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2005.03.20
日本の官僚国家主義

中嶋経営科学研究所 所長  中嶋 隆


日本の官僚国家主義

日本の官僚国家主義

日本は資本主義国家であり、民主主義国家であるとされています。言われているだけで、日本の資本主義と民主主義の内容はといえば、不思議に思うことばかりです。資本主義国家でありながら、資本の論理や企業経営の論理が通用しないこともあります。民主主義も国民国家主義であるはずですが、日本の民主主義の内容は官僚国家主義になっています。

日本の官僚国家主義は、官僚も国民ですから国民国家主義として不思議ではないのですが、官僚が他の国民よりも優遇され、特権を持つということになれば、官僚国家主義は国民全体の利益に反することにもなります。官僚と他の国民との意識や目的が共有できる時代は、国民と官僚の利益や特権もそれほど大きなものではありませんが、国家が発展して多くの富が国家に集まるようになると、官僚と他の国民との間には大きな権利意識の違いが出てきます。
絶対王制時代や立憲君主制時代の官僚と資本主義時代の官僚とは違わなければならないのですが、日本では資本主義時代の官僚制に移行していないための社会システムの非効率性が加速度的に肥大化して、国家と国民は官僚国家主義の中でつぶれそうになっています。

官僚育成のための国民教育体制
日本を官僚国家主義であるというと、それは違うという人もいるでしょう。しかし、日本の教育制度や政治制度など、国家の基本が官僚国家主義で運営されているとすれば、日本は官僚国家主義であるといえます。日本では国際競争力のない教育の問題をまた始めましたが、日本の教育の根本問題は、資本主義時代の働く優秀な国民を教育するのではなく、日本の教育は優れた官僚を育成するという体制で構築されているということです。東大を頂点とする日本の義務教育や高等教育の教育体制は、21世紀の資本主義時代の働く国民教育ではなく、優秀な国家官僚を育成するために構築され運営されています。国家公務員のキャリアといわれる高級官僚などの名称で呼ばれる官僚の供給システムが国家的な教育体制の中で最高のエリート・コースとして国民も認める体制が日本にはあります。

資本主義社会で稼がない官僚育成に膨大な費用を使う教育体制
では、国家官僚育成のための国民選抜教育体制はあっても、日本に資本主義時代の働く国民教育の体制は実現されているのでしょうか。日本の教育に、資本主義時代に必要な働く国民を育成するためのビジネス教育が実現しているでしょうか。資本主義社会でもっとも重要な教育は官僚育成ではなく、企業で働き起業する働く国民教育なのですが、日本の教育体制は、いまだに官僚育成教育体制のままです。東大入学を目指し、東大生になることが優秀の代名詞となり、優秀な東大生が官僚になるとすれば、日本の選抜教育の目的は官僚の育成あるというしかありません。資本主義時代は働く国民の時代で、全日本選抜の教育してまで官僚を育成する必要はありません。官僚は国民の税金で生きていくだけで、国家に経済的に貢献する企業社会に多くの優秀な人材が投入される国民教育でなければ、日本の資本主義は発展しません。21世紀の日本の教育はカルロス・ゴーンやビル・ゲイツのような経営者を生み出す教育が必要であって、国民の税金に寄生する官僚のための教育ではありません。日本の教育体制が20世紀の東大を頂点とした官僚選抜教育体制である限り、日本の教育は21世紀の資本主義に対応した優秀な企業人材を生み出すことはできないのです。

