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日本のブランド戦略とデザイン戦略
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日本のブランド戦略とデザイン戦略
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日本のブランド戦略とデザイン戦略
日本では、知的財産権戦略と言えば、特許戦略ばかりが注目されますが、特許だけでなくブランドやデザインも注目してほしいと考え、今回は日本のブランド戦略とデザイン戦略について特集します。
日本のブランド戦略
日本では、特許ばかり注目されて、ブランドについては大きな注目をされませんが、知的財産権で特許以上に利益を生むのがブランド戦略であることはあまり知られていません。特許は技術者と法務関係の工業所有権の手続き部署の仕事で、特殊な技術と難解な法律手続きが必要な専門家の仕事として、企業で特許戦略は経営戦略の重要な一項目であるという認識は最近になってやっと生まれてきました。一方のブランドは商品の企画・開発部門で考えられてきた歴史があり、商品の企画・開発・マーケティングといった部署の仕事で、ブランドが企業の経営戦略の重要な一項目であるという認識は特許以上に確立していません。商標というものは企業や商品の名前にすぎないという認識は現在でも続いています。日本企業の最近の合併を考えても、企業名が気付かないうちに変わっているということがたびたびあります。企業名は合併でいくらでも変えられるものと日本では考えられています。
企業においては、企業名がまずブランドです。そして、企業が生産・販売している商品名もブランドです。企業名がすべての生産商品名より有名な場合もあれば、一商品が企業名よりも有名な例もあります。紙おむつのパンパースの生産企業名をすぐに言える人は少ないと思いますが、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)です。チャン・ツィーの宣伝でも有名なアジエンスは花王の商品ブランドです。コーヒーのネスカフェのネスレなど、商品名が企業名に関係なく有名ということもあります。企業名というブランドの価値は商品ブランドの合計という単純なものではなく、商品ブランドが企業名ブランドよりもよく知られており価値があるということもありえます。商品の名称は商品の性格や機能を考えて、分かりやすい名称になるのですが、あくまでも商品の名称は商品を販売するためのものと考えられています。商品の名称によってブランドを構築するという考え方は明確ではありません。
企業名もブランドとして明確に意識されることはありません。日本で始まった銀行の合併で考えても、東京三菱銀行、UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など、長い間信頼し好きだった銀行は顧客の気持ちも考えずに、企業によって勝手に名前を変えられて消滅してしまいました。私の好きだった銀行はどこに行ったのかと言っても遅く、勝手に企業名を変えてしまった銀行は、ある日突然に通帳とカードが使えなくなり、新しい銀行の通帳とカードに更新してくれと要求してきます。好きだった企業名や企業風土や企業経営方針が、ある日まったく違う企業と合併し、顧客の気持ちを聞くこともなく、勝手に企業の思惑でわけの分からない見知らぬ企業名の企業が誕生します。企業名は企業だけのものでしょうか。企業名のブランドとは、企業と顧客との安心と信頼の絆であり、企業名というブランドは企業と顧客が長い時間をかけて育ててきた企業と顧客との絆であり共有財産であるはずです。その企業名というブランドは企業の一方的な理由で、顧客にはまったく関係なく勝手に変更されてしまいます。企業と顧客との安心と信頼の絆である企業ブランドを失う顧客の失望と落胆を日本の企業経営者はまったく分かっていません。日本では銀行に続いて、製薬業界が合併を始め、またわけの分からない名称の製薬企業が誕生します。電機業界も再編が進めば、さらにわけの分からない企業名の企業が誕生するでしょう。長い間顧客として愛してきた企業名が簡単に変更され、一方的に企業との絆を断ち切られる顧客の気持ちを企業はまったく考えず、現在の企業経営者は宣伝すれば、顧客の信頼を取り戻せると簡単に考えているのでしょうか。企業名を単なる名称と考えて顧客の気持ちも考えず勝手に変えていく日本企業のサービスや商品の購入はすべてやめてしまいたい心境です。外資系企業が日本市場に広範囲に参入すれば、顧客との安心と信頼の絆を軽視する日本企業との取引はすべてやめてしまいたいと思ったりもします。ブランドを企業戦略の重要な一項目として考えられない企業など、21世紀には生き残れない企業だからすでに顧客の気持ちや絆など考える余裕もないのでしょう。企業名というブランドを重視できず、顧客の気持ちを考えない企業経営者は、顧客だけでなく自分の企業に対する愛着もないのだと考えます。
