十六年十月十二日提出(国会質問)
質問第一四号
郵政民営化の基本方針に関する質問主意書

(質問)
特定郵便局の建物等の賃貸人が当該特定郵便局の長であるものの比率は、平成十五年三月末において三十三・一パーセントあり、平成十五年三月に支払われた賃貸借料の月額の平均は約三十三万四千円、総額は約十九億三千百四十六万円とされている。現在において、特定郵便局の建物等の賃貸人が当該特定郵便局の長であるものの比率、賃貸借料の月額の平均及び総額はどのようになっているか明確に把握した上で、二〇〇七年四月の民営化までの期間に、これらを引き下げる考えはあるか答弁されたい。

(政府答弁)
日本郵政公社(以下「公社」という。)においては、特定郵便局の建物又は土地(以下「建物等」という。)の借入れに当たって賃貸人が特定郵便局長であるか否かは一切考慮しておらず、また、その局舎の用に供する建物等を借り入れている特定郵便局(以下「借入特定郵便局」という。)の賃貸借料は、賃貸人がだれであるかにかかわらず、不動産鑑定士から適切なものという意見を受けている算出基準に基づいて算出しているところであり、平成十八年度に向けてこの算出基準の見直しの検討はしているが、借入特定郵便局のうち建物等の賃貸人が当該借入特定郵便局の長であるものの比率及び借入特定郵便局の建物等の賃貸人である当該借入特定郵便局の長に対して支払われる賃貸借料の引下げを目的とした取組の実施は予定していない。

特定郵便局の土地と建物の所有者は「特定郵便局長」本人が33.1%と言っていますが、正確な調査をしないと分からず、家族名義となっている分や家族が設立した法人名義がどれだけあるのかなど、政府は郵便局の賃貸料を払っているのだから借りた先の所有者が誰であろうと問題にしていないと答えています。郵便局の土地と建物の所有者である特定郵便局長をリストラして、特定郵便局だけが存続できるのでしょうか。郵便局のサービスの原点は5年でも10年でも20年でも、同じ場所に郵便局があり地域を知り尽くした郵便局長が数十年以上も地域住民と付き合ってきた地域サービスがあることではなかったでしょうか。民間の単なる賃貸オフィスとは違って、数十年間の郵便事業を継続できる郵便事業専用の郵便局が地域に維持されたことが重要なことだったと思います。単なる賃貸オフィスを郵便局が使い、賃貸物件の建替えや売却による所有者の都合による移転することも多い郵便局ではこれまでの郵便事業に対する国民の信頼はなかったでしょう。個人資産で郵便事業専用の建物を数十年間も維持することは、単なる民間賃貸オフィス業者では不可能なことです。郵便事業の特殊性を考えない「郵便局の建物を一般の賃貸物件と同じ」という政府の考え方を提示された明治以来の郵政事業のために、初期は個人の資産で郵便局の土地と建物を国家に無償提供してきた「特定郵便局の歴史」を否定されてしまった「特定郵便局」は民営化企業になっても、継続できるのでしょうか。

「特定郵便局問題」
郵政事業が公務員でなければならない理由は、国家に資金がなく、「特定郵便局」約1万9000の個人の土地と建物を郵政事業に提供してもらうために、「公務員」という「特典」を与えたのは国家としての「特定郵便局」の個人資産提供に対する約束でした。親の土地に親の資産で「特定郵便局」を建てるのだから、郵便事業を行ってくれれば子供が事業継承する権利も政府は認めました。今回、政府は一般公務員と同じように「特定郵便局」を民営化して、「政府の約束」をすべて否定して、民間企業の社員にしようとしています。社員の土地に社員の資産で郵便局を建て、それで成り立つ郵政民営化企業などほんとうに民間企業なのでしょうか。「郵政民営化」の欠陥は、これまで「特定郵便局」の土地建物の提供に対する「公務員」や「世襲化」の約束を否定して、土地建物の提供の義務だけが残っている点です。「公務員」や「世襲制」の約束を政府が否定するならば、「特定郵便局」約1万9000の土地建物提供という約束もなくなるはずですが、民営化されて廃止のリスクもある土地建物の提供だけが義務化されています。「公務員の地位」や「特典」がなくなるのだから、「特定郵便局」の継続は止めて他業種に商売換えするか考える必要があります。すべての特典がなくなった「特定郵便局」約1万9000が今後の民営化企業に土地や建物を提供しなければならない理由もメリットもありません。