資本主義時代の官僚支配
東大を頂点とした全日本選抜の官僚教育体制は、国会議員や全国の知事の3分の1以上を占め、企業経営の現場にも多くの天下りが存在する官僚育成のために作られています。日本の教育体制で選抜された官僚は国家組織だけでなく、国会議員や知事や民間企業の天下り役員として日本の資本主義を運営しています。大学や研究機関などにも人材を供給し、政府組織、国会、司法、大学、研究機関、民間企業など、国家運営の中枢人材が官僚によって構成されています。すべての国民は頑張れば官僚になれるわけですから、官僚主義は国民主義といえなくもないですが、21世紀の資本主義社会は社会で働く高度な企業経営の人材育成が基本であり、そこから官僚や国会議員や知事などの人材が供給されるべきですが、日本は逆に官僚から国会や知事や企業経営の人材が供給されています。資本主義のビジネスの現場にほとんどいない官僚が運営する国家経営と企業経営が日本を基本的におかしくしています。21世紀の資本主義の企業経営に必要な「経営スピード」、「経営効率」、「資源配分の最適化」などは、官僚の国家経営にも必要な概念です。資本主義の競争社会の厳しさを教育されず実感することもできない官僚が日本を運営して、日本がうまく行くわけがありません。日本の官僚選抜教育体制が働くビジネスパーソン教育体制に根本的に変革されないと日本は社会制度として21世紀の資本主義時代に生き残れません。

国家利益を生む国家人材の育成
日本の教育体制は、資本主義社会の基本も教育してはいません。働き稼ぎ税金を払う国民の重要性と働く国民としての教育をしてこなかったのです。日本の教育で教えたのは、東大を頂点とする学歴社会の評価であり、全国選抜の官僚育成体制における誤った価値観です。優秀な企業経営者として日本社会に大きな貢献をすることなど、資本主義社会にもかかわらず日本の教育は重要な価値観として教えませんでした。多額の税金を払う国民より税金に寄生する官僚をより高い地位の人間と教育してきたのです。日本の教育はある意味で成功しました。つまり、日本の教育は資本主義の企業で働き稼ぐ人間より、官僚や国会議員や知事として税金を使う人間をより高い地位の人間と教育したことは見事に成功しました。優秀な人材は民間企業でなく官僚を目指す国家教育体制と社会の価値観の構築に成功したのです。日本は資本主義時代に稼ぐ国民ではなく、税金に寄生する一部の国民に国家と企業の経営を任せています。日本国民がすべて税金を払う国民ではなく、税金を使う国民になろうとして、全日本選抜の教育体制を構築していることは日本の資本主義社会の大きな矛盾です。

21世紀の資本主義社会の教育
私たちは、これまで東京大学を頂点とする国立大学と有名私立大学に入学することが優秀な人間である証明であると教わってきました。国会議員や知事や官僚が民間大企業経営者よりも上の地位にある人間とも教わってきました。日本の教育の中で「何のために勉強するのか。」という疑問に明確に答えてもらうこともなく、ただ有名大学に入学することだけが目的の教育を受けてきました。資本主義社会でありながら金儲けして税金を払う人間よりも、国民から税金を取って使う人間が高い地位の人間とも思わされてきました。一生懸命に金儲けして多額の税金を支払う国民の価値は重視されず、日本の官僚選抜の教育体制の中で、すべての国民が税金を取り使う側になろうと現在も努力しています。日本の国民のすべてが納税する側ではなく、税金を使う側になろうとすれば、納税する国民は減少して日本の資本主義は根本的に崩壊します。日本国民がみんな公務員で納税者がいない国家を目指すなどおかしな話ですが、奇妙にも日本はみんな税金を取る側になりたいのです。
21世紀の資本主義社会の国際競争力は、国家がいかに経済部門に優秀な人材を資源配分できるかにかかっています。国家教育の根幹を経済活動する人材育成に集中して、国家経営部門は民間経済部門から経営感覚の鋭い人材が配分されるべきです。国家官僚部門の純粋培養に国民教育のほとんどの資源と資金を投入しては、21世紀の国家経済活動を支える人材を育成することはできません。働き納税する国民こそがもっとも価値ある存在であるという教育体制が実現し、日本の経済活動に参加する優秀な人材育成に国民教育の根幹がなければ、急速に納税者は減少していくでしょう。

官僚育成、官僚選抜、官僚重視の日本の教育体制をどう変えていくか。働き稼ぎ納税する国民教育をどう実現するのか。社会的に確立した官僚重視の価値観をどう変革していくか。現実の官僚支配の日本をどう変えていくか。日本には変革が10年や20年では変革できない、身に染み付いた保守的な価値観が日本人にはあります。スポーツ選手や芸能人が高額納税者であることは何も言われませんが、企業経営者の高額納税者はスポーツ選手や芸能人ほどの評価も受けません。税金で生きている国会議員や知事や官僚よりも企業経営者の高額納税者は高く評価されるべきですが、日本社会には金儲けと高額納税に対して驚くほど評価が低いのです。一生懸命に働くことへの社会的評価が低い国家と国民社会は確実に21世紀の資本主義社会では生き残れません。

