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臥龍通信

臥 龍 通 信 第109号 <2005.6.02発行>
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  ◆ 臥 龍 通 信 第 109号 ◆
    東シナ海ガス田問題

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 ◆ 臥 龍 通 信 第109号 ◆
    東シナ海ガス田問題

東シナ海ガス田問題

中国の東シナ海ガス田開発が大きな問題となっています。日本の民間人だけでなく政府首脳の過激な発言が新たな日中問題として激化しています。今回は東シナ海ガス田開発問題を特集します。

まず、問題を整理すると、海洋領土問題は簡単な問題ではなく、中国とは尖閣諸島の問題や韓国では竹島問題が領土問題として協議中です。国家間の外交問題でもありますから、ある程度の妥協が必要ですが、現在はお互いの国家利益を主張するだけの不毛な主張が繰り返されるだけで、解決の兆しが見えません。
東シナ海のガス田開発問題は、整理すると
@中国が領土として主張する沖縄トラフまでのAとBの地域と
A日本が領土として主張する日中中間線までのBとC地域と
B日本と中国がお互いに領土として認め合っているAとCがあります。
CAは日本も中国も中国領土として認め合った領域です。
DCは日本も中国も日本領土として認め合った領域です。
EBの領域は日本と中国の両国が自分の領土として主張している地域で、この地域が日本と中国の領土協議の対象地域でもあります。つまりは両国が領土と主張しているだけの地域で、どちらの領土であるかは今後の協議にかかっていますが、この地域の資源が今回問題となりました。

新聞やテレビ報道では、日中中間線を越えた中国の資源開発が日本の資源を盗む行為だと報道していますが、日中中間線から沖縄トラフまでのBの地域は日本の領土であると中国は最初から認めていません。日本が勝手に主張している領土であり、中国も日本と同様に中国の領土として主張している地域の資源がいつの間にか、日本の正式な領土と報道されて中国は泥棒扱いです。中国は日本が勝手に中国の領土を日本の領土と宣言して、中国を泥棒扱いしているという反論をするよりは、無視を続けています。靖国問題とは違い、国家の領土問題ですから慎重に対処して、日本が過激な行動に出れば中国は武力行使も躊躇しないはずです。日本が中国と協議中の日中中間線の東の開発を始めれば、日中は領土問題の武力衝突と中国との戦争の危機が日本を襲います。

小泉首相は最近の国会の答弁で日本のA級戦犯に関して「罪を憎んで人を憎まずという言葉は孔子の言葉だ。」と答弁して、加害者の日本の首相が被害者の中国に対して「罪を憎んで人を憎まず。」という愚かな答弁をしてしまいました。日本の中国侵略で親子三代の悲惨な一族の歴史を持つ日本の中国侵略の現実の被害者でもある中国の胡錦濤国家主席はどんな思いで、小泉首相の答弁を聞いたことか、その怒りが理解できます。

ちなみに、中国の人民日報は5月31日付で、小泉首相の発言を「断片的に引用して、孔子を曲解したものだ」論評し、問題の「罪をにくんで人を憎まず」という部分の後には、「罪を犯した人間を生かそうとする。それができないなら『刑』する。」と続くことを紹介し、また、前後の部分から判断して、「罪をにくんで」の部分は「小さな罪なら、これを赦(ゆる)す。老人や弱者は受刑させない。」という考えを反映したものだと解説しました。そして、「靖国神社に祀られているA級戦犯の犯した罪は、小さな罪なのだろうか。彼らは、弱者だったのだろうか。」と疑問を投げかけ、小泉首相の発言を、「孔子の一節を断片的に取り上げ、勝手な解釈をほどこしたものだ。」、「小泉首相はもっと勉強するべきだ。」と反論しました。