小泉首相の議論がおかしいのですが、「公務員の地位」が保証されるから郵便局の7割の約1万9000の「特定郵便局」が成立しているわけで、「公務員の地位」がなくなれば、土地と建物を提供する「特定郵便局」は存在するメリットがなくなります。マンション経営やアパート経営やコンビニ経営が「特定郵便局」よりも有利と考えれば、約1万9000の「特定郵便局」は政府がどう守ろうとしても消滅します。

政府の約束を否定する郵政民営化を政府が進めるならば、土地建物を提供している「特定郵便局」の約1万9000の郵政事業の撤退の自由を保証しなければなりません。また、郵政事業を継続する場合も、「特定郵便局」の土地と建物は郵政公社が買い上げなければなりません。社員に土地と建物を用意させる民間企業などないのですから、何兆円かかっても税金で買い取る必要があります。

「公務員」であるから成り立っていた郵政事業は、「公務員」を否定することで、「特定郵便局」の自由廃業が可能になるのだから、2年で「特定郵便局」は国民のためではなく、自分たちの利益のために「特定郵便局」の存続を政府に関係なく考えるでしょう。「公務員」でなくなる「郵政事業」を継続するかどうかは「特定郵便局」の自由ですから、国民のために犠牲になる選択など「特定郵便局」はするはずがありません。土地と建物を個人資産で提供してきた特殊な公務員であった「特定郵便局」は「官から民へ」という簡単な公務員ではないのです。「公務員の地位」を条件に全国約1万9000の個人の土地と建物で成り立っている「特定郵便局」のネットワークを買い取ることもなく民間企業にしようとすることが愚かです。

今回の郵政民営化は、「特定郵便局」から「公務員の地位」と「公務員以上の特典」を取り上げながら、一方では「特定郵便局」の土地や建物の提供は社員の義務として考えて、買い上げる考えさえありません。社員に土地と建物を提供させて成り立つ民間企業など聞いたことがありません。政府が約束を守らず、義務だけは押し付けてくるのでは「特定郵便局」は反対します。

郵政公社の資金も郵政公社が勝手に使っているのではなく、これまでの政権政党が無駄遣いしてきました。郵政公社の資金の使い方を決定できるのは政権政府に決定権があり、郵政公社に資金があることが問題ではありません。郵貯資金を吸い上げて無駄遣いしてきたのは政府機関であり、資金をばら撒いてきたのは財務省であれば、まず財務省と政府特殊法人の責任追及が先で、なぜ郵政公社が無駄遣いの責任者みたいに言われなければならないのか、私には理解できません。郵政公社の資金の問題は決定権がある政権政府の問題で、政権政府が無駄遣いを放置してきた財務省と特殊法人の問題で、それが郵政公社の責任問題として民営化など考えられません。

郵政民営化をするのであれば、これまでの「特定郵便局」に対する約束をどう解決するのか。そして、これまでの条件がなくなる「特定郵便局」の継続廃止の選択を十分に協議するべきですが、現在の政権は「特定郵便局」と十分に話し合う気持ちはないようです。

「公務員の地位」と「世襲制」が否定される郵政民営化は、20年や30年の個人ローンで郵便局を建てた「特定郵便局」にとっても大きなリスク問題です。継続するにしても民間企業としてリスクがあるわけで、廃止になればローンリスクは個人にかかってきます。郵政事業のために土地と建物の資産リスクを負担する「特定郵便局」はとても「郵政民営化企業の社員」にはなれません。

「特定郵便局」の世襲制が批判されることもありますが、「特定郵便局」の建て替えや移転で個人ローンのリスクを負うのは「特定郵便局」の個人です。約1万9000の「特定郵便局」の土地や建物を国家が用意すればいいのですが、それだけの国家資金がないために個人の資産で運営されているのが郵便局です。

コンビニ・チェーンのオーナーがコンビニ本社から、「土地と建物と内装の資金を負担してくれ。しかし、子供には事業は継承させないし、オーナー店長でもクビになり給与がない場合もある。」と言われても困りますし、だれもそんなチェーンに資金を出して参加しません。今回の郵政民営化はまさに資金は出させるが、世襲も雇用も保証しないという過酷な民営化なのです。郵政事業は国家によって成り立っているのではなく、「特定郵便局」の個人資産で成り立っているのに、国家のものだと民営化しようとしています。税金を自分の金と勘違いして無駄使いする中央官庁の官僚を放置して、自分の資産を提供までして税金も使わず運営されている郵政事業がなぜ悪者扱いなのか分かりません。