ブランド経営と特許経営との違いはあまり話題になりませんが、特許は10年くらいで加速度的に価値を失ってきます。ブランドは100年や200年という企業と顧客との協力によって価値を無限大に高めていきます。特許は21世紀にはテレビや冷蔵庫や自動車といった最終製品を特許にできるのではなく、特殊な機能の部品が特許となっていきます。数千や数万の部品の集合体の最終製品に特許の価値は販売価格の数%といった価値となるでしょう。一方、ブランドは同じ製品生産であっても、販売価格は数倍・数十倍の差があります。日本の職人が作った製品で考えれば、日本の企業ブランドで販売するのとティファニィのブランドで販売するのとでは、数十倍の販売価格差となり、職人の手間賃も利益も数十倍になります。欧州各国の人々は日本と同等か日本以上の人件費コストで大規模な製造業もないのになぜ生活できるのでしょう。欧州はブランドの宝庫です。日本企業がコストを積み上げて大量生産による価格低下で品質のよい製品製造を行えば、欧州は少量生産の世界最高級製品のブランドによるコストの数十倍の利益によって、欧州は高い人件費の製品製造を可能にしてきました。販売価格から逆に計算して、製品コストや人件費を圧縮する日本の企業経営に対して、欧州は製品コストと高い人件費を圧縮することなく、高い利益を生み出すブランド経営を可能にしました。1000円のコストのバックが日本ではせいぜい2000円で売って、1000円の利益が限界ですが、ブランド経営のエルメスやシャネルであれば1000円のコストであっても2万円でも5万円でも売れます。欧州は自動車、時計、タバコ、服装品、靴、家具、寝具、照明器具、宝石、装飾品、楽器、バック、万年筆、ボールペン、ワイン、ウイスキー、ハム、チーズ、帽子、革製品など世界最高級ブランドの宝庫で、販売価格に日本人が考えるコストや人件費という理由はありません。顧客と企業との長い間の安心と信頼の絆がブランドという形で成立しています。ブランド経営は特許経営を超える企業利益と顧客満足を可能にします。顧客が3世代や4世代にわたって付き合う企業との絆であるブランドの構築を日本企業が実践できているかは、勝手に企業名を変えて顧客との絆を一方的断ち切っている日本企業の行いを見れば、説明するまでもありません。日本の職人に製品を作らせても数万円しか払えない日本企業と数十万円を払える欧州のブランド企業の差が特許経営をする企業とブランド経営をする企業との差なのです。世界最高級の職人芸を後世まで保護できる高額の手間賃が払えるブランド経営は、手間賃を値切って世界最高の職人芸さえも維持できない日本の企業経営とは根本的に違います。労働者に高い賃金を支払い世界最高級の職人芸を可能にするブランド経営と販売価格競争で人件費を圧縮するコスト経営を重視した特許経営と、どちらが働く人間にとって得なのでしょう。高い人件費と世界最高級の職人技能の両方を歴史的伝統の中で後世にも保護していける企業経営が欧州のブランド経営です。
もちろん、ブランド経営と言っても企業と顧客の共同作業によるブランド経営ですから、企業側の努力だけでなく顧客側のブランドに対する愛情がなければ成り立ちません。日本人の消費生活が安物製品の大量購入と大量廃棄の消費生活では、顧客側にもブランドを育てる消費風土がないということになります。安い製品を求め、安い製品を購入しては数年で廃棄するのでは、ブランドは日本では育たないということです。品質の高い製品を親子何代にもわたって修理しながら使い続ける製品に対する愛着がなければなりませんが、日本人の消費行動がブランドを育てないその場限りの消費行動であるからといって、企業がブランド経営をしないで良いというわけではありません。その場限りの消費生活に慣れた日本の顧客には、その場限りの企業経営と製品生産で対応するのも理解できますが、企業と顧客とで、これまでの消費行動とブランドの重要性をあらためて考える必要があると思います。企業と顧客がブランドを大事に育てることが、世界最高の職人技能を育てることであり、高い人件費を可能にして、後世に伝統を残すことにもなるということを理解する必要があります。バカな消費者だから、いい加減な企業経営でも良いと顧客がなめられてもいけませんが、賢い消費者である顧客の存在がブランド経営をする企業にとっても重要な条件になっています。賢い企業経営を可能にするには賢い顧客の存在が不可欠なのです。
日本のデザイン戦略
日本の製品デザインは企業内デザイナーと外注デザイナーの手によって形になります。企業内デザイナーはもちろんですが、外注デザイナーの場合でも製品デザインは企業のデザインとして発表されます。当然、海外の有名なデザイン・コンテストに出品する場合も、日本企業の製品デザインは企業名で出展されます。技術者で考えれば、出願された特許に自分の名前はなく、いつも企業名で出願されるようなものです。日本の製品デザイナーは企業内だけで評価され報酬も制限があります。どんなにヒットした製品のデザイナーであっても、名前が出ることも特別な評価や報酬があるというわけでもありません。
