May.2002
中嶋経営科学研究所 所長 中嶋 隆 |
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韓国人の地縁 韓国における同姓同本の血縁関係を前提にして、韓国人の人生や行動を規定しているものが他にもある。地縁である。韓国は三国時代の高句麗*1、新羅*2、百済*3の伝統を今も継承している。現在、高句麗は北朝鮮の地域であり、韓国で問題になるのは新羅と百済の伝統である。韓国人の社会関係を、血縁の次に規定しているものが地縁なのである。韓国における地域抗争は歴史的なものであり、多くの場合、国会議員や大統領の選挙にまでこの地域抗争は影響し、選挙に勝った地域の地域振興政策は進み、負けた地域の振興は無視されるといったことが現実にある。 韓国は京畿道、江原道、忠清道(忠清南道・忠清北道)、慶尚道(慶尚南道・慶尚北道)、全羅道(全羅南道・全羅北道)の地域からなり、それぞれ地域ごとに歴史と方言と文化を持っている。首都ソウルにおいても、出身地によって対応が違ってくる場合が多い。これまでは、慶尚道出身者が優遇され全羅道出身者は冷遇されてきた。現政権の金大中大統領は全羅道出身者で初めて大統領になり、これまで冷遇されてきた全羅道にもやっと、政府の振興資金などが優遇される状況を生み出した。この地域抗争は、選挙における候補者の地域得票率で見てみると一目瞭然である。例えば、1987年に行われた第13代大統領選挙の場合、忠清南道出身の金鐘泌氏は忠清南道においては45%、慶尚北道出身の盧泰愚氏では慶尚北道で66.4%の得票率であった。慶尚南道を出身地とする金泳三氏の慶尚南道での得票率は51.3%、全羅南道出身の金大中氏は全羅南道で得票率90.3%、全羅北道で83.5%を獲得し、各候補とも出身地域では非常に高い支持を受けていることがわかる。地域出身の候補者に対する人々の支持は、日本とはまるで違うのである。 韓国では血縁と地縁が、地位や社会的立場に大きな意味と影響力を持っている。特に、韓国の大統領権限は強大で、各省庁や地方自治体の長の任免権を大統領が握っているため、官僚や地方の長も選任された大統領の意志ですべて変わることもある。当然のことながら同じ出身地の者は優遇されるわけである。韓国の地域抗争は日本人が考えるよりもはるかに強烈で、前任大統領の投獄などは、前政権時代の仕打ちに対する報復の意味も込められている。その報復は一族や同じ地域出身者にまで及ぶこともあり、投獄や要職追放などは当然のごとく行われてきた。朴大統領政権時代から1995年に地方自治法が改正されるまで、地方自治体の長は住民による直接選挙ではなく中央政府が任命してきた。韓国では、大統領が変わるごとに中央政府ばかりか、地方自治体の長までもが変わり、実質的に地方自治体にまで大統領の支配が及んだのである。 <1987年大統領選挙の地方得票率>
<1992年大統領選挙の地方得票率>
このような韓国国民の地域に対する意識は、地縁による既得権益につながり、その権益の熾烈な争奪戦が国家の最高権力をめぐって繰り広げられてきた。この地域抗争は地域経済格差を生み出し、地域都市の発展にまで極端な格差が生じることとなった。当然日本とは異なり、政府の産業政策も偏った地域振興がなされ、その影響は地域人口にまで及びビジネスの全国的な政府支援などありようがなかった。 政府に経済振興支援されてきた大邱のある慶尚北道、釜山のある慶尚南道、大田のある忠清南道などと、政府に冷遇され政治的弾圧のターゲットにされてきた全羅南道の光州との差は地域抗争の結果であった。インターネットやブロードバンド・ビジネスを考える上でも、地域格差は重要な要素である。歴代大統領に冷遇され続け、経済的にも大きな格差をつけられた全羅道出身の金大中大統領の登場は、全羅道に対する経済振興を進める大きな契機となった。この全羅道に対する経済的な支援がなされた結果、韓国はやっと全国的なビジネス基盤が成立したとも言える。1998年の金大中大統領就任以降の韓国は、インターネットやブロードバンドの急激な普及を達成し、全国的なインターネット・ビジネス基盤を成立させたのである。 <韓国の道別人口構成比>
あと1年ほどで金大中大統領は任期満了を迎える。後任者がまた全羅道出身者であるとは限らないため、全羅道地域の経済振興もこれまでどおりに続けられるとは断言できない。次期政権が誕生する2003年以降、韓国がどのような国家戦略をもって政策を打ち出すのか、現時点ではまったく予想ができない。 |
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<脚注>
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