また、6月2日の国会答弁では、「小泉首相は、靖国参拝について、国家の象徴である天皇が靖国に対してどのような考えをお持ちかご存知ですか。天皇は戦後靖国に参拝されたことがあるかどうかご存知ですか。」と質問され、信念を持って靖国参拝して当然靖国の歴史的な意味も知っているはずの小泉首相は「天皇が靖国に何回参拝されたかは知りません。数回あると思いますが、よく知りません。」と答えました。「日本の国家国民の象徴である天皇が理由があって靖国参拝を戦後一回もしていない事実さえ知らずに、小泉首相は靖国参拝しているのですか。」と追求されました。私は個人の信念で靖国神社に参拝していると語る小泉首相ですが、天皇がなぜ靖国参拝しないかの靖国神社の歴史的な意味や靖国神社自体になんら興味のない、信念も歴史観もない小泉首相の靖国認識がまた明らかになりました。
ちなみに、昭和天皇は戦後、1945年から1975年にかけて計8回、靖国神社を参拝しています。日本政府の国会答弁では、天皇のすべての靖国神社参拝は公人ではなく、私人としての参拝で天皇という立場での参拝ではないと答弁してきました。24時間の警備体制で常にSPが個人的なスポーツや音楽の鑑賞まで警備する天皇や首相に私人としての立場があるのかという問題と、また私人では参拝可能で、天皇や首相という立場では参拝できない靖国神社の問題は現在も曖昧にされたままです。

常識も知性のかけらもない日本の首相ですが話を戻しますと、中国は1970年代からBの地域を日本と共同開発することを提案してきましたが、日本政府は保留にしてきました。まさに問題の先送りです。中国は1970年代から海洋資源開発調査を進め、すでに東シナ海のAの地域には中国の開発済みのガス田が多くあります。中国は大陸に近いガス田から開発を始めて、発展が進む沿海州にエネルギーを供給しています。

日本と中国の協議中のBの地域の共同開発は進みませんでしたが、その理由は日本側には沖縄までのパイプラインに沖縄側に深い海溝があるために建設が不可能で、海上に大規模なガス田施設を建設して、船での輸送する輸送費を考えると採算が取れない懸念がありました。つまり、Aの中国側の地域は浅く、沖縄に行くにつれて海が深いのでBの地域の開発が非常に難しくなります。
結論から言えば、Bの地域の開発は資源を中国に持っていく以外には経済的な採算は取れないし、中国はそれほど高く買ってくれないならば開発するメリットもありません。
今回の中国の春暁ガス田は日中中間線から数キロの距離で、日本からは地下で中間線を超えた資源開発の疑いがあるとの意見が沸き上がりました。
5月27日に中川昭一経済産業相は、中国が東シナ海でガス田開発を続けている問題について「一方で話し合いをしましょうと言いながら開発を続けているのは、右手で握手しながら左手で殴るようなこと。承服できない」と中国の姿勢を強く批難しました。
また、日本政府の協議も日本側は日中中間線に近い海域で中国側が進める春暁ガス田などに関するデータ提供を求めていますが、中国側はこれまでも要求を拒否しました。
日本ではBの地域が協議中の地域であることを忘れて日本の領土と勝手に宣言して、中国のB地域の資源開発に関係する可能性があると中国を「資源泥棒」扱いです。

疑問は日本政府が言う排他的経済水域(EEZ)と日中中間線の問題です。排他的経済水域 Exclusive Economic Zoneとは、国連海洋法条約に基づいて設定される経済的な主権がおよぶ水域のことで、沿岸国は国連海洋法条約に基づいた国内法を制定することで、自国の沿岸から200海里(約370km)の範囲内の水産資源および鉱物資源などの非生物資源の探査と開発に関する権利があるというもので、日本と中国の排他的経済水域は双方の陸地から700kmもなく、双方で370kmを主張することができないために両国の中間線を排他的経済水域としてして考えるというのが日本政府の主張ですが、中国と協議して認めさせた両国の了解事項ではありません。陸地から12海里(約20km)は領海ですが、排他的経済水域は基本的には公海なのです。日本の主張する日中中間線を中国は認めてはおらず、広範囲な大陸棚までの沖縄トラフまでを中国の排他的経済水域と主張してきましたから、30年も海洋協議を怠ってきた外務省や日本政府が、協議も了解もない日中中間線までを日本の権利地域と言っても、中国政府から見れば、そんな日本の日中中間線までの権利など協議したこともないし、認めてもいないということになってしまいます。日本が中国と協議もしないで、勝手に権利を主張しても中国は認めてはくれません。

