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2005.10.06
変化する日本と世界の関係(11)国連安保理改革と世界経済フォーラム

中嶋経営科学研究所 所長  中嶋 隆

国連安保理改革と世界経済フォーラム

国連安保理改革
マスコミ各社も政府も騒いでいた国連安保理改革案は、日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国(G4)が目指してきた国連安全保障理事会の常任理事国問題ですが、実現が極めて困難となりました。鍵を握るアフリカ連合(AU53カ国)がG4との共同決議案策定を見送ったためで、日本はアジアやアフリカに政府援助金などの増額をお土産に協力を要請していましたが、結局は支持を得られず、今回のアフリカ連合(AU)の結論は、日本がアジアからだけではなくアフリカ諸国からも見放されつつあることを浮き彫りにして、日本の国際評価の現実が明らかになりました。特に北東アジアと東南アジアの政府には日本はまったく支持されず、インドに協力したアフガニスタンとブータンとモルディブが賛成に回りましたが、日本のアジア周辺国は一国も賛成を意思表示しませんでした。これに対し欧州では、過去にドイツから侵略を受けたフランス、ポーランドなどが賛同しています。日本とドイツに対する評価の違いは、戦争の過ちをどれだけ深く反省し、誠実に近隣諸国との問題に対処してきたかの違いとも言われています。日本政府がどんなにきれいごとを言っても、アジアから一国の支持も獲得できなかった、情けないくらいにアジア諸国から信頼されない日本の未来は今後どう考えればいいのでしょうか。

国連加盟国の約191カ国の首脳らが集まり、国連改革への決意を示したことは評価できますが、安保理改革では、日本やドイツなど安保理入りをめざす4カ国(G4)が提案した安保理拡大決議案は廃案に追い込まれ、G4が求めた「年内決着」も成果文書に盛り込まれませんでした。日本の常任理事国入りは支持しても、G4案には拒否と反対投票を呼びかけた米国の対応にも日本は裏切られました。日米トップ同士の親密な間柄から楽観的な見通しをもち、安保理拡大に対する米の反対姿勢を読み誤った日本は、中国に対しても甘い見通しで対応し、他の多くの支持を得れば乗り切れると考えていたようですが、中国に対する途上国の支持は予想以上でした。アジア25カ国で日本とインドが提案したG4案には、インド、日本、アフガニスタン、ブータン、モルディブの5カ国が賛成し、その他の20カ国が反対しました。インドを応援した3カ国を考えれば、日本を支持したアジア国家は一国もありませんでした。

欧米の宗教戦争であるイスラエルと欧米諸国対アラブ・イスラム諸国との戦争は、歴史的な戦争であり、世界的なテロ戦争へと拡大しています。核兵器を200発以上所有すると言われるイスラエルに加担する米国が、イラクやイランの核武装を戦争の口実にするのは不当なことだとアジアは考えています。欧米は核拡散を防止すると言うのであれば、イスラエルからの核兵器をなくす努力が中東の平和とテロの防止に大きく貢献すると分かっていても、イスラエルを説得するだけの努力をしません。米国と一緒に欧米の宗教戦争に参加しようとする日本の現在の動きにはアジアは大きな危機感を抱いていることは間違いありません。自衛隊を日本軍と明記し、防衛庁を防衛省と拡大して、憲法から「交戦権の放棄」を削除し、「海外派兵」まで可能になる中国を敵対国とする日本の「防衛大綱」の策定はアジアに大きな脅威を感じさせています。2004年の日本の輸出貿易の25%以上の約16兆3700億円を輸出する中国圏と、日本の貿易輸出の約50%の約29兆6400億円を輸出するアジアに対して、日本はなぜ脅威を与えるような政策に走るのでしょうか。欧米の宗教戦争に参戦して、歴史的にまったく関係のないイスラム教とのテロ戦争に飛び込む日本政府の考えが理解できません。アジアに拡大した日本大使館や日本企業が標的となるテロ戦争の巻き添えになるアジア諸国の憂慮もありますが、軍事大国になろうとする海外派兵まで行う日本にアジアは重大な危機感を持ち始めています。インドや中国がなぜイラクに派兵しなかったのか。中国がなぜアジアとアフリカの多くの国家に支持されているのか。日本は国際戦略と外交を根本から考え直す必要があります。

日本以下3カ国が提案する(G4案)の共同提案国は、
国連加盟国191カ国でG4を除く23カ国

アジア(3カ国)
アフガニスタン、ブータン、モルディブ
ヨーロッパ(12カ国)
ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、グルジア、ギリシャ、
アイスランド、ラトビア、ポーランド、ポルトガル、ウクライナ、リトアニア
大洋州(7カ国)
フィジー、キリバス、ナウル、パラオ、ソロモン、ツバル、マーシャル
中南米(3カ国)
ハイチ、ホンジュラス、パラグアイ