官僚国家主義の整理
@官僚国家主義の国民教育体制は、全国選抜教育の頂点に優秀な官僚の育成と輩出を目的とした膨大な国家の教育資源が投入される。
A全国的な人材選抜の官僚育成体制によって、司法と行政に全国選抜人材が投入され、立法府の国会にも官僚から多くの人材が供給される。
B国家組織の司法、行政、立法の三権分立がすべてが国家選抜教育の官僚によって支配される。
C国家組織と国家資金を背景に、民間企業や研究機関や大学などにも官僚からの人材供給が行われ、官僚国家主義はさらに強化される。
D官僚至上主義が国民の価値観となり、資本主義の基本である働き納税する国家経済部門の人材育成が軽視され、国民はすべて納税者ではなく税金の使用者である官僚を目指すようになる。
E官僚至上主義の国家育成体制と国民価値観によって、資本主義社会の経済活動部門人材教育と評価が軽視され、働く意欲を失った多くの国民が生まれる。
F国家経済部門で実際に働き納税する人間よりも、国家経済部門から税金を徴収して税金を使う官僚のほうが社会的にも高く評価され、特権を確立させた官僚は国民経済部門とは関係ない自己利益の拡大を目指す。
G国民の税金は国民のために使用するのではなく、官僚利益のために使用する資金源として、際限ない税金が官僚の要求として合法化されて、国民負担は際限なく増大していく。
H官僚組織の腐敗は、不正を行うのも官僚ならば、不正を裁くのも官僚で、官僚のための法律を作るのも官僚という体制が確立すれば、国民は確立した官僚組織の腐敗に対抗する手段さえ失う。
I歴史的に特権を確立させ肥大化した官僚組織は、国民を犠牲にして国民生活と国家政治の破綻に行き着かない限り払拭はされない。

日本の教育の在り方や日本社会の価値観の在り方が、新たな21世紀の本格的な資本主義の世界的な波の中で、多くの機能不全と対応不全を起こしています。日本の改革は手直し程度の問題ではなく、ゼロベースの国家制度の再構築をしなければ、もはやどうしようもないほどの状況にあります。問題発生のたびに、先送りと小手先改革に忙しい官僚主義の日本はいまこそ変わるべき時期に来ています。

参考文献:
公開コンテンツ「日本の化学兵器の中国遺棄問題」
公開コンテンツ「危機意識なき日本」
臥龍通信第112号「日本の戦後と靖国問題A」
臥流通清第111号「日本の戦後と靖国問題@」
臥龍通信第109号「東シナ海ガス田問題」
臥龍通信第108号「中国から見た日本」
臥龍通信第106号「最近の中国対立」
臥龍通信第98号「日本の対中貿易」
臥龍通信第96号「中国のエネルギー戦略」
臥龍通信第94号「日本の教育」
臥龍通信第90号「韓国技術エリートの台頭」
臥龍通信第87号「IMDと社内大学」

公開コンテンツ
No タイトル 作成
21  変化する日本の世界の関係(7)日本の貿易構造2004年 New 2005.03
20  変化する日本と世界の関係(6)アジアの貿易物流 New 2005.01
19  変化する日本と世界の関係(5)中国と韓国の直接投資 2004.12
18  変化する日本と世界の関係(4)世界汚職清潔度ランキング2004年 2004.12
17  変化する日本と世界の関係(3)世界GDPランキング(2003年)  2004.10
16  変化する日本と世界の関係(2)世界貿易ランキング(2003年)  2004.09
15  厳しい国家財政 2004.08
14  変化する日本と世界の関係(1)日本の貿易 2004.02.
13.  プロフェッショナルへの道(1) 企業組織で働く覚悟と準備
 プロフェッショナルへの道(2) 企業組織で働く現実
 