中国が主張する沖縄トラフと日本が主張する日中中間線の重なる地域Bは日本が勝手に領土と主張している地域で、今も帰属が曖昧になっている地域で中国が一方的に泥棒扱いされる理由のない地域で、30年以上も莫大な資金を使った中国の資源調査データを無償で日本側に提出する義理は中国側にはないということです。中国が多額の資源調査資金を使い、30年間蓄積してきた国家戦略の重要な国家機密でもある資源調査データを、提出しろと言うだけで中国が出すなどと思っているとしたら、日本政府は大きな間違いを犯しています。中国と話し合う努力もしないで、日本の領土だ、開発を中止しろ、調査データを出せと、日本国内でいくら国民に言っても、中国政府と協議しなければ何も解決しません。いまさら遅いのですが、国家の重要な資源と考えるならば、日本もお金を使って調査すればいいのですが、急に予算や資金手当がつかないから中国のデータを要求して拒否され続けています。中国の資源泥棒の報道が盛んにされる日本の動きは、明らかにまだBの地域の協議を30年間も放置してきた日本の問題で、たとえBの地域の資源に中国の春暁ガス田が関係していても協議の問題であって、日本に盛んに報道される資源泥棒や中川大臣の相手を殴るという問題ではありません。Bの地域は日本と中国の協議中の地域ですから、中国はBの地域の資源開発を遠慮しています。日本がBの地域を勝手に日本領土と宣言するなら、中国も沖縄トラフまでのBの地域を中国領土と宣言するでしょう。30年以上も問題を放置しておいて、中国は一方的に資源開発していると中国を非難し、調査データも提出しないと偉そうに記者会見する外務省や経済産業省の官僚は、まずこれまでの資源問題を放置してきた責任を取ってから会見しろと言いたいくらいです。自分たちの怠慢を問題にせず、中国が悪いという前に官僚が問題をおろそかにしましたという国民に対するお詫びの会見が先なのですが、自分たちの責任は問わず、中国がすべて悪いと逃げる官僚には許せない気持ちでいっぱいになります。