一方、韓国や中国では企業の製品デザイナーの名前が企業名と併記されることが多くなりました。LG電子やサムスン電子の製品デザイナーは自分の名前を商品に併記して、世界的なデザイン賞を受賞した有名なデザイナーがいますが、企業名だけでなく自分の名前でデザイン集まで出版する韓国企業デザイナーが次々と生まれつつあります。製品デザイナーの社外評価やヒット製品に対する特別報酬など、特許の技術者と変わらない待遇が企業の製品デザイナーにも始まっています。製品デザインや梱包デザインなど、製品の販売にはデザインは重要な要素であると理解した韓国と中国企業がデザイナーに対する評価と報酬を技術者なみに対応し始めています。日本の企業デザイナーの評価と報酬に比較して、韓国や中国の企業デザイナーははるかにモチベーションも高いことになります。優秀な人材も評価と報酬によって集めやすく、韓国と中国の製品デザイン力は加速度的に高度化しています。日本では特許技術者に対する評価と報酬の低さが大きな問題にもなりましたが、日本の企業デザイナーの評価と報酬の問題はこれから始まります。最近は日本企業よりも韓国企業のほうが海外の製品デザイン・コンテストで多くの賞を取るようになりました。
日本では、特許技術者の評価と報酬の企業制度の構築が始まったばかりですが、企業デザイナーに対しても特許技術者と同様の評価と報酬の制度を考えなければならないのかと企業関係者は思われるかもしれません。製品販売と企業利益を大きく左右する製品のデザインに対しても、特許と同様の知的財産としての価値を認め、デザイナーに対しても仕事に対する大きなインセンティブを用意する必要があります。
韓国や中国企業に特許で追い上げられて、世界最高級ブランドの確立はできず、デザインでも負けることなど、日本企業にとっては悪夢のような出来事だと思います。企業経営者が特許技術者や企業デザイナーなどの社員と企業に心から愛着を持っている顧客を企業経営者がないがしろにすれば、どのような運命が企業を待ち受けているかを考えて、日本企業が総合的な知的財産戦略の再構築に真剣に取り組むことをあらためて望みます。
中国が資本主義を取り入れ始めたのは、1978年のケ小平の改革解放政策以降で、韓国に遅れること20年、日本に遅れること30年で資本主義の歩みが始まりました。中国の資本主義は始まってやっと25年ほどで、もっとも熾烈な米国型資本主義の競争理念を学びました。中国の企業経営者や大学教授などの多くの指導的立場の中国人人材が米国の留学経験とビジネス経験を持っていることからも中国の米国型資本主義の浸透ぶりが分かります。いきなりもっとも厳しい競争原理の資本主義を採用した中国人ですが、日本では米国型企業統治の日本導入に関する政府公聴会で、日本企業の内部統制監査を厳しくして監査法人に一定の強制力を認める考えに対して、日本企業からは反対意見が多く提出されました。反対の理由は、「企業の内部統制監査を行うと費用がかかる。」、「日本企業で不正を行う企業は一部だから必要ない。」、「内部統制監査費用が企業業績を圧迫する。」ということでした。犯罪を防止するにはコストがかかるし、犯罪を行う人間はごく一部なのだから刑法という法律は必要ないといっているようなものです。ここ数年でどれだけの大企業の不祥事が発覚したかも忘れて、問題企業は一部などとよく言えたものです。世界的な資本主義の厳しいルールを資本主義社会の日本では採用しないでほしいと考える企業経営者が数多く存在します。資本主義の厳しいルールで通貨危機や国家破綻を経験したアジアに比べると日本の国家経営者や企業経営者の甘い考えが危惧されます。厳しい資本主義のルールで生き残ることを覚悟したアジアといまだに資本主義のルールを拒み続ける日本との違いは、国家経営や企業経営の真剣さにも反映するでしょう。21世紀になって、日本企業は特許戦略やブランド戦略の議論以前に、企業の資本主義経営の基本制度が再構築を求められ、企業経営者の覚悟と企業経営そのものが揺らぎ始めています。自分に厳しさのない企業経営者と国家経営者が放漫な企業経営や国家経営を繰り返し、負債はすべて社員と国民に押し付ける経営者保身の日本経営をそろそろやめる時代が来ています。
参考文献:
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」
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| 中嶋経営科学研究所 所長 中 嶋 隆 |
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