「世界経済フォーラム2005」
スイスの民間経済研究機関「世界経済フォーラム(WEF)」は9月28日、世界117カ国・地域の経済的競争力を比較した2005年版の「経済競争力報告」を発表しました。日本は昨年より順位を3つ下げて12位で、首位は3年連続でフィンランド、2位は米国、アジアからは台湾(5位)とシンガポール(6位)がベストテン入りしました。日本は12位で、韓国は17位、香港は28位、中国本土は49位、インドは50位でした。中国圏の台湾が5位で、香港は28位で、中国本土は49位と台湾と香港が牽引する中国本土の経済成長はまだ年率約10%の経済成長を続けて、アジアの大国としての立場を復活しつつあります。フィンランドは社会の高齢化を見据えて政府が長期的な経済戦略を立案して、確実に実行している点や、民間の積極的な技術革新などが評価された結果でした。日本が順位を下げたのは財政の不健全さが最大の原因で、国家政府の債務(借金)残高の水準は117カ国中114位、国家経営の財政赤字が同113位と判定されて、世界最下位グループの国家経営と評価されました。

「世界経済フォーラム」は、「世界経済競争力報告」を「マクロ経済環境」と「技術力」と「公的制度の効率性」の3つの指標で、「国家成長競争力」を評価しています。日本の多くの評価指標は次の通りです。

日本の個別評価指標(117カ国地域)
企業の研究開発費  2位
技術吸収力       2位
技術力          8位
公的制度の効率性 14位
マクロ経済環境   42位
組織犯罪       39位
政府債務      114位
財政赤字      113位

「経済競争力の国際評価」
1位Finland
2位United States
3位Sweden
4位Denmark
5位Taiwan
6位Singapore
7位Iceland
8位Switzerland
9位Norway
10位Australia
11位Netherlands
12位Japan
13位United Kingdom
14位Canada
15位Germany
16位New Zealand
17位Korea, Rep.
18位United Arab Emirates


参考文献:
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第123号「郵政選挙(終わりの始まり)」
臥流通清第122号「日本社会の貧困」
臥龍通信第121号「郵政民営化法案の欠陥」
臥龍通信第120号「日本の政治の構造改革」
臥龍通信第119号「戦後60年の政治」
臥龍通信第118号「戦後60年の総決算」
臥龍通信第117号「独裁政治への道(郵政民営化法案騒動)」
臥流通清第115号「日本の少子化と女性問題」
臥龍通信第114号「米国政府要望書」
臥流通清第113号「日本の右傾化」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥流通清第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第109号「東シナ海ガス田問題」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」


参考資料:「公開コンテンツ」
No タイトル 作成
26  変化する日本と世界の関係(9) 世界GDPランキング(2004年) New 2005.07
25  日本の化学兵器の中国遺棄問題 New 2005.06
24  危機意識なき日本  2005.06
23  変化する日本と世界の関係(8) 世界GDP(PPPランキング)2003年 2005.05
22  日本の官僚主義 2005.03
21  変化する日本と世界の関係(7) 日本の貿易構造(2004年) 2005.03
20  変化する日本と世界の関係(6) アジアの貿易物流  2005.01
19  変化する日本と世界の関係(5) 中国と韓国の海外直接投資 2004.12
18  変化する日本と世界の関係(4) 世界汚職清潔度ランキング(2004年) 2004.12
17  変化する日本と世界の関係(3) 世界GDPランキング(2003年) 2004.10
16  変化する日本と世界の関係(2) 世界貿易ランキング(2003年) 2004.09
15  厳しい国家財政 2004.08
14  変化する日本と世界の関係(1) 日本の貿易 2004.02.
13.  プロフェッショナルへの道(1) 企業組織で働く覚悟と準備
 プロフェッショナルへの道(2) 企業組織で働く現実
 プロフェッショナルへの道(3) 営業プロフェッショナルへの道
 プロフェッショナルへの道(4) システムエンジニア&ITコンサルタントへの道
 プロフェッショナルへの道(5) 研究機関研究者への道 
2003.09
12.  企業経営学と国家経営学 2003.08
11.  知的財産権の新たな潮流 2003.08
10.  アジアの台頭 (1) 〜 アジアマネーの台頭とアジアの経済発展  
 アジアの台頭 (2) 〜 米国の中国人ネットワーク
 アジアの台頭 (3) 〜 インドのIT産業政策とインドのソフトウェア産業
 アジアの台頭 (4) 〜 アジアの経済規模
 アジアの台頭 (5) 〜 世界の大学生と大学院生
2002.12
9.  韓国固有の価値観 (1) 〜 韓国語の価値観
 韓国固有の価値観 (2) 〜 韓国社会の価値観
 韓国固有の価値観 (3) 〜 韓国の政治における価値観
 韓国固有の価値観 (4) 〜 韓国の企業経営における価値観
 韓国固有の価値観 (5) 〜 韓国人の価値構造
2002.05
8.  韓国の歴史的社会文化構造 (1) 〜 韓国人の血縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (2) 〜 韓国人の地縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (3) 〜 韓国の軍閥と学閥
 韓国の歴史的社会文化構造 (4) 〜 韓国の財閥
2002.05

参考資料:「臥龍通信」
発行日 発行No タイトル
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学New
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」New
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.09.25 9月号外A  セキュリティ・ソフトについて
2003.09.05 9月号外@  コンピュータウィルスについて
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
2003.06.07 第55号  『日本の知性は死んだのか?』 
2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.05.21 第51号  「裁判員制度」の法制化  
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
2003.04.25 第48号  日本のITの基礎知識(4)  
2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
2003.04.25 第46号  日本のITの基礎知識(2)  
2003.04.25 第45号  日本のITの基礎知識(1)  
2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
2003.03.10 第43号  日本の安全保障
2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

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