もし、日本がBの地域で▲の資源開発を行うことになれば、中国もBの地域で▲の資源開発をする可能性が出てきます。AとCの資源開発には日本と中国の両国は問題ないという合意がありますが、Bの地域の資源開発に日本が乗り出せば、対抗上中国はBの地域の資源開発の決定をするでしょう。中国は領土問題ですから軍隊を派遣しても日本に対抗するでしょう。日本にBの地域で中国海軍と戦う覚悟があるかということです。領土問題では軍事力行使も躊躇しない中国ですから、日本は北朝鮮だけでなく中国とも武力衝突と戦争の危機に直面します。中国批判は簡単ですが、中国と戦争になったときに徴兵されて戦う覚悟が日本人にあるかというとさんざん挑発しておいて、話せば分かる言っても遅いこともあるのです。中国が話せば分かるということを無視して50年以上も中国の領土を侵略し続けた日本が今度は話せば分かるといっても中国が聞いてくれるかは疑問です。中国との平和の話し合いをまったく無視して、中国に戦争を仕掛けて勝たない限り領土侵略を止めなかった日本が、今度は領土が欲しければ戦争して勝ち取れと中国から言われそうです。領土問題の武力解決は当然のことであり、日本に関係なく中国は領土問題では武力行使をしてくるでしょう。中国人の平和の交渉を無視して50年以上も中国領土で武力行使した日本の平和の交渉など、中国の武力行使が始まってしまえば中国にとっては日本の平和交渉など無視するのは簡単です。日本に対する50年間の屈辱戦に中国のナショナリズムは最大となるでしょう。おとなしくAの地域で資源開発している中国を「資源泥棒」と挑発することは、中国の武力行使の日本打倒の理由を与えるようなものです。中国がアジアの盟主を宣言するための日本打倒の理由を作ろうとしている日本政府の意図が理解できません。日本政府が靖国や領土問題で中国を挑発して、その問題解決を条件に国連の常任理事国に拒否権を発動しないことで、小泉首相は大勲位をもらうなんて考えがあるならば、中国を日本政府は甘く見すぎています。アジアの覇権を握ろうとする中国の打倒相手は日本であることを考えれば、日本は中国に日本打倒の理由を与える愚かな行為や言動は控えるのが得策です。東シナ海は日本の食料と資源の輸送路であって、その地域で武力衝突が起きれば、日本の食料と石油は数ヶ月で枯渇します。中国を挑発しておいて、困れば米国になきつくことも考えられますが、二国間の紛争に米国が介入してくれるかは米国と中国の関係から考えれば疑問があります。日本のナショナリズムがまた暴走して、戦争なんてことは避けなければなりません。小泉首相の言うとおりの話せば分かるのであれば、現在も世界の50カ国以上の国家と地域で戦争が起こってはいないし、イラクやアフガニスタンの戦争など起こりませんでした。21世紀の中国のアジア覇権の象徴が日本との戦争にならないことを祈るばかりです。分裂混乱する大清帝国に国家生命をかけて戦い勝利した日清戦争当時の日本ですが、同じ東シナ海で中国の国家総力戦の復讐戦に直面する日本の困難だけは避けなければならないのです。中国との領土問題で国家のために戦ってくださいといってどれだけの国民が戦場に行くでしょうか。日本人は死にたくないから米国の軍人が日本人の代わりに戦場に行ってくれというのでは、最初から挑発などしなければいいのですが、日本の中国挑発は国民ばかりでなく国家政府首脳まで際限がありません。



東シナ海の日本と中国の紛争は、資源問題ばかりではありません。東シナ海は中国と韓国や米国との輸送路でもあり、上海や台湾の輸送路でもあります。中国にとっては日本の日本海と同じような海域で韓国、台湾、米国などの重要な輸送路の問題でもあり、日本にとってはアジアからの食料と中東からの原油の輸送路でもあります。この地域の紛争は5年や10年先の日本の資源開発の問題ではなく、数ヶ月先の石油と食料輸入を確保する日本の国家存亡の生命線の争奪にもなります。日本の感情的な「中国資源泥棒論」などが、中国のナショナリズムにまた火をつけるかもしれません。日本本土から遠くはなれた中国の目の前の東シナ海の紛争は、地理的条件から考えても日本が不利です。

「エネルギー白書(平成15年度版)」

これまで、日本政府が排他的経済水域として宣言している地域が自分勝手で広すぎます。日本政府が勝手に宣言して日本の権利を主張しても、日本の周辺国の韓国や中国が認めていないのであれば、日本政府がただ主張しているだけで、日本の主張など周辺国からは無視されるでしょう。日本政府が排他的経済水域の主張を根拠に東シナ海でガス田開発をすれば、日本と中国の武力衝突は確実になるでしょう。周辺国との協議もできない外務省や経済産業省が独断で中国の目の前の東シナ海を開発することは、日本と中国の武力衝突の大きな危険を犯すことになります。無能な官僚が責任を取れない紛争を起こすことだけは避けたいと考えます。

また、中国とは尖閣諸島の問題でも対立していますが、尖閣諸島に上陸して分かることがあります。それは、尖閣諸島からは台湾がはっきり見えますが、日本の領土である宮古島も沖縄も見えません。尖閣諸島は台湾から見える目と鼻の先の島で、どう考えても台湾からの方からが近いのではないかと思えるのです。日本の領土と宣言する前に尖閣諸島で日本と中国と台湾が冷静に周りを見ながら協議すれば、妥協案も生まれると思いますが、日本政府は自国の領土主張を繰り返すだけで解決能力がまったくありません。。