一般公務員とは違う個人の資産を提供して郵政事業を支えている「特定郵便局」の問題は、今後十分に話し合ってこれまでの約束も認めながら、民営化するなら慎重な「特定郵便局」との協議が必要です。国民の多くは郵政事業は国家事業で、すべて国家資産の国有事業と思っているかもしれませんが、JRで言えば、全国の駅が社員の個人資産の提供で企業運営されてるようなもので、NTTで言えば全国のNTT支店の土地と建物が社員の個人資産の提供で企業運営されるようなものです。新たな郵便局の開設には個人資産が必要で、社員に給与を払い、社員に賃貸料を払っているといっても、いつ廃止されるかの不動産リスクを負うのは個人の社員です。郵政民営化は小泉首相が考えるほど簡単なものではなかったのです。

国民は郵政事業をよく知らないから、簡単に「郵政民営化」に反対賛成が言えます。
国家政府から「国家と国民のための郵政事業に参加して欲しい。国家政府はお金がないから個人の資産で郵便局の土地と建物を建ててくれ。お返しに国家公務員の地位と一般国家公務員とは違う特典も事業の子孫継承も認める。」と言われて運営されてきた郵政事業ですが、民営化の議論と準備を4年かけてする約束が、いきなり2年後に民営化と国家政府が宣言して、今回の「郵政民営化」解散になりました。
国家政府は、「特定郵便局」の土地と建物を個人資産で提供している郵便局長約19000に対して、「国家公務員の地位の廃止、事業継承の廃止、事業コスト保証の廃止、将来の郵便局の廃止の可能性、民間会社移行後の雇用の保証の廃止、郵便局の土地建物の賃貸契約の解除の可能性」など、多くの民営化条件を突きつけました。国家事業だから、公務員だから、土地を提供して郵便局を建てて郵便事業を支えてきた「特定郵便局」約19000は、国民のために大きな資産リスクを負い、雇用の保証も事業継続の保証もなく、2年後に国家貢献のために郵政事業を継続してくれるでしょうか。「郵政民営化」の2年後の結果はもう見えています。

参考文献:
臥龍通信第66号「年金問題の本質」
臥龍通信第117号「独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)」
公開コンテンツ「日本の官僚主義」
公開コンテンツ「厳しい国家財政」
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥龍通信第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

発行日 発行No タイトル
2005.09.14 第123号  郵政選挙(終わりの始まり)
2005.09.07 第122号  日本社会の貧困
2005.09.01 第121号  郵政民営化法案の欠陥
2005.08.31 第120号  日本政治の構造改革
2005.08.22 第119号  戦後60年の政治
2005.08.15 第118号  戦後60年の総決算
2005.08.10 第117号  独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)
2005.07.28 第116号  世界ブランドランキング2005
2005.07.08 第115号  日本の少子化と女性問題
2005.07.08 第114号  米国政府要望書
2005.07.01 第113号  日本の右傾化
2005.06.17 第112号  日本の戦後と靖国問題A
2005.06.17 第111号  日本の戦後と靖国問題@
2005.06.02 第110号  狂気の日本
2005.06.02 第109号  東シナ海ガス田問題
2005.05.23 第108号  中国から見た日本
2005.05.13 第107号  日本の国際競争力(IMD2005)
2005.04.18 第106号  最近の中国対立
2005.04.18 第105号  明治の成功と失敗
2005.04.18 第104号  報道の意図と文脈
2005.03.22 第103号  ライブドア騒動の深層
2005.03.15 第102号  日本の時代遅れの国際感覚
2005.03.05 第101号  日本のブランド戦略とデザイン戦略
2005.03.05 第100号  中国の知的財産権問題と日本の歴史問題
2005.02.22 2月号外  頑張れホリエモン
2005.02.20 第99号  21世紀の知的財産権戦略
2005.02.20 第98号  日本の対中貿易
2005.02.10 第97号  不動産ファンド
2005.02.10 第96号  中国のエネルギー戦略
2005.01.20 第95号  クルド人を救え
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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