プロフェッショナルへの道(3) 営業プロフェッショナルへの道
 プロフェッショナルへの道(4) システムエンジニア&ITコンサルタントへの道

 プロフェッショナルへの道(5) 研究機関研究者への道 
2003.09
12.  企業経営学と国家経営学 2003.08
11.  知的財産権の新たな潮流 2003.08
10.  アジアの台頭 (1) 〜 アジアマネーの台頭とアジアの経済発展  
 アジアの台頭 (2) 〜 米国の中国人ネットワーク
 アジアの台頭 (3) 〜 インドのIT産業政策とインドのソフトウェア産業
 アジアの台頭 (4) 〜 アジアの経済規模
 アジアの台頭 (5) 〜 世界の大学生と大学院生
2002.12
9.  韓国固有の価値観 (1) 〜 韓国語の価値観
 韓国固有の価値観 (2) 〜 韓国社会の価値観
 韓国固有の価値観 (3) 〜 韓国の政治における価値観
 韓国固有の価値観 (4) 〜 韓国の企業経営における価値観
 韓国固有の価値観 (5) 〜 韓国人の価値構造
2002.05
8.  韓国の歴史的社会文化構造 (1) 〜 韓国人の血縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (2) 〜 韓国人の地縁
 韓国の歴史的社会文化構造 (3) 〜 韓国の軍閥と学閥
 韓国の歴史的社会文化構造 (4) 〜 韓国の財閥
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7.  日韓国家情報化計画比較 〜 「e-Japan戦略」と「CYBER KOREA21」  2001.12

発行日 発行No タイトル
2004.09.05 第87号  IMDと社内大学
2004.09.05 第86号  実力主義の「人間管理」と「能力管理」
2004.08.11 第85号  日本の戦後問題 
2004.08.11 第84号  2007年問題 
2004.07.23 第83号  企業経営と国家経営 
2004.07.23 第82号  未公開株の取引 
2004.07.02 号外  スウェーデン・プロジェクト
2004.07.01 第81号  日本の政治の大改革 
2004.06.21 第80号  日本の21世紀の課題 
2004.05.25 第79号  美しい日本の国土再生
2004.05.10 第78号  激動する世界情勢
2004.05.10 第77号  現代日本の問題点
2004.04.25 第76号  企業経営とITと知的財産権 
2004.04.25 第75号  「韓流」の映画とドラマ 
2004.04.08 第74号  日本のIT産業の実力
2004.04.08 第73号  「科学技術」と「職人技能」
2004.03.29 第72号  「攻殻機動隊」と「イノセンス」
2004.03.12 第71号  日本近代史の分岐点
2004.02.22 第70号  21世紀の大学改革
2004.02.22 第69号  行動する日本人の時代
2004.02.12 第68号  21世紀の日本人と日本社会 
2004.01.27 第67号  国家経営力統計
2004.01.10 第66号  年金問題の本質
2003.12.02 第65号  日本マンガの実力
2003.12.02 第64号  日本の政治
2003.10.17 第63号  企業就労と健康と個人の幸福 
2003.10.17 第62号  知的財産権政策後退の阻止 
2003.09.26 第61号  地域主義の新たな潮流
2003.09.25 9月号外A  セキュリティ・ソフトについて
2003.09.05 9月号外@  コンピュータウィルスについて
2003.08.20 第60号  日韓の近代・現在史
2003.08.20 第59号  国連問題と日本外交
2003.07.10 第58号  国家経営力(2) 
2003.07.10 第57号  国家経営力(1) 
2003.06.25 第56号  特許戦略よりも知性戦略
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2003.06.07 第54号  経営力の時代(3) 
2003.06.07 第53号  経営力の時代(2) 
2003.06.07 第52号  経営力の時代(1) 
2003.05.21 第51号  「裁判員制度」の法制化  
2003.04.25 第50号  朝鮮半島の中国と米国の関係  
2003.04.25 第49号  日本のITの基礎知識(5)  
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2003.04.25 第47号  日本のITの基礎知識(3)  
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2003.03.10 第44号  日本の産業競争力
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2003.03.10 第42号  日本の知性創造サイクルの変革

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