日本の戦争責任の戦後問題と複雑化する領土問題で周辺国の中国・台湾・韓国・北朝鮮・ロシアと対立する日本ですが、日本人の本音は日本の戦争責任は天皇にもないし、戦勝国が裁いたA級戦犯にもないし、国民にも責任はないと思っています。日本のアジアに対する戦争責任者は存在しません。日本人はアジアに対する戦争責任を認めてはいません。日本政府の首脳が謝っても、すぐに閣僚から悪くない趣旨の発言が続き、アジアもいい加減疲れています。日本人の本音はアジアに対する戦争を悪いと思っていないと見抜かれています。

日本が民主化の過程で、1960年代や1970年代にどれだけ激しい労働争議や学生デモを起こしたかを忘れて、中国人の10万人程度のデモで大騒ぎします。日本の貧富の格差(9倍)が中国の格差(3倍)より大きいことも知らずに、貧富の格差が国家崩壊の原因と論評したりします。5月16日には、小泉首相が靖国問題は外交問題で、戦争犯罪人問題にもかかわらず「他の国が干渉すべきではない」と国会答弁しました。アジアの侵略戦争の戦犯問題を日本に要求することは「内政干渉」ではないのに、中国は口を出すなというわけです。被害者に加害者が誰が犯罪者であるかは我々が決めるというようなもので、被害者の気持ちを無視しても良いというわけです。5月21日に訪中した自民党の武部幹事長が中国の参拝批判について「内政干渉だとの声がある」と発言して、中国で大きな問題となりました。中国の靖国批判は、国家主権を侵害する「内政干渉」という言葉を使いました。日本の侵略戦争の被害者である韓国や中国が小泉首相の靖国参拝は戦争被害者を傷つける行為だから止めてくれと言っていますが、日本政府と首相は靖国参拝は戦争被害国の国民を傷つけるとは思わないと発言しています。日本国民や小泉首相がどう考えようとも、戦争被害者の韓国と中国が現実に反日デモなど起こる戦争被害者を傷つける行為を止めてくれといっていることを、反日デモは韓国と中国の国内問題で韓国や中国の国民を傷つける行為ではないと発言する国家最高責任者や政府関係者には、いい加減疲れ果てます。深く傷ついている戦争被害者の中国や韓国の願いを、国家主権を侵害する「内政干渉」という言葉まで出れば、中国との関係は最悪の状況になっても無理はありません。そして、5月26日には、自民党の森岡厚生労働政務官が中国との戦争犯罪人の合意のあるA級戦犯について、「A級戦犯は罪人ではない」と発言しました。さらに、中川大臣の東シナ海資源泥棒報道です。どの国が見ても日本は中国に喧嘩を仕掛けています。日本の挑発が中国でどんな結果を生むかは未知数ですが、韓国の30倍以上の人口の国家ですから、韓国の反日運動とは比べものにならない結果が生まれるでしょう。国連常任理事国入りのための北朝鮮のような瀬戸際外交を中国に対して日本が行っても、中国に日本打倒の理由を与え、国家体制を強化させる効果しかありません。数ヶ月先の日本のエネルギーと食料が関係している東シナ海問題は日本政府や国民も慎重に考えてくれればと思います。分裂混乱した中国に理由をつけては50年以上も侵略を繰り返した日本が、21世紀は中国に逆に理由をつけられて侵略されるだけの愚かな行為や言動だけは控えたいと思います。過去の日本の侵略がどれだけ中国人を傷つけたかは、今回の東シナ海資源問題でも理解できます。尖閣諸島や東シナ海だけでなく、沖縄や九州が中国に50年以上支配されて、初めて日本人が理解する中国の痛みなのかもしれません。

