May.2002
中嶋経営科学研究所 所長 中嶋 隆 |
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| 韓国の軍閥と学閥 韓国人は血縁や地縁などに結ばれた集団として権力や利益獲得の闘争を繰り返してきた。韓国では歴史的に見て、権力を握る集団が国家の全てを決定する。第二次世界大戦後の韓国において、韓国人が集団としての権力闘争の中で最強の集団と考えたのが軍閥であった。第二次世界大戦後の冷戦と韓国分断の危機においては、軍隊が最大の権力機関として機能し、軍事政権を生み出し、血縁や地縁を超越して大統領の地位を軍閥が握ることとなった。 軍閥は日本の植民地時代にまでそのルーツがあり、陸軍士官学校などの学閥の連帯感が軍閥の主流を占めていた。軍閥の中にも出身学閥による特権集団が存在したのである。軍閥の中では出身学閥、血縁、地縁という優先順位で集団が存在したのである。 ●韓国軍閥のルーツ 韓国は李氏朝鮮時代から、支配階級は両班(ヤンバン:文官と武官)と称される官僚や軍人達であり、文官は武官よりも地位や権力において上位に位置していた。李氏朝鮮時代の武官(軍人)軽視の伝統は、今も韓国人の心理の根底にあり、長い間、韓国軍人のコンプレックスでもあった。 韓国の軍閥は第二次世界大戦後の1946年、韓国国軍の創設に始まる。そのルーツは日本の植民地時代までさかのぼり、日韓併合以前の1882年に日本陸軍士官学校に最初の韓国人留学生が入学した。1910年には、大韓帝国武官学校の約40名が日本の陸軍士官学校に入学した。これらの韓国人陸軍士官学校出身者の中には、後に大日本帝国陸軍中将になった洪思翊がいる。日本の植民地時代に、日本の陸軍士官学校を卒業した韓国人は141名おり、後に陸軍士官学校を卒業した韓国人は「鶏林会」*1 を結成する。この日本の陸軍士官学校出身者の中で第二次世界大戦を生き残った72名は、1946年の韓国国軍創設の中心メンバーとなった。その後、1961年までに韓国国軍の韓国軍参謀総長7人のうち5人を「鶏林会」から輩出することとなる。 韓国の軍閥は日本の陸軍士官学校出身者達の「鶏林会」以外にも、満州軍官学校のグループがあった。韓国人の満州軍官学校卒業者は約40人で、中には日本の陸軍士官学校本科に編入学した者もいた。
朴正熙(後の朴大統領)は、満州軍官学校2期で陸軍士官学校57期の卒業生であった。後の軍事クーデターで政権を握り、大統領となる朴正熙は満州軍官学校と陸軍士官学校の両方の出身者であった。朴大統領の軍事クーデターの時も、その中心となったのは満州軍官学校出身者の集団であった。1950年6月25日未明、北朝鮮人民軍は38度線を越えて、韓国に進撃を開始した。ソウルは3日で陥落し、責任を取って陸軍士官学校出身者の蔡秉徳参謀総長は罷免され、満州軍官学校出身者の丁一権少将が韓国陸海軍総司令官に任命された。この人物は朴正熙の先輩にあたる。これ以後、満州軍官学校出身者が韓国国軍を支配することになる。 ●韓国国軍のしくみ 韓国国軍は総兵力66万2千人で、陸軍に56万人、海軍に5万2千人、空軍に6万人を配備している。この他にも、米軍の第二歩兵師団、陸軍第8軍、空軍第7軍などおよそ4万人の軍隊が韓国に駐屯している。韓国には在韓米軍司令部や米韓連合軍司令部などがあり、米国以外に英国など9カ国の軍人が駐屯している。韓国国軍の統帥権は当初国連軍にあったが、1978年に米韓連合軍司令部に移り、現在は、国連軍司令部と在韓米軍司令部ならびに、米韓連合軍司令部の司令官を兼任する在韓米国陸軍司令部が、韓国国軍の統帥権を持っている。すなわち、韓国の大統領には韓国国軍の統帥権はなかったのである。1994年になり、平時における韓国国軍の統帥権が韓国大統領に委譲され、やっと自国の大統領による自国軍隊の統帥権を持つに至った。しかし、有事における韓国国軍の統帥権については、いまだに在韓米国陸軍司令官が持っている。韓国で戦争が起きれば、韓国の大統領は自国の韓国国軍を動かす権限がないという状況は現在も続いている。 韓国は数々の軍事クーデターを経験したが、1994年まで、韓国人の手に自国軍人を動かす権限がなかったことを考慮すると、韓国の軍事クーデターは、すべて在韓米国陸軍司令官の了解なしにはありえなかったと考えられる。韓国の軍事クーデターを成功させ、新しい軍事政権を生み出すためには、現実問題として米国の承認なしには無理だったのである。 軍閥は朴大統領*3以降多くの軍事政権を生み出し、軍人が韓国の政治や経済を統制し、国民生活にも重大な影響力を発揮する時代を築いた。軍閥出身の大統領の強大な権限により、韓国の経済政策は左右され、この軍閥出身大統領時代に韓国国軍と結びついた中小企業が、韓国のGNPの30%以上といわれる軍投資資金によって後の財閥として成長していくのである。 軍閥の政治支配は、1993年の金泳三大統領の就任によって終わりを告げる。南北冷戦構造の崩壊によって、朝鮮半島における戦争に対する緊張感は薄れ、また、韓国国民も豊かな生活ができる時代となり、軍事政権の役割は終わった。 ●韓国の学閥 韓国には李氏朝鮮以来、両班(ヤンバン)という支配階級があり、その中では、文官は武官よりも優位な立場にあった。したがって、立身出世のために学問を非常に重要視してきた。現在でも、韓国家庭における家計支出の50〜60%を教育費が占めており、学問に対する伝統は昔と変わっていない。 李承晩大統領時代以降、日本の陸軍士官学校出身者が軍閥として登場するが、一方で、東京大学、早稲田大学、慶応大学、明治大学、中央大学などに留学していた多くの韓国人が、後に韓国国内で学閥を形成して経済活動の主要な位置を占めた。 韓国では、ソウル大学を頂点としたピラミッドが形成されており、ソウル大学の中でも京畿高校出身とそれ以外の高校出身では、同じエリートでもまったく違う評価を受ける。真のエリートとは、京畿高校の゛K"とソウル大学の"S"を合わせた゛KSマーク"が受ける評価であり、それ以外の高校出身者は、同じソウル大学と言っても評価は数段低い時代もあった。また、ソウル大学は米国ハーバード大学と姉妹校であるため、ソウル大学卒業後にハーバード大学大学院に進学するというエリート・コースがさらに存在する。 韓国にはソウル大学の他にも、名門と呼ばれる高麗大学、延世大学、梨花女子大学などの私立大学があり、どの大学を卒業するかで人生が決まってくる。韓国は集団で権力闘争する民族であるから、当然同窓会での結束も固く、卒業後も頻繁に同窓会が開かれ、社会的な人脈が形成される。韓国の大学出身者の同窓会ばかりでなく、日本の大学の留学生同窓会も大きな勢力として、現在も韓国に存在している。血縁や地縁と同様に、学閥も社会的な個人の立場や実際のビジネスに大きく影響するのである。 |
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<脚注>
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