日本の中国認識の誤解
中国は毎年9%以上の経済成長を続けています。日本と中国の経済関係は密接で、日本企業や日本政府のODAがなければ、中国は経済発展できなかったし、今後も日本の協力がなければ中国は経済発展できないと思われています。

20019月に中国の南京で、第6回在外華僑大会が開催され、世界に広がる華僑6000万人(日本の在外居住者は250万人)の代表5000人が集まりました。当時の朱容基首相は、『中国経済のいままでの成功のカギは、海外華僑からの本国への投資にあった。』と発言しました。1978年から始まるケ小平の改革解放政策で、海外からの直接投資の約70%が華僑企業によるものであったことを高く評価しました。日本の中国投資は海外からの投資額総額全体の10%にもなりませんでした。

投資受け入れ先

直接投資額(100万ドル)

比率

香港

17,860

33.9

バージン諸島

6,117

11.6

米国

5,423

10.3

日本

4,190

7.9

台湾

3,970

7.5

EU

3,709

7.0

ASEAN

3,255

6.2

韓国

2,720

5.2

その他

5,493

10.4

合計

52,742

100

(出所:中国統計年鑑2003

中国の経済発展は海外からの投資のおかげですが、日本人が考えるほど日本や欧米企業の投資は多くありません。よく言われる日本のODAがあったから中国は経済発展できたというのは間違いで、日本政府のODAや日本の民間投資額は、海外からの中国投資の10%にもなりません。

日本は、これまでに中国に経済援助をしてきて、外務省の資料によれば2003年までに、総額で約3兆3194億円の経済援助資金が日本から供与されています。日本の中国に対するODAは内容では、中国の借金である有償資金協力が約3兆472億円、無償資金協力が約1416億円、技術協力が約1307億円で、総額は約3兆3194億円となっています。日本には中国は日本から莫大な経済援助をもらっておいて、日本に対する感謝の気持ちはないのかという議論があります。まず、日本のODAについて考えるべきことは、日本のODAは中国に対する戦後賠償という意味合いではなく、管轄官庁も財務省で外務省ではありません。日本のODAをもらう国家との未来の関係構築のための経済援助であって、まず過去の戦争責任や戦後賠償の問題とはまったく関係がありません。日本が中国との過去の清算をすることと、未来に対する関係構築のための日本に対する借金であるODAはまったく別の話です。日本のODAが日本の戦争責任の賠償の意味があり、日本のODAを受けることが日本の戦争責任問題を追及しない条件であれば、中国は日本のODAは最初から拒否したはずです。もともと日本の戦争責任問題とは関係ないODAなのに、まるで戦争責任のお詫びとしてODAがなされたような誤解は中国人には迷惑で、日本の過去の責任をODAを条件に問わないという合意は中国にも日本にもありません。

また、これまでの20年以上の日本のODAの3兆3194億円の3兆472億円は中国の借金で、日本に返済される資金で中国がもらった返済不要の資金ではありません。日本のODAの大部分は中国に貸す資金で、使い道は日本企業の建設設備受注が基本条件です。儲かるのは日本企業と仲介するブローカーや受注企業から政治資金をもらう政治家だけです。日本のODAは中国の返済を条件とした中国の資金で日本企業に仕事を与えることで、儲かるのは日本企業と政治家なのです。金を貸すから日本企業を儲けさせろという日本の中国に対するODAにありがたみも、戦後賠償の意味もありません。現在、中国に進出している海外企業は20万社を超え、日本企業は18000社を超えます。海外からの中国投資も年間5兆円を超え、日本の海外からの投資額約2兆2000億円の2倍以上の投資が中国にはあります。中国は日本以上に世界に開かれた資本主義市場であり、中国の経済発展に対する日本の貢献度も10%以下と決して日本人が考えるほど大きくはないのです。中国に進出している日本企業は中国の海外企業全体のの10%にもなりませんし、日本の年間投資額も政府ODAや民間投資の合計でも5000億円程度で中国の海外からの投資額の5兆円以上の10%いきません。
日本企業だけでなく海外企業のビジネス活動を可能にするには、企業が直接投資する建設設備投資だけでなく、中国政府の電力・通信・物流・上下水道などの莫大なインフラ整備資金が必要ですが、その資金のほとんどは中国国民と華僑の資金で建設されています。日本の中国に対する無償援助は累計で約2722億円で、日本企業の膨大なインフラ整備資金としては1社に対して1500万円ほどで、日本企業の中国における活動を可能にするインフラ整備も華僑資本によっていることを日本は認識するべきです。中国は中国で商売して金儲けする日本企業の膨大なインフラ整備のために日本政府に無償資金要求などしませんし、日本企業のための道路建設・電話通信網の整備・電力発電所の建設・電力線網の整備・ダム建設と水道網整備・廃棄物処理施設の建設など、インフラ整備資金を日本企業1社あたり最低1億円、18000社で1兆8000億円の無償インフラ整備資金を問題にすることもありません。税金で初期投資の回収を考えても、いつ撤退するか分からない海外企業のためのインフラ整備は中国政府には大きなリスクでもありますが、日本から中国は日本のODAと民間投資で経済発展してきた日本の恩を忘れているといわれても黙っています。中国の我慢が不気味でもあります。中国の防衛予算は2002年で約200億ドルで、日本の防衛予算は平和国家といいながら約426億ドルで、毎年中国の防衛予算の2倍以上の額の防衛費で武装する日本を、中国は日本人が考えるほど平和国家だと思っていません。日本に侵略されて日本の脅威を民族的に記憶している中国人の「日本脅威論」は理解できますが、中国を侵略した加害者日本の被害者「中国脅威論」は日本人の過度の「中国コンプレックス」とも思えます。中国人に一方的な半殺しの暴力を振るってさんざん盗みまでしておいて、「お前たちは危険なやつだ。正式に謝罪しろ。」と中国人が言うと、「お前たちはこそ危険なやつで、信用できない。」と加害者が被害者に逆ギレしているようにも日本人は見えてきます。このままでは、一度忘れようとした中国人の日本人に対する「復讐心」を過激にするばかりです。中国には中国人に使うために日本が製造した毒ガス兵器がいまだに放置され、現在も日本の国際法違反の毒ガス兵器の被害が続いています。中国人にとっては日本の戦争問題はいまだに日常生活の脅威となっているのです。中国こそが日本の脅威を何十年も感じ続けてきた日本の被害者なのです。

中国統計年鑑
2003年度版の2002年実績でも、香港と台湾の直接投資額は全体の40%を超えています。1978年以降の中国の経済発展を支えてきたのは、台湾や香港や東南アジアの中国華僑企業による直接投資が大きな役割を果たし、現在でも中国華僑企業の役割は決して小さくありません。中国は欧米企業の投資などに頼らない経済発展をしてきたことは、米国の10.3%や日本の7.9%の投資額を見ても明らかです。2002年度の実績で中国の投資の41.4%は台湾と香港の投資で、総額は日本の投資の約4190億円に比べて、約2兆1830億円もあります。日本の政府や企業の中国撤退は投資額としても8%ほどの影響しかありません。中国市場を狙う海外企業から考えれば、日本企業の撤退は華僑企業と欧米企業の投資増加で、中国経済に対して日本企業の撤退は大きな影響を与えません。日本のODAの年間約1000億円がなくても、中国経済に大きな影響など与えません。日本人が言うほど日本の企業の中国貢献度は大きくないのです。中国の日本に対する輸出額は全体の13.6%に過ぎません。一方、日本の中国に対する輸出額は中国と香港と台湾で全体の25.1%で、中国との摩擦は日本の貿易額の25%という米国に対する貿易額と同額の輸出を失うことになります。中国に依存している日本経済と日本よりはるかに膨大な華僑に依存している中国では、明らかに日本が不利です。日本企業の中国撤退はこれまでの日本企業の民間投資約5兆円の投資が無駄になり、日本企業は莫大な不良債権を抱えることになり、日本の企業の業績悪化は5年では取り返しがききません。中国は日本の協力なしには経済発展はできないなど、日本人の妄想です。中国圏(中国本土・香港・台湾)は2004年の貿易で約16兆3702億円の売上と約4兆1946億円の利益をもたらす日本の重要なお客様として台頭してきました。中国に日本が必要ではなく、日本にとって中国が必要なのです。中国の売上と利益を失うことは日本経済に大きな打撃となり、日本はまた経済不況と失業に悩むことになります。東シナ海ガス田開発問題も日本の主張するBの地域が中国と激しい対立の結果として日本の権利地域と認められても、5年先のガス田売上数百億円を守って、毎年中国に対する約16兆円の売上と約4兆円の利益を失っては、日本経済や日本国民にとっては大きな損失というしかありません。中国人に対する日本人の優越感と大国意識が、日本国民に大きな誤解と妄想をいだかせています。冷静に世界状況を見る日本人の良識と知性が必要です。

年表
・1869年「靖国招魂社」を創建
・1879年「靖国神社」と社号変更
・1894年日清戦争
・1931年満州事変
・1937年日中戦争始まる
・1941年太平洋戦争始まる
・1945年太平洋戦争終結、連合軍に日本は無条件降伏
・1951年9月8日にサンフランシスコ講和条約
 連合国55カ国の48カ国と平和条約を調印し、独立国として復帰する。
・1952年の日華平和条約
 中国国民党政府(台湾政府)と日本との第二次世界大戦の戦争状態を終結
・1953年戦犯の赦免に関する日本の国会決議
 連合国55カ国の中11カ国の同意を得て、日本国民4000万人以上の署名により、
 戦犯の赦免に関する決議が国会で、社会党や共産党まで含めて一人の反対もなく決議

・1956年A級戦犯の赦免・釈放
・1958年BC級戦犯の赦免・釈放

・1965年日韓条約で日本と韓国との国交樹立
・1970年までにB・C級戦犯の死亡者と刑死者の約1000名が「靖国神社」に合祀
・1972年日中平和条約
 中国共産党政府と日本との第二次世界大戦の戦争状態を終結
・1972年沖縄返還、米軍占領下の沖縄が日本に返還される
・1975年昭和天皇の「靖国神社」に最後の参拝、以後参拝なし
・1978年A級戦犯が「靖国神社」に合祀

参考文献:
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥龍通信第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

発行日 発行No タイトル
2005.05.23 第108号  中国から見た日本
2005.05.13 第107号  日本の国際競争力(IMD2005)
2005.04.18 第106号  最近の中国対立
2005.04.18 第105号  明治の成功と失敗
2005.04.18 第104号  報道の意図と文脈
2005.03.22 第103号  ライブドア騒動の深層
2005.03.15 第102号  日本の時代遅れの国際感覚
2005.03.05 第101号  日本のブランド戦略とデザイン戦略
2005.03.05 第100号  中国の知的財産権問題と日本の歴史問題
2005.02.22 2月号外  頑張れホリエモン
2005.02.20 第99号  21世紀の知的財産権戦略
2005.02.20 第98号  日本の対中貿易
2005.02.10 第97号  不動産ファンド
2005.02.10 第96号  中国のエネルギー戦略
2005.01.20 第95号  クルド人を救え
2004.12.30 第94号  日本の教育
2004.12.30 第93号  北朝鮮問題
2004.11.30 第92号  崩壊する日本
2004.11.30 第91号  日本の国家経営者
2004.11.10 第90号  韓国技術エリートの台頭
2004.11.10 第89号  21世紀構想研究会記念フォーラムのご案内
2004.10.15 第88号  観光立国(ビジット・ジャパン)
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